●こんなお話
壊滅のピンチのG.I.ジョーたちのリベンジの話
●感想
主人公チーム「G.I.ジョー」は、核兵器回収任務中に暗躍する悪の組織コブラの罠にはめられ、アメリカ政府から裏切り者扱いされてしまう話でした。
まず、チャンニング・テイタム演じるデューク率いるチームが北朝鮮で工作員救出に成功し、その後、パキスタンの核兵器保護任務も完了します。しかしすぐに裏切られ、空爆でほとんど全滅。ドウェイン・ジョンソン演じるロードブロック、D.J.コトロナのフリント、アドリアンヌ・パリッキのレディ・ジェイだけが生き延びます。
生き残った3人はで潜伏し、真犯人を探そうとします。やがて、彼らは現在のアメリカ大統領が偽物で、前作のカタキ役のザルタンというコブラ工作員にすり替わっていることに気づきます。
一方、スネーク・アイズとその弟子ジンクスが、かつてリーダーと崇めたストーム・シャドウのもとへ向かって奪還しようと雪山でアクションを展開。そこでストーム・シャドウは実は裏切りではなく偽装された死であり、真犯人はザルタンだと告白し、共闘を決意します。
ストーム・シャドウとジンクス、スネーク・アイズがチームに合流し、G.I.ジョーが集結。最終的に、コブラが操る世界核サミットが開かれ、ザルタンは衛星兵器「ゼウス・プロジェクト」を使って世界を強制的に無核化しようとします 。
クライマックスでは、ストーム・シャドウがザルタンと一騎討ちを演じて倒し、ロードブロックが兵器を破壊、さらにコブラを追跡。グループの元創設者ジェネラル・ジョー・コルトン(ブルース・ウィリス)の支援もあり、偽大統領やコブラの脅威を打破します。
最後に、本物の大統領が現れてジョーたちを称賛。ロードブロックはパットン将軍の銃を授与され、仲間を追悼して一発だけ撃つシーンでおしまい。
開始早々、かつての主要キャラクターたちが何の説明もなく画面から姿を消しており、シリーズを追ってきた観客としては戸惑いを覚えるスタートでした。中でも前作で存在感を放っていたデニス・クエイドが一切登場しないのは、個人的にかなり残念に感じました。
冒頭では北朝鮮でのミッションとパキスタンにおける核兵器奪還作戦、ふたつのアクションシーンが展開されます。しかしながら、これらは主に銃撃戦の応酬で構成されており、GIジョーというブランドに期待されるような、派手で夢のあるガジェットやスーパーテクノロジーの活躍がほとんど見られませんでした。前作では、パリの街中をボディアーマーで疾走したり、溶解ガスを用いた武器の登場など、トイ発の映画らしいユーモアと興奮に満ちていたのに対して、今作はリアリティ志向の方向に振りすぎた印象を受けます。
そんな中で印象に残ったのは、イ・ビョンホン演じるキャラクターを奪還するための雪山での忍者バトルでした。これは非常に立体的で、アニメのように空間を自在に駆け巡るアクションが展開され、画面から目を離せない時間となっていました。ここは唯一、観ていて高揚感を覚える場面でした。
物語は進み、プロットポイントとしてGIジョーのメンバーが壊滅的な打撃を受け、主人公ら数人を残して全滅状態に。装備も何もないまま歩いて逃げ延びたかと思えば、次のカットではなぜかアメリカに到着しており、友人たちと再会する姿が映されます。この移動の説明が一切ない点には、思わず笑ってしまいました。パキスタンからアメリカまで地続きで歩いたのかと、まるで草刈正雄主演の『復活の日』を彷彿とさせる、地球規模の移動です。
その自由すぎる移動描写の影響か、以後に展開される大統領救出や核爆弾によるカウントダウンといったクライマックス的な要素にも、緊張感や現実味が乗ってこなくなってしまいます。物語の内部にあるルールの整合性が揺らいでしまったことで、観る側の感情も引き込まれにくくなっていました。
敵側のキャラクターとして再登場したイ・ビョンホンの扱いも、なかなかに不遇なものでした。「地獄へようこそ」と台詞を吐いたかと思えば、すぐさま電撃でダウン。その後、爆発で背中に大やけどを負い、雪山で回復したかに見えるも、今度は催眠ガスで眠らされ、バッグに詰められて雪山を転がされるという扱い。そのあまりの情けなさに、思わず心配してしまうほどでした。
最終盤では名もなき忍者との戦闘に回され、見せ場も少なく、そのまま味方陣営に加わる流れになりますが、なぜ敵から味方に寝返ったのか、その動機が描かれず、観ていて少し釈然としませんでした。さらに、悪役としてのカリスマも希薄で、前作のボスキャラクターの存在感を思うと、何とも寂しい印象が残りました。
面白いガジェットが登場するかと思いきや、爆弾を運ぶ小型ドローンのようなものが出てくるくらいで、せっかくの素材を活かしきれていなかったのは惜しい限りです。偽物の大統領の行動にも一貫性がなく、核保有国の首脳たちを一堂に集めて相互自爆を仕掛けるという展開も、合理性を感じにくいものでした。
クライマックスは銃撃戦が中心となりますが、スタイリッシュな動きがあるわけでもなく、むしろ模倣的な演出に留まってしまい、盛り上がりに欠けていた印象を受けました。顔を修復できるナノマシンの描写があったはずの偽大統領も、最終的にはあっさりと退場してしまい、前振りの意味も霞んでしまいました。
最終的には、前作の要素を大きく切り捨て、キャラクターを入れ替え、予算的な制限が見え隠れする内容になっていたように感じます。イ・ビョンホンに関しては、彼の魅力が活かされず、むしろコミカルな扱いになっていたのが惜しかったです。そしてロンドンに甚大な被害が出ているにもかかわらず、その後に表彰式が行われていたりと、現実感を超越した明るさをもって幕引きされており、その落差も印象に残る作品でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2013/06/14 TOHOシネマズ南大沢 2015/11/20 NETFLIX 2021/10/20 Amazonプライム・ビデオ 2025/07/30 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ジョン・M・チュウ |
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脚本 | レット・リース |
ポール・ワーニック |
出演 | ブルース・ウィリス |
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イ・ビョンホン | |
チャニング・テイタム | |
エイドリアンヌ・パリッキ | |
レイ・パーク | |
ドウェイン・ジョンソン | |
ジョナサン・プライス | |
レイ・スティーヴンソン | |
エロディ・ユン | |
D・J・コトローナ | |
アーノルド・ヴォスルー |