映画【あずみ】感想(ネタバレ):刺客として生きる宿命――徳川政権に挑む若者たちの壮絶な戦い

azumi
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●こんなお話

 徳川体制に反発する勢力を暗殺する刺客とそれを阻止する人たちの戦いの話。

●感想

 人里離れた山奥で暮らす10人の若者たちが、厳格な老人(爺)のもとで「使命の日」に備えて訓練に励んでいるところから始まる。彼らは幼い頃から共に育ち、深い絆で結ばれている仲間たちの様子。しかし、ある日爺から告げられた命令は――「使命を果たすためには、これからはどんな相手であっても斬らねばならぬ」ということで、若者たちはペアを組み、互いに命を奪い合うという試練開始。主人公もまた、自らのペアの相手を斬る。

 山を下りた彼らが目にしたのは、村が襲撃されているという惨状で。人々を助けようとする主人公に対し、爺は「使命を果たすために、ここで人を救っても意味はない」と冷たく制止。

 やがて主人公は、味方の忍者から渡された暗殺指令を受け、標的である浅野長政に近づき、殺害に成功。続けて、加藤清正の行列を急襲するも、清正を守る家臣・官兵衛の抵抗を受け、乱戦の末に殺害したのは影武者であったことが判明。しかも、同行していた仲間も忍者の毒によって倒れる。

 これを受け、官兵衛は主人公たちの討伐のために、凶悪な三兄弟を雇う。一方、旅の途中で出会った旅芸人の一座と交流を深める主人公たち。仲間の一人は一座の女性に恋心を抱くようになりますが、毒の影響で倒れる仲間も。そして、三兄弟が誤って旅芸人の一座を襲撃したことから、主人公たちは彼らと対峙することになります。

 仲間を見捨てようとする爺の非情な決断に反発する者も現れ、意見が対立。重傷の仲間は、争いを止めるべく自ら命を絶ってしまう。敵側はさらに「美女丸」と呼ばれる刺客を送り込み、旅芸人の女性を想う仲間を襲撃、彼も命を落とします。

 清正が船で移動を開始する前に決着をつける必要があると判断した爺は、残された仲間たちを率いて、清正が身を寄せている屋敷への襲撃を決断。しかし、この動きを事前に察知していた清正側の者たちは、待ち伏せを仕掛けており、仲間たちは次々に命を落としていくことに。

 一方で、主人公は旅芸人の女性とともに穏やかなひとときを過ごしていた最中、突如として複数の男たちに襲撃される。応戦の末、主人公は自らの運命を再び受け入れることを決意。「刺客として生きる」という宿命を、逃れられぬ道として覚悟を新たにする。

 その後、清正を護衛するために待ち構えていた侍たちの前に主人公が単身で現れ、怒涛のごとく次々と敵を斬り伏せていって。死闘の果てに、刺客「美女丸」との一騎打ち。激しい戦いの末、主人公は勝利して、その場で瀕死の状態にあった爺と再会する。

 主人公は最期を迎えようとする爺を必死に看取って、師の死に、主人公はなおも「刺客として生きる」道を歩むことを、改めて心に誓う。

 そして、清正が乗る船上に突如として主人公が姿を現し、隙を突いて清正の暗殺に成功。計画の破綻により、すべてを失った官兵衛は錯乱状態に陥っておしまい。


 全体として、本作は140分という長尺で、映像表現には力が入っていました。カメラワーク、CG、ライティングなど、凝った演出が随所に見られますが、かえってそれが見ている自分にとっては体力を要する印象。アクションシーンは多いものの、どれも似た構成で単調に感じられ、体感時間がさらに延びるように感じられました。

 物語の核となるのは、孤児として育てられた若者たちが「徳川政権に逆らう大名を暗殺する刺客」として生きるという設定。「使命を果たす」という言葉が繰り返し使われ、彼らがそれを盲目的に信じて行動している様子は、時に危うささえ感じさせます。仲間同士で殺し合いをさせられ、生き残った5人がテロ行為に駆り出されるという展開は非常に苛烈です。

 にもかかわらず、物語の終盤で彼らが「これでよかったのか」と自問自答する姿には、刺客としての一貫性に疑問を抱かざるを得ません。修行の意味、使命の重さ、そして人としての良心――それらが噛み合わず、ややちぐはぐに感じられる構成でした。

 アクションは、雑魚キャラ相手の戦闘が多く、盛り上がりに欠ける印象。さらに登場人物の名前が印象に残りにくく、1人ずつスローモーションで退場していく展開は、間延びしてしまっているようでした。また、劇中には笑いを誘うことを意図したギャグシーンも散見されましたが、どれも今ひとつ機能しておらず、テンポを損なっている場面が少なくありませんでした。

 とはいえ、クライマックス直前に登場する原田芳雄さんの殺陣シーンは非常に迫力があり、見応えがありました。また、加藤清正の襲撃シーンで、忍者軍団が腕を組んで待機するショットなど、過剰とも言える演出がかえって印象に残る場面もありました。さらに、岩代太郎さんによる音楽はシーンを効果的に彩っており、音楽がかっこよかったです。

鑑賞日: 2013/07/03 DVD 2025/05/28 WOWOW

監督北村龍平 
脚色水島力也 
桐山勲 
原作小山ゆう 
出演上戸彩 
小橋賢児 
成宮寛貴 
金子貴俊 
石垣佑磨 
佐野泰臣 
鈴木信二 
瑛太 
山口翔悟 
小栗旬 
オダギリ ジョー 
岡本綾 
松本実 
榊英雄 
遠藤憲一 
坂口拓 
りょう 
伊武雅刀 
佐藤慶 
北村一輝 
竹中直人 
原田芳雄 

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