●こんなお話
殺し屋の主人公がターゲットを殺すことができずにいたら、案の定組織から別の殺し屋を派遣されて、その人たちと戦う話。
●感想
物語はジェニファー・ガーナー演じるエレクトラの過去から始まる。幼い頃に父を失い、その喪失感とトラウマを抱えながら育ち、やがて師であるスティックから忍術を叩き込まれる。現在の彼女は孤独な暗殺者として日々を過ごしており、感情を封じ込めた冷徹な姿が描かれる。そんな中、新たな暗殺任務の情報を受けて島に潜伏することになる。そこで隣人のマークと娘アビーと出会い、心を閉ざしていた彼女の内側にわずかな変化が芽生える。だが、任務の標的がその父娘であることが判明し、エレクトラは苦悩に揺れる。最終的に彼女は暗殺の任務を放棄し、二人を守る側に回る決意を固める。
そこから物語は「ザ・ハンド」と呼ばれる忍者暗殺集団との対決へと突き進む。彼らは異形の力や超常的な能力を持った刺客たちで、刺青を実体化させる男、毒を操る女、巨体を誇る戦士などが次々に立ちはだかる。エレクトラは師スティックの助力を得ながら戦いを続け、やがてアビーが「トレジャー」と呼ばれる特別な存在であることを知る。執拗に狙われるアビーを守るための逃避行はロードムービーのように続き、過去のフラッシュバックとともにエレクトラ自身の心の弱さも繰り返し描かれる。クライマックスは豪奢な屋敷での総力戦となり、数々の刺客を打ち破った後、宿敵キリギとの一騎打ちに突入する。幻術に翻弄されながらもエレクトラは己を乗り越えて勝利をつかむ。最後にはアビーに自らのような道を歩んではならないと告げ、彼女の前から去っていく。
作品全体はハリウッド的に誇張された“ニンジャ”の世界観が前面に押し出されており、その派手さやエンターテインメント性を楽しめる仕上がりでした。序盤の父娘との交流は静かな空気が漂っていて、エレクトラの孤独と再生が物語の核に据えられていることも伝わってきます。ただ、映画の尺が90分ほどと限られているためか、物語の本筋に入るまでに時間がかかり、実際に敵との戦いが始まるまで30分以上を要していた点は少し間延びした印象もありました。
また、登場する刺客たちは設定こそ派手で魅力的でしたが、戦いの結末があっけなく描かれてしまったのが残念に感じられました。銃弾を弾き返すほどの防御力を持つはずの人物が大木の下敷きになると同時に爆発する場面や、刺青を操る忍者が瞑想している隙に敗れてしまう場面、毒を操る女が背後から簡単に倒される場面など、演出に工夫の余地があったように思います。せっかくユニークな敵役たちであったのに、退場の仕方が雑に感じられてしまったのは惜しい点でした。
敵組織内での内輪もめが比較的長く描かれていたり、エレクトラが夢から覚めて過去の記憶に苛まれる描写が何度も繰り返されたりと、物語の流れが停滞してしまう瞬間もありました。そのため、アクション映画としての高揚感が十分に積み上がる前に終わってしまった印象が残ります。
とはいえ、主人公が孤独から人とのつながりを取り戻していくというテーマはしっかり描かれていて、ガーナー演じるエレクトラの存在感は確かに輝いていました。エンタメ的な忍者映画として肩の力を抜いて楽しむ分には、派手な戦闘描写や異能バトルの数々に魅力を感じられる部分も多かったと思います。
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鑑賞日: 2016/04/16 NETFLIX 2025/08/28 Disney+
監督 | ロブ・ボウマン |
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脚本 | ロブ・ボウマン |
スチュワート・ジッカーマン | |
レイヴン・メツナー |
出演 | ジェニファー・ガーナー |
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テレンス・スタンプ | |
キルステン・プラウド | |
ゴラン・ヴィスニィック | |
ケリー・ヒロユキ・タガワ | |
ウィル・ユン・リー | |
ナターシャ・マルテ | |
ボブ・サップ |
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