映画【軍神山本元帥と連合艦隊】感想(ネタバレ):山本五十六の葛藤と決意を描く

Admiral Yamamoto and the Allied Fleets
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●こんなお話

 山本五十六の日米開戦直前から戦死するまでの話。

●感想

 開戦に反対しつつも決定が下れば職務としてその任を全うしようとする、山本五十六という人物のイメージを丁寧に描いていく構成となっていました。日本とアメリカの国力差を的確に認識しながら、感情ではなく冷静な理性で時代と向き合っていた彼の姿が、淡々と描写されていきます。1956年に制作された作品ということもあり、戦後わずか10年余りでこのような実在の軍人を主人公とした映画が生まれたという事実自体に、当時の社会的な空気や制作側の覚悟のようなものがうかがえるようでした。

 物語は、主に軍部内での会議や討議のシーンが中心となっており、その合間に記録映像や簡素な特撮による戦闘描写が挟み込まれるというスタイルでした。そのため、歴史や当時の外交的背景に関心がある方であれば各場面に興味を持てると思いますが、ドラマとしての起伏や感情の振れ幅はそれほど強調されておらず、会話の連続と報告のやり取りが淡々と積み重ねられていく印象を受けました。

 主人公の山本が、周囲の空気や情勢とは関係なく、自らの信念や苦悩を内面に抱え続けているという構図が繰り返される構成になっており、そのため人物の変化や関係性の動きといった物語的な起承転結を感じにくい部分もあったかと思います。途中、芸者の弟が海軍兵学校に入れないかと相談を持ちかけられ、その弟が成長してパイロットとして活躍するようになるという一幕もありますが、それも短く描かれるだけで、印象としてはやや薄味でした。

 ただ、物語の中では日独伊三国同盟への反対や、真珠湾攻撃の是非、軍縮への希望、早期講和への思いなど、実際に歴史の中で分岐点となった出来事が次々と触れられており、そうしたテーマに関心がある方にとっては、山本五十六という人物の思考の流れを追体験できる興味深い時間となるのではないかと思います。また、ミッドウェイ海戦やい号作戦といった作戦名も登場し、それらをダイジェストで網羅的に眺められる構成も、資料的な価値を感じさせてくれました。

 総じて、戦史に触れたい方や、山本五十六という人物の立場や思想に関心のある方には、一つの視点として興味深い作品であると感じました。感情を揺さぶるというよりは、静かに記録的に、ある人物を見つめるような作り方が印象に残りました。

☆☆☆

鑑賞日:2020/09/27 DVD

監督志村敏夫 
脚本館岡謙之助 
出演佐分利信 
阿部九洲男 
高田稔 
江川宇禮雄 
林寛 
田崎潤 
細川俊夫 
宇津井健 
沼田曜一 
中村彰 
舟橋元 
高島忠夫 
杉山弘太郎 
御木本伸介 
中山昭二 
藤田進 
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