●こんなお話
「カントリーロード」に惹きつけられた宇宙へ入植する予定だった人たちが案の定道草してパニックになる話。
●感想
冒頭、真っ白な部屋で繰り広げられるアンドロイド同士の会話。マイケル・ファスベンダー演じるアンドロイドの登場により、一気に世界観へと引き込まれていくものでした。そこから展開されるワンショットワンショットが、まるで絵画のように美しく、ただその映像美だけでも約2時間、目を離さずに楽しめる作品でした。無機質な空間と哲学的な対話、そして精密に構築されたビジュアル。これだけでも一見の価値がありだと思います。
一方で、物語の中身としてはやや中途半端な印象が否めなかったです。『プロメテウス』の直接の続編でありながら、『エイリアン』シリーズの前日譚でもあるという設定ですが、逆にどちらにも十分に寄り切れていないという印象を残していました。人類創造や知性と創造者の関係性といった壮大なテーマがファスベンダー演じるアンドロイドを通して語られる一方で、その重厚な流れに、ホラーやアクションとしての「エイリアン襲撃」の要素が無理やりねじ込まれている感じを受けたり。
特に、後者のアクション・ホラー部分では、人間側の行動があまりにも軽率で、そのリアリティのなさがかえってコメディに見えてしまうもので。何かを受信し、調査に向かい、エイリアンに襲われて戦うという展開は、もはやオリジナル版の焼き直しに近く、目新しさが感じられなかったです。混乱の中で流れ弾が飛び交い、宇宙船が爆発する。シャワーシーンで襲撃されたり、卵を無警戒に覗き込んでしまったりと、ホラーであるはずの展開が、雑にテンプレート化されていて緊張感を欠いていました。
その一方で、ファスベンダーが1人2役で演じるアンドロイド同士のシーンは、静かで詩的ですらあり、心に残るものでした。フルートを使った妙に優雅なやり取りや、自己と自己の対話のような場面は、この映画の中でも特に印象深いパートです。むしろそうした静的な哲学ドラマの方をじっくり描いてくれたほうが、自分としては満足度が高かったかもしれないです。
また、舞台となる惑星や宇宙船内のビジュアルも秀逸で。非常に洗練された未来的デザインで、息をのむ美しさ。ただ、ここにも1つ違和感があって『エイリアン』1作目よりも過去の時代の話なのに、あちらの宇宙船は生活感にあふれ、リアルな未来感があったのに対して、こちらは極めてスタイリッシュで整いすぎていて、そのギャップが少し気になったり。
それでも、また続編が作られるなら観てしまうだろうと思わせるシリーズであることには変わりなく。クオリティや完成度に多少のばらつきがあっても、この世界観とビジュアル、そしてファスベンダーの存在感がある限り、追いかけたくなる魅力がありました。
そういえば、冒頭のターミネーター的な戦闘から始まる展開を見ていて思ってましたが、アンドロイドを作った側が、改良型も同じ顔にした時点でこの騒動は起きる運命だったのではないか…というツッコミも含めて、いろいろ考えながら楽しめた映画でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2017/10/03 TOHOシネマズ川崎 2018/04/13 Blu-ray
監督 | リドリー・スコット |
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脚本 | ジョン・ローガン |
ダンテ・ハーパー |
出演 | マイケル・ファスベンダー |
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キャサリン・ウォーターストン | |
ビリー・クラダップ | |
ジェームズ・フランコ | |
ガイ・ピアース |
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