映画【#生きている】感想(ネタバレ):団地を舞台にした新感覚ゾンビ映画|スピード感と映像美が光るサバイバル劇

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●こんなお話

 突如、凶暴化する感染症が発生して団地でサバイブする人の話。

●感想

 ゾンビ映画といえば、徐々に忍び寄る恐怖や、日常から非日常への切り替わりが描かれる作品が多い印象がありますが、この作品では冒頭からいきなりゾンビが大量発生し、物語が急加速します。開始わずか数分で世界が一変するスピード感に驚かされ、観客を一気にパニック状態へと引き込んでいく導入は見事だったと思います。日常をじっくり描くことなく、そのまま混乱へ突入する展開はテンポもよく、勢いに乗ったまま物語が転がっていく様子が新鮮でした。

 舞台は団地という閉鎖空間に設定されており、この狭い世界の中でどうサバイバルしていくのかというアイデアの見せ方も魅力のひとつだったと思います。無数のゾンビが下の階にうごめく中、限られたスペースで主人公が生き延びる工夫を凝らしていくという展開には、ある種のゲーム的な感覚も含まれていて、見ていて面白かったです。

 ただ、そうしたサバイバルの醍醐味をもう少し掘り下げてくれたら、より引き込まれる作品になったのではとも感じました。登場人物があまり多くなく、誰かが襲われる緊張感や脱出の困難さといった要素が少し物足りない印象でした。団地という空間は活かされているようで、まだまだ伸びしろがあったようにも思います。 

 また、映画内では電気が通っていないと語られていたはずなのに、スマホのバッテリーがずっと切れないままだったり、エレベーターが普通に動いていたりと、細かい部分で現実とのギャップが気になる場面がいくつか見られました。韓国の非常用電力事情が優れているのか、それとも物語上の都合なのか、そうした点に意識が向いてしまったのは少し残念だったかもしれません。

 主人公がゲーム好きでSNSに詳しいという設定も興味深いものでしたが、その要素が物語にあまり活かされていなかったのはもったいなく感じました。今の時代ならではの視点から、ゾンビとの対峙やサバイバル戦略を見せるチャンスがありそうな設定だっただけに、そこが広がらなかったのは惜しかったです。 

 さらに、救助のタイミングもやや都合が良すぎるように見えてしまい、自然に物語が進んだというよりは、上映時間の関係で区切られた印象もありました。ただ、それもまたジャンル映画としての割り切りとも受け取れますし、ラストまでの流れはコンパクトにまとまっていたとも言えます。

 それでもやはり、パク・シネさんの存在感は大きく、彼女が登場するだけで画面が華やかになるのを感じました。静かな佇まいと芯のある表情が、作品全体に落ち着きを与えていて、彼女の演技を楽しむという視点でも観る価値はあったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2021/06/07 NETFLIX

監督チョ・イルヒョン
脚本マット・ネイラー
出演ユ・アイン
パク・シネ
チョン・ベス
イ・ヒョヌク
オ・ヘウォン
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