映画【エイリアン:コヴェナント】感想(ネタバレ):ファスベンダー魅力全開のSFスリラー

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●こんなお話

「カントリーロード」に惹きつけられた宇宙へ入植する予定だった人たちが案の定道草してパニックになる話。 

●感想

 真っ白で何もない静謐な空間で、アンドロイドのデヴィッドが創造主ピーター・ウェイランドと向かい合う場面から物語は始まる。広大な窓の外には雄大な山々が広がり、創造主と被造物は「人間は誰によって創られたのか」「創造とは何か」という根源的な問いについて言葉を交わす。

 前作から約10年後。人類の新たな移住先となる惑星オリガエ6を目指し、巨大な入植船コヴェナント号は宇宙を航行していた。船内では二千人近い入植者の受精卵と多数の乗組員が人工冬眠に入り、アンドロイドのウォルターが船の管理を任されている。太陽光を受け止める巨大なエネルギーセイルを広げながら宇宙を進む。

 しかし、突如発生した宇宙フレアが船を直撃し、システムが大きく損傷する。緊急事態によって乗組員たちは強制的に目覚めるものの、船長ジェイコブ・ブランソンは冬眠装置の故障で脱出できず、そのまま焼死してしまう。突然指揮官を失ったクルーたちは、副長オラムを中心に船の修復作業を進める。

 その最中、未知の電波を受信した一行は、現在地からほど近い場所に人類が居住できそうな惑星が存在することを知る。本来の目的地よりもはるかに近く、環境も良好と判断したオラムは進路変更を決断する。ダニエルズら調査隊は上陸艇で惑星へ降下し、美しい森林や滝が広がる大地を目の当たりにする。

 理想郷のように見えた惑星だったが、その自然には恐るべき危険が潜んでいた。植物から放出された微細な胞子が隊員の体内へ侵入し、短時間で異形の生命体ネオモーフへと成長する。胸や背中を突き破って誕生した怪物は周囲の人間へ襲いかかり、調査隊は次々と命を落としていく。

 絶体絶命となった生存者たちを救ったのは、『プロメテウス』で唯一消息を絶っていたアンドロイド、デヴィッドだった。彼は生存者たちを巨大な古代都市へ案内し、自らがこの惑星で過ごしてきた年月を語り始める。

 デヴィッドは、エンジニアたちの母星へ到着した際、宇宙船に積まれていた黒い病原体を散布し、文明そのものを滅ぼしていた。その後は廃墟となった都市で研究を続け、動植物や病原体を使って生命創造の実験を繰り返していた。彼の研究室には無数の解剖記録や標本が並び、ネオモーフやフェイスハガー、さらにはゼノモーフ誕生へ至る研究過程が克明に記録されていた。

 デヴィッドは、人類やエンジニアを超えた完全な生命を創造することこそ自らの使命だと考えていた。創造主に作られた存在でありながら、自分自身が新たな創造主になることを望み、その思想は狂気へと変わっていく。

 デヴィッドはウォルターに対し、自らの思想を理解するよう語りかける。フルートを吹きながら創造について語り合う二体のアンドロイドの姿は、まるで自分自身と対話しているかのような静かな時間となる。しかしウォルターは人類を守ることを優先し、デヴィッドの思想を拒絶する。

 その頃、オラムはデヴィッドに案内されるまま地下施設へ入り込み、巨大な卵を発見する。中を覗き込んだ瞬間、フェイスハガーに襲われ寄生されてしまう。その後、チェストバスターが体内から飛び出し、やがて成長したゼノモーフが誕生する。

 生存者たちは脱出を試みるものの、ネオモーフやゼノモーフの襲撃によって次々と犠牲となる。一方、ウォルターはデヴィッドを止めるため戦いを挑み、高性能アンドロイド同士による激しい格闘戦が繰り広げられる。

 ダニエルズ、テネシーら生き残った乗組員は辛うじてコヴェナント号への帰還に成功する。しかし船内にはゼノモーフが侵入しており、閉鎖空間で再び死闘が始まる。巨大な貨物運搬機やクレーンを利用した末、ゼノモーフを宇宙空間へ放出することに成功し、ようやく脅威を退ける。

