映画【仁義なき戦い 広島死闘篇】感想(ネタバレ):炎の中を駆け抜ける男たちの物語。情と義が交錯する一作

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●こんなお話

 ヒットマンが親分に使われるだけ使われて大暴れする話。

●感想

 広島・呉を離れ、物語は広島市を拠点とする村岡組と大友連合会の抗争へと移る。前作で描かれたような群像劇的な構成から、今回は北大路欣也さん演じる山中という一人のヒットマンに焦点が当たる構成となっている。彼の動きを通して、組織の中での駆け引きや裏切り、そして暴力の連鎖が濃密に描かれていく。

 山中は、予科練あがりの過去を持ち、人を撃つたびに口笛を吹く。どこか儀式的で、戦場帰りの兵士が持つような静かな狂気が彼にはある。その姿は、撃つことで自らをも焼いていくようで、銃口の先だけでなく、心の奥底まで焦げていくような印象を残す。組織の思惑に翻弄され、ただ命令を遂行する彼の姿には、哀しさと美学が同居していた。

 対するは千葉真一さん演じる大友。こちらは破裂寸前の怒りと衝動が渦巻く男で、常に木刀を振り回しながら突進していく。その勢いは圧巻で、競輪場の利権を巡って村岡組に殴り込みをかけるシーンなど、まさに狂犬と表現したくなるような迫力があった。

 そして本作には、物語に華を添える役として梶芽衣子さんが登場。艶やかでありながら、どこか影を感じさせる佇まいが美しく、目を奪われる存在だった。そして忘れてはならないのが、成田三樹夫さん演じる松永。村岡組の若頭として冷静さと胆力を備え、組長を支えるだけでなく、山中に対しても不器用な優しさを見せる。まさに義理と人情を体現したようなダンディズムが滲み出ていたと思います。

 ただ、山中と梶芽衣子さんの関係性の進展がやや急に感じられた点は否めません。ふたりが惹かれあう過程にもう少し丁寧な描写があれば、さらに感情移入できたようにも感じました。それでも、物語終盤での山中の最期、そして号泣する梶芽衣子さんの姿は、観る者の胸に強く残る名場面だったと思います。

 全編を通して、エネルギーに満ちた演出が息をつかせず、緊張感のある展開が最後まで持続していました。暴力や裏切りといったテーマを扱いながらも、どこか情に厚く、人間の弱さや美しさまでも描き出す力のある映画だったと感じております。登場人物それぞれに確かな存在感があり、映像と演技の迫力が相まって、非常に見応えのある作品に仕上がっていたのではないでしょうか。

☆☆☆☆☆

鑑賞日: 2013/03/28 Blu-ray

監督深作欣二 
脚本笠原和夫 
原作飯干晃一 
出演菅原文太 
前田吟 
松本泰郎 
司裕介 
金子信雄 
木村俊恵 
名和宏 
成田三樹夫 
北大路欣也 
山城新伍 
宇崎尚韶 
小池朝雄 
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