映画【アラモ(2004)】感想(ネタバレ):アラモ砦の戦いを描いた壮大な歴史ドラマ

the-alamo2004
スポンサーリンク

●こんなお話

 アラモ砦の戦いの話。

●感想

 夜のように沈んだ暗がりの中で、自然光を活かすようなライティングが全編にわたって印象的だった。現代的な照明演出とは異なり、蝋燭や陽の光、焚き火などを意識した光源によって、1830年代という時代の空気がしっとりと滲んでいた。そうした映像の質感そのものが、映画全体のトーンを決定づけていて、観客をアラモ砦のなかへと静かに引き込んでいく。

 物語の中心は、テキサスの独立を目指すアメリカ人たちが、メキシコの大軍を相手に砦に立てこもって戦いに臨むという構図。彼らは数において圧倒的に不利で、背後には援軍の見込みもない。判官びいきな立場としては、その状況だけで胸が熱くなってしまう。夕暮れの中、バイオリンの音色が響く場面など、戦場の中にも詩的な時間が流れ、叙情的な瞬間が丁寧に描かれていた。

 ただ、歴史的な背景についてはあまり説明されず、テキサスがなぜ独立を目指すのか、アラモ砦がどうしてここまで重要視されるのかといった核心に関しては語られないまま物語が進んでいく。結果として、登場人物たちが命を懸けて戦おうとする動機が掴みきれず、いささか距離を感じてしまう部分もあった。主人公格の若き司令官トラヴィスが「テキサスのために戦う」と熱を込めて演説する場面はあるが、その「テキサスのため」が具体的にどんな理想や感情を含むものなのかが見えてこなかったのが少し残念だった。

 登場人物は4人の主要キャラクターを中心に描かれる。若き司令官トラヴィスは真面目で理想に燃えているが、人望がなく、兵士たちとの距離に悩む。もうひとりの指導者ジム・ボウイは民兵たちからの信頼が厚いが、病に倒れてからは寝台の上に閉じこもることとなる。演じた俳優の持つ深みも相まって、口数は少なくとも存在感のある人物だった。かつての英雄デイビー・クロケットは、伝説の重荷に少し疲れている様子があり、ビリー・ボブ・ソーントンの抑えた芝居が胸に沁みた。そしてヒューストン将軍は、援軍を送るか否かの判断に葛藤しながら、政治的な駆け引きに身を置いている。彼ら4人の心情と行動が映画をじっくりと構築していく。

 クライマックスのアラモ砦攻防戦は壮絶で、爆発音が鳴り響く中、次々と倒れていく味方たちの姿が強く焼きついた。砦の壁が崩れ落ち、男たちが次々と銃撃に倒れ、剣を手に突撃していく姿には息をのんだ。長く続いた静寂が、この瞬間のためにあったのかとすら思える迫力だった。

 とはいえ、戦いが終わったと思ったところから、さらにもう一つの戦闘が描かれる構成になっていて、物語が一度盛り上がった後にさらに続いていく展開には、やや気持ちがついていかない部分もありました。報復のシーンがないと観客としての感情が収まらないという意図は理解できるのですが、個人的にはアラモの攻防で十分に物語が成立していたようにも感じました。

 アラモという場所が持つ意味、テキサス独立戦争の持つ背景、アメリカ史における象徴性など、前提となる知識があればより深く味わえたと思いますが、そういった情報がなくても、映像や俳優の演技が語る熱量は確かに届きました。歴史のリアルさを追求したがゆえに娯楽性よりも事実性を重んじた構成だった印象です。そこに魅力を感じるかどうかで、映画の受け取り方は大きく変わってくるのかもしれません。

☆☆☆

鑑賞日: 2014/04/02 DVD

監督ジョン・リー・ハンコック 
脚本レスリー・ボーム 
スティーヴン・ギャガン 
ジョン・リー・ハンコック 
出演デニス・クエイド 
ビリー・ボブ・ソーントン 
ジェイソン・パトリック 
パトリック・ウィルソン 
エミリオ・エチェヴァリア 
ジョルディ・モリャ 
レオン・リッピー 
トム・デイヴィッドソン 
マーク・ブルカス 
タイトルとURLをコピーしました