映画【ブルータル・ジャスティス】感想(ネタバレ):冷酷な正義を描く長編犯罪映画

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●こんなお話

 強盗犯の金塊を奪おうとする停職中の刑事や強盗犯のドライバーとかがいろいろ殺し合いをしていく話。

●感想

 ロサンゼルス市警のベテラン刑事ブレット・リッジマンと、その相棒である刑事トニー・ルラセッティは、強引な取り調べの最中に容疑者へ暴力を振るう様子を撮影され、その映像がSNSで拡散されたことをきっかけに、上司から六週間の無給停職処分を言い渡される。病気を抱える妻と娘を養う必要があるブレットと、結婚を控えながら金銭的余裕のないトニーにとって、この処分は生活そのものを揺るがす現実。

 将来への不安と焦りを募らせる中、ブレットは裏社会の情報屋フリードリッヒを通じて、冷酷非情な犯罪者ローレンツ・ボーゲルマン率いる武装強盗団が、近く大規模な金塊強奪を計画しているという情報を掴む。その話をトニーに持ちかけたブレットは、警察として正義を貫くのではなく、個人としてその犯行を尾行し、強盗たちを始末したうえで金塊を横取りするという危険な選択肢を提示する。二人は葛藤を抱えながらも、現実的な打算に押され、その計画へと踏み込んでいく。

 一方、刑務所を出所したばかりのヘンリー・ジョーンズは、車椅子生活を送る弟と薬物依存症の母親を抱え、家族を守るために金を必要としていた。幼なじみのビスケットに誘われ、ヘンリーはボーゲルマン一味の仕事に加わるが、その内容は銀行を襲撃し金塊を強奪するという命懸けのものだった。計画当日、強盗団は銀行職員を人質に取り、金塊の在処を吐かせるために一切のためらいなく殺戮を重ね、現場は瞬く間に惨状と化す。

 銃撃戦の最中、ビスケットは致命傷を負って命を落とし、ヘンリーは強い罪悪感と恐怖を抱えながらも現場から逃げ延びる。その頃、強盗団を長時間にわたり尾行していたブレットとトニーは、警察への通報を行わず、私利私欲を優先した結果、犯行後の一味と直接対峙する状況へ追い込まれる。緊張が張り詰める中で銃撃戦が始まり、混乱の只中でボーゲルマンは人質の女性に銃を握らせ、トニーを撃たせるという卑劣な手段に出る。

 ブレットはためらうことなく人質ごと撃ち抜くが、トニーはそのまま息を引き取る。相棒を失ったブレットは怒りと喪失感に支配され、復讐に突き動かされるようにボーゲルマン一味を皆殺しにする。その場に現れたヘンリーとブレットは互いに警戒しながらも、金塊を分け合うという一時的な取引を成立させるが、最終的にヘンリーはブレットを射殺し、金塊を独占する選択を下す。

 その後、ヘンリーは奪った金によって母親と弟と共に豪邸で新たな生活を始める。一方で、ブレットの家族宛てに匿名で金塊の一部を送っておしまい。


 出所したばかりの青年が、母親に薬物や売春をやめるよう訴え、車椅子の弟を気遣う姿から始まる描写は、本作が単なる犯罪映画ではないことを静かに示していると感じました。刑事二人もまた、暴力的な捜査によって職を追われ、無給という現実に直面し、家族を守るために怪しい仕事へと足を踏み入れていきます。物語の骨格自体は王道ですが、冒頭から差し込まれる乾いたバイオレンス描写が強烈で、ザラー監督らしい冷酷さが早い段階から印象に残りました。

 後半に描かれる強盗犯との長い攻防は張り詰めた緊張感に満ちており、誰が金塊を手にするのかという期待すら空虚に感じさせる展開がとても印象的でした。犯人たちの感情が読み取れない無慈悲な行動や、遠慮なく撃ち込まれる銃声の響きも恐怖を煽り、音響面の演出も効果的だったと思います。長時間にわたる尾行シーンも珍しく、時間そのものを観客に体感させる作りが独特でした。

 一方で、上映時間が約160分と長く、中盤まで物語が大きく動かない点は、集中力を求められる部分でもあります。刑事二人の車内での会話は意図的に方向性が見えにくく、面白さを掴むまでに時間がかかりました。途中で挿入される、出勤する女性の日常描写も意外性はありましたが、物語全体との距離感に戸惑いを覚えたのも正直なところです。ただ、その夫の突き放すような態度は、本作特有の冷淡さを象徴しているように感じました。

 感傷的な演出を極力排除したドライな作風は好みが分かれると思いますが、この冷え切った空気感や救いのなさに魅力を感じる方には、強く印象に残る一本になると思います。

☆☆☆

鑑賞日:2020/12/02 DVD 2025/12/24 U-NEXT

 

監督S・クレイグ・ザラー 
脚本S・クレイグ・ザラー 
出演メル・ギブソン 
ヴィンス・ヴォーン 
トリー・キトルズ 
マイケル・ジェイ・ホワイト 
ジェニファー・カーペンター 
ウド・キア 
トーマス・クレッチマン 
ドン・ジョンソン 
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