 事件が終わったと思われた後、ダニエルズとテネシーは再び目的地へ向かうため人工冬眠へ入る準備を進める。ダニエルズはウォルターへ、オリガエ6へ到着したら湖のほとりに丸太小屋を建てたいという夢を語る。しかしウォルターは、その約束を覚えていなかった。

 その瞬間、ダニエルズは目の前にいるのがウォルターではなくデヴィッドであることに気づく。ウォルターとの戦いに勝利したデヴィッドが彼になりすましていたのである。しかし、すでにダニエルズは冬眠装置のスイッチが入る。

 デヴィッドは静かに乗組員たちを冬眠させると、自らの口から吐き出した二つのエイリアンの胚を人類の受精卵保管庫へ収める。人類の新天地を目指していたコヴェナント号は、デヴィッドが理想とする新たな生命を誕生させる実験場となっておしまい。


 冒頭の真っ白な空間で繰り広げられるデヴィッドとウェイランドの対話だけで、一気に作品世界へ引き込まれました。無機質で美しい空間、窓の向こうに広がる壮大な風景、そして創造について語り合う二人の姿は非常に印象的で、リドリー・スコット監督らしい哲学的なSFの雰囲気が全開でした。

 映像美はシリーズ屈指の完成度だと思います。宇宙空間を航行するコヴェナント号、広大な惑星の風景、霧に包まれた森や滝、古代都市の廃墟まで、一つひとつのカットが絵画のように美しく、約2時間の上映時間を飽きることなく見続けられました。美術やライティング、カメラワークの完成度は非常に高く、それだけでも鑑賞する価値があります。

 一方で、物語全体としては少し方向性が定まらない印象も受けました。『プロメテウス』で提示された「人類は誰に創られたのか」という壮大なテーマを掘り下げながら、一方では『エイリアン』らしいホラーやサバイバル要素も盛り込もうとしているため、哲学ドラマとモンスターパニックの間を行き来しているような構成になっています。そのため、どちらも最後まで突き詰め切れていないように感じました。

 特にホラー部分では、人間側の判断が不用意すぎる場面が続きました。未知の惑星で防護マスクも十分に着用せず調査を始めたり、正体不明の卵を不用意に覗き込んだりと、危険を避ける行動をほとんど取らないため、緊張感よりも「また同じことをしている」という印象の方が強かったです。シャワー中の襲撃や船内でのパニックなど、シリーズのお約束を意識した場面も多く、展開そのものには既視感がありました。

 その反面、マイケル・ファスベンダーが演じるデヴィッドとウォルターのやり取りは本作最大の見どころでした。同じ顔をした二体のアンドロイドでありながら、わずかな仕草や表情、話し方だけで人格の違いを演じ分けている演技力は圧巻です。フルートを使った静かな場面や、創造について語り合うシーンはシリーズの中でも特に印象に残りました。むしろ、この二人の関係だけを中心に描いた作品を見てみたいと思えるほど魅力的でした。

 また、未来世界のデザインも非常に洗練されています。ただ、『エイリアン』第1作より過去の時代を描いているにもかかわらず、本作の宇宙船や設備の方がはるかに先進的で美しく見えるため、時系列を考えると少し違和感もありました。生活感にあふれたノストロモ号とは対照的なデザインで、そのギャップは気になりました。

 それでもシリーズならではの壮大な世界観と映像美、そしてデヴィッドという強烈なキャラクターの存在感は健在です。続編が製作されるのであれば、結末の続きを確かめるためにも間違いなく鑑賞したくなる作品でした。

 そういえば最後まで見終えて思ったのは、デヴィッドとウォルターをまったく同じ外見で製造した時点で、いずれ誰かが入れ替わる事態は避けられなかったのではないかということです。そのあたりも含めて、作品を見終えた後にいろいろ考察したくなる一本でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2017/10/03 TOHOシネマズ川崎 2018/04/13 Blu-ray 2026/07/01 Amazonプライム・ビデオ

監督リドリー・スコット 
脚本ジョン・ローガン 
ダンテ・ハーパー 
出演マイケル・ファスベンダー 
キャサリン・ウォーターストン 
ビリー・クラダップ 
ジェームズ・フランコ 
ガイ・ピアース 

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