●こんなお話
脱獄囚が何とか機関車に乗ったら、それが暴走してこのままだと脱線して化学工場が大爆発するぞとなる話。
●感想
アラスカの重警備刑務所。その独房に収容されているのが、かつて伝説的な存在だった脱獄犯。刑務所を牛耳る独裁的な所長の支配のもと、彼は孤立した存在として扱われていた。だが、勝訴によって独房から解放され、自由の可能性が開かれる。
そこに絡んでくるのが、少女暴行の罪で収監された若者。この若者は主人公を崇拝し、無邪気なテンションで距離を詰めてくるが、所長の命を受けた刺客として主人公をリング上で殺そうとする計画に巻き込まれたりもする。
所長への怒りと復讐心から脱獄を決意した主人公に、勝手についてくる若者。二人は下水道を通って脱出し、吹雪に覆われたアラスカの雪原を踏破。やがて一台の機関車を見つけ、無人と思われるそれに乗り込む。しかし、運転士の老人は乗車直後に心臓発作で死亡。気づけばフルスロットルのまま、誰にも止められない暴走機関車となってしまう。
指令センターはパニック状態。脱線させて止めようとするが、車両に人が乗っていることがわかり、その選択も封じられる。先頭車両に向かううちに、実はもう一人、休憩中だった運転士助手の女性が乗車していたことが判明。彼女と共に、何とか止めようとするが、車両の接続部のブレーキを使って減速させるのが精一杯。列車はギリギリのところで橋を渡り、死の淵をかすめながら進み続ける。
一方、主人公を自らの手で捕まえようと、所長はヘリで機関車に乗り込み、男同士の一騎打ちが始まる。最後は主人公が所長を取り押さえ、若者と女性を切り離した車両で逃がし、自分と所長は先頭車両とともに吹雪の中へと消えていく。
全体を通して感じられるのは「男たちの本能」。機関車を止めようと必死にもがく姿や、暴走する感情をぶつけ合う主人公と所長の対立が画面越しに迫ってきて。猛吹雪の中、鉄と氷と肉体のぶつかり合い。凍てついた機関車を止めようとする姿は、まさに男のドラマでした。
舞台はほぼ車内と司令部だけで展開される密室劇のような構成。機関車の暴走が表向きのテーマですが、実際には主人公と所長、野性と権力の対立が物語の本質となっていると思いました。若者やヒロインがいても、止められない“野獣”のような主人公の存在感を、ジョン・ヴォイトが圧巻の迫力で演じていたと思います。
ただし、列車事故やパニック展開の部分にはそれほどリアリティはなく、あくまで背景として存在している印象。所長の行動も現実離れしていて、漫画的でついていけないところもあったり。
それでも、全体としては「男気」をしっかり感じさせてくれる作品。機関車の音と吹雪の中で繰り広げられる、男たちの意地と対決を描いた熱い一本でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2016/04/13 DVD 2023/11/21 Amazonプライム・ビデオ
監督 | アンドレイ・コンチャロフスキー |
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脚本 | ドルジェ・ミリセヴィック |
ポール・ジンデル | |
エドワード・バンカー | |
原作 | 黒澤明 |
出演 | ジョン・ヴォイト |
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エリック・ロバーツ | |
レベッカ・デモーネイ | |
カイル・T・ヘフナー | |
ジョン・P・ライアン |
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