●こんなお話
廃校で行われている地下女性格闘技で戦う女性たちの悩みと成長の話。
●感想
地下格闘技の世界で生きる主人公ミヅキと仲間たち。リングでは拳を交え、舞台裏では観客の対応もこなす日々。そんな中、新人女性の千夏が現れ、素人かと思いきや、並外れた強さを見せて一目置かれるようになる。
寡黙で他人と距離を置いていたミヅキも、千夏の登場に心を揺らされる。千夏はミヅキが“心は男”であることを見抜き、2人はやがて恋愛関係に。しかし千夏には逃げてきた過去があった。彼女は暴力的な夫の支配から逃げてきたのだが、その夫とその仲間が職場に乗り込んでくる。仲間たちと力を合わせて撃退するも、事態はさらに複雑に。
千夏の正体は実は有名な空手師範の娘。父のもとを離れた彼女を連れ戻そうと、父の裏切りの弟子が動き出す。格闘技場の閉鎖も決まり、千夏は連れ去られる。だが仲間たちは諦めず、交渉の末に3対3の決闘形式の大会を開催することに。
トレーニングを重ねて大会当日を迎え、1人目は敗れるも2人目が勝利。そして最終決戦はミヅキと千夏。2人の過去と想いがぶつかり合い、死力を尽くす戦いに。最後まで立ち続けたミヅキは、自身の成長と愛を背負って勝利を収める。エンディングでは、故郷へ帰り家族に挨拶をするミヅキの姿で物語は幕をおしまい。
物語はオープニングから切れ味抜群。流線型バイクにまたがるサラシ姿のミヅキ、SM女王ミーコ、追われる千夏、そしてまゆの登場シーンがテンポよくカッティングされ、一気に格闘シーンへなだれ込む構成は最高でした。
それぞれのキャラクターにも丁寧に焦点が当たって。ミヅキは心の秘密を抱えつつ、千夏に惹かれていく。ミーコは他人の望みに流されがちな自分に葛藤しながらも、自分の意思で成長していく。まゆは閉ざされた過去を乗り越え、一度は格闘技場を去るも戻る決断をする。ただ、彼女の“戻る理由”にはやや説得力が欠けていたように感じました。
悪役を演じた榊英雄の振り切った演技が強烈で面白く、物語を一段と盛り上げます。空手家集団「安藤一門」との激突は、やや唐突な展開(写真による脅迫など)が気になったりしましたが、それを補って余りある熱量とアクションが展開されます。
個々の女性たちが傷やトラウマを乗り越え、闘いを通じて自分自身を見つけていく姿は神々しさすら感じました。惜しいのは、敵側の人物描写が薄く、決戦のカタルシスがやや弱くなった点。それでもミヅキと千夏の闘いの激しさ、そしてそこに込められた想いには強く胸を打たれました。
ミヅキとミーコのバディ要素、ミヅキと千夏の恋愛ドラマ、そして総合格闘アクションとして、多くの魅力を詰め込んだ作品でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2014/02/23 角川シネマ新宿 2015/07/09 DVD 2024/04/14 Hulu
監督 | 坂本浩一 |
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脚本 | 港岳彦 |
原作 | 桜庭一樹 |
出演 | 芳賀優里亜 |
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多田あさみ | |
水崎綾女 | |
小池里奈 |