●こんなお話
戦時中に飛行機作りと難病の女性との交流の話。
●感想
少年のときから飛行機が好きで憧れのイタリアの設計士と夢を語らい目標に向かって突き進みます。
夢を持ち続け、そしてそれをかなえ続けられるというのは素晴らしい理想だし。相変わらずジブリらしい風の表現は最高で、地震のときの不気味な轟音かと思いきや、主人公とヒロインの出会いも風がきっかけで再会を演出してるのが面白いです。
前半から中盤までは主人公がひたすら夢を追いかけ頑張る姿が活き活きと描かれて面白く見ることができました。
ただ中盤、主人公が避暑地に行くあたりから途端に話はストップしてしまいます。震災で出会った少女との再会があり、キャッキャキャッキャする2人を淡々と描くのを呆然と見つめていました。かと思えば秘密警察に追われるというサスペンスもふわっと出てきたり。
そして紙飛行機を投げ合っただけで恋に落ちた2人のシークエンスが終わると再び仕事に戻る。またここから話は活き活きとしだして、飛行機の設計などのディテールが細かく面白く見てました。
ところがまたヒロインが出てきて、後はチュッチュしてるだけ。ここから主人公がゼロ戦がどういう気持ちで作ったのか? 綺麗な飛行機を作りたいという思いとは裏腹に戦争の道具になる葛藤などは一切ないし。ただ、タバコ吸ってるかキスしてるかのどっちか。ちょっと見てるのが恥ずかしいです。
宮崎アニメらしい爽快な空中戦はテーマとして描けず、かと言って戦争と飛行機の矛盾にも悩まない。ゼロ戦の設計にも悩まない。ただヒロインに会いたいという気持ちだけが行動の動機。
別にゼロ戦の栄光や凄い物を日本人が作ったとかの高揚感は描かなくいいから。せめて人間を描き、ゼロ戦の設計がいかに大変でいかに凄いことか少しは知りたいし、モデルとなった人物がどういう思いでゼロ戦を作ったのかを知りたかったです。そこに恋愛が絡んでくれれば感動できると思いました。
前半と後半がまるきりかみ合ってないのが退屈に感じた理由だと思います。
それに主人公は弱きを助け強きをくじくアニメの主人公のような造形が大正昭和を生きる実在の人物をモデルにしたとは思えない人間だし。そもそも最初から最後まで特に挫折を体験せずに簡単に設計をしていくようにしか思えないです。失敗してもすぐに前を向いて歩きだす。その原動力を知りたいです。なぜ、迷わず悩まず歩き続けられるのか。
更に問題はヒロインで、けなげに主人公を待ち、帰ってきたら三つ指ついて挨拶して服をたたんでという。こうあってほしい理想の女性像で、ちょっと今の時代に見てるのは恥ずかしいです。ひたすらに主人公を思い好き好き光線を出してくる。そして人間的に完璧。まさに完全無欠の女性でした。
航空機パートと恋愛パートがドラマとしてお互いを高めあっていなくて、バラバラに空中分解してるように思えました。仕事に悩み恋に悩みつつ夢を掴むために頑張る男として描かないといけないかなと。
ちょっとゼロ戦を作った方たちがこの映画を見て悲しくなってしまうのではないかと思う映画でした。
☆☆
鑑賞日: 2013/07/20 イオンシネマ多摩センター 2017/03/19 Blu-ray
監督 | 宮崎駿 |
---|---|
脚本 | 宮崎駿 |
原作 | 宮崎駿 |
出演(声) | 庵野秀明 |
---|---|
瀧本美織 | |
西島秀俊 | |
西村雅彦 | |
スティーブン・アルパート | |
風間杜夫 | |
竹下景子 | |
志田未来 | |
國村隼 | |
大竹しのぶ | |
野村萬斎 |