●こんなお話
女性が殺されて残された赤ちゃんを抱えて頑張る座頭市の話。
●感想
座頭市を狙う一団が登場し、物語はそこから動き出していきます。座頭市は、赤ん坊を抱えた女性に自分が乗っていた駕籠を譲ったことで悲劇が起こる。彼女を座頭市と勘違いした一団が駕籠を襲撃し、女性は命を落とす。赤ん坊だけが取り残され、それを見た座頭市は、赤ん坊を父親のもとへ送り届ける決意をする。
道中、スリの女と出会い、彼女がスリを働いた相手の侍から追われているのを助けたことから、一緒に旅をすることになる。旅の中ではさまざまな事件が起きる。座頭市を狙う一団が襲ってきたり、宿屋では赤ん坊におしっこをさせたところ、たまたま居合わせた力士にかかって喧嘩になったり、賭場ではイカサマを見破って一悶着あったりと、道中は賑やか。
女性スリは赤ん坊を育てたいと願うようになるが、座頭市は「自分たちは悪党だ。この子にはそんな道を歩ませたくない」と静かに諭す。そんなやり取りにも、人間味がにじみ出ていて印象的。
ついに赤ん坊の父親にたどり着くが、男は「知らねえ」と冷たく突き放し、座頭市も「こんな奴に預けたくない」と赤ん坊を引き取る。その後、寺の住職に出会い、最終的に赤ん坊を託すことになる。市も育てようと一瞬思うけれど、住職の説得に納得して子どもを託す場面は切なくも温かかったです。
クライマックスでは、座頭市の聴覚を封じようと、一団が火の棒を振りかざして襲ってくる。しかしそれでも座頭市は冷静に、容赦なく敵を倒していく。その戦いの迫力は凄まじく、本当に勝新太郎が燃えてしまうんじゃないかと心配になるほどの火の演出でした。
何より、座頭市が母性に目覚めるという展開には笑いもあり、女スリも赤ん坊への愛情を見せ始めて、2人が赤ん坊と離れるのを惜しむ姿には切なさがこみ上げました。
ただ、物語の展開は90分という短さもあって、多少強引な部分も見受けられる。たとえば、女スリが最初は嫌々赤ん坊の世話をしていたのに、座頭市の殺陣を見た瞬間から急に心を入れ替えるくだりなどは、ちょっと納得しにくいものでした。でも、それもジャンル映画としてのテンポの良さと見れば、十分楽しめる一本でした。
☆☆☆
鑑賞日:2011/03/13 DVD 2012/09/13 DVD 2024/03/02 BSトゥエルビ
監督 | 三隅研次 |
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脚本 | 星川清司 |
吉田哲郎 | |
松村正温 |
出演 | 勝新太郎 |
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高千穂ひづる | |
金子信雄 | |
加藤嘉 |