映画【それでも夜は明ける】感想(ネタバレ):奴隷制度の闇に迫る衝撃作|美しい風景と対比される地獄の130分

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●こんなお話

 1840年代のアメリカで騙されて奴隷になった男の苦難の歴史の話。

●感想

 主人公や同じ立場の奴隷たちが、苦しみに満ちた日々を生きる姿が描かれていきます。希望も逃げ場もない絶望の中、ただただ理不尽な人間の世界が、アメリカの美しい自然の風景と対比されながら映し出されていきます。

 過酷な労働を強いられ、鞭で打たれ、首を吊るされ、女性はレイプされ、命も簡単に奪われてしまう。過酷な現実が、約130分の中に詰め込まれています。

 俳優たちの壮絶な演技に加え、彼らを容赦なく迫害する俳優たちもまた、その役を全力で演じており、あまりにリアルで目を覆いたくなるようなシーンが連続でした。

 この物語の舞台となるのは、奴隷制度が当然のように存在していた時代。黒人を当たり前のように虐げる人々がいる一方で、心のどこかで助けたいと思っていても、恐怖から行動できない人も描かれます。中には、自分の保身のために同じ立場の仲間を売る人物も登場し、単純な勧善懲悪では終わらない複雑な人間模様が良かったと思います。

 ただし、地獄のような生活が延々と続く中で、なぜ主人公が生き抜こうとする意志を持ち続けられたのか、その背景がやや分かりづらく感じられました。極限状態にあって、どこに希望を見出していたのか、もう少し描かれていたら理解しやすかったかもしれません。

 また、結末についても少し疑問が残りました。結局のところ、ブラッド・ピット演じるキャラクターが登場しなければ、何も変わらなかったのでは?と思えるような展開です。けれど、もしかしたら主人公がその運を引き寄せるだけの力を持っていた、ということなのかもしれません。

 アメリカの奴隷制度を描いた作品ではありますが、その根底にあるのは、現代にも続いている人身売買や奴隷労働の問題であり、過去を描くことで現在の社会を見つめ直す意味ある映画だと感じました。

☆☆☆

鑑賞日: 2014/03/08  TOHOシネマズ府中

監督スティーヴ・マックィーン 
脚本ジョン・リドリー 
出演キウェテル・イジョフォー 
マイケル・ファスベンダー 
ベネディクト・カンバーバッチ 
ポール・ダノ 
ポール・ジアマッティ 
ルピタ・ニョンゴ 
サラ・ポールソン 
ブラッド・ピット 
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