●こんなお話
親友二人と一人の女性が織りなす、切ない三角関係な話。
詳細ネタバレあらすじ
昭和12年の春。中小企業を経営する門倉修造は、軍需景気によって事業を成功させている実業家で、妻の君子がいる一方、女性関係の噂が絶えない人物。一方、水田仙吉は門倉とは対照的な生活を送るサラリーマンである。二人は長年の付き合いがあり、門倉は水田一家の生活を何かと助けている。
地方勤務をしていた水田が3年半ぶりに東京へ戻ることになり、門倉は水田一家が暮らす家を探すなど、生活の準備を手伝う。水田の妻・たみと娘・さと子も門倉を家族同然に迎え入れ、門倉は水田家を頻繁に訪れるようになる。水田が仕事や金銭の問題を抱えた際には、門倉が金を用立てるなどして水田を助ける。
門倉は水田一家と食事をしたり、酒を飲んだりしながら、家族ぐるみの付き合いを続ける。水田が留守にしているときも門倉は水田家を訪れ、たみやさと子と過ごす。一方、門倉の妻・君子は、夫の女性関係について不満を抱えている。門倉は君子と暮らしながら、外では別の女性とも付き合っている。
水田の娘・さと子には縁談が持ち上がる。君子の紹介によって、さと子は帝大生の石川義彦と見合いをする。義彦は裕福な家庭に育った学生で、さと子と会うようになる。
さと子と義彦は見合いの後も付き合いを続け、二人だけで会うようになる。さと子が肺炎で寝込んだ際には、義彦がヴェルレーヌの詩集を持って見舞いに訪れる。
水田は娘と義彦の関係を心配し、二人の付き合いを気にかける。しかし、さと子と義彦はその後も会い続ける。
一方、門倉は水田を芸者のまり奴に紹介する。水田はまり奴と付き合うようになるが、門倉は二人の関係に介入する。門倉はまり奴を水田から遠ざけるため、自分がまり奴の相手になる。
このことで、水田と門倉の間にも問題が起こる。門倉は水田のために金を用意したり、女性関係にまで介入したりするが、水田は門倉の行動について疑問を持つようになる。
門倉と水田は料亭で酒を飲みながら話をする。水田はまり奴の件について門倉を責め、二人の間で口論になる。長年付き合ってきた二人の関係は、この出来事をきっかけに大きく揺れる。
その頃、さと子と義彦の関係にも事件が起こる。義彦のもとを訪れていたさと子の前に特高が現れ、二人は連行される。義彦は政治的な活動に関係していたため、当時の社会情勢の中で監視されていた。
門倉は自分の人脈を使って動き、さと子を助ける。たみは娘の将来を心配し、さと子と義彦の交際について門倉に相談する。門倉はたみに対して、人を好きになることについて話す。この場面では、さと子と義彦の関係をめぐって二人が会話をする。
やがて、日本は戦争へ向かっていく。昭和12年の東京でも社会情勢が変化し、人々の生活にも戦争の影響が及び始める。水田にはジャワ支店への転勤話が持ち上がる。水田は海外へ赴任することになり、たみも水田について行くことになる。一方、さと子は東京に残ることを選ぶ。
水田一家が東京を離れることになり、門倉も水田家を訪れる。門倉、水田、たみはこれまでと同じように酒を飲みながら過ごす。そこへ義彦が水田家を訪れる。義彦には召集令状が届いており、まもなく軍隊へ行くことになっていた。
さと子は義彦のもとへ向かう。門倉はさと子に義彦を追うよう促し、さと子は家を出て義彦の後を追う。その後、水田、たみ、門倉の三人が残される。三人は一緒に酒を飲む。
水田は門倉とたみの関係について触れ、三人の間でこれまで明確に語られてこなかった問題が表面化する。しかし、門倉とたみが夫婦になることはなく、水田とたみの夫婦関係も続いている。門倉は水田の親友として水田家と付き合い続け、たみも水田の妻として生活を続ける。
●感想
正直なところ、個人的にはかなり大人向けの作品に感じました。親友同士の男二人と、そのうち一人の妻という三人の関係を中心に物語が進んでいきますが、「この二人は親友なのに、なぜ恋愛感情のようなものが生まれているのか」という部分が、私は少し理解しづらかったです。
門倉が水田のためにお金を工面したり、水田一家の面倒を見たりする姿も描かれますが、そこまで親友のために尽くす感覚にも、個人的にはあまり入り込めませんでした。
さらに門倉には妻の君子がいるのに、水田と一緒に飲みに行ったり、女性関係を持ったりする場面もあり、登場人物たちの男女関係や友情の距離感が複雑です。昭和の男性同士の付き合い方や夫婦関係を描いた作品なのだと思いますが、現代の自分から見ると、なかなか感情移入しにくい部分もありました。
物語には、さと子のお見合いも登場します。お見合い相手の義彦との恋愛や、二人の関係をめぐるエピソードも描かれますが、こちらも個人的にはあまり興味を持てませんでした。
門倉とたみ、水田の関係も、さと子と義彦の恋愛も、作品の中では重要な要素として描かれています。ただ、私自身は登場人物たちの恋愛や友情の機微を細かく読み取るタイプではないため、物語の中心にある人間関係を十分に楽しめなかった印象です。
一方で、映画を観ていて興味深かったのは、昭和12年という日中戦争が始まった時代の東京で、普通の市民がどのような生活を送っていたのかを見られるところでした。
戦争そのものを大きく描くのではなく、戦争へ向かっていく社会の中で、仕事をして、家族と暮らし、友人と酒を飲み、娘の結婚を心配する人々の姿が描かれています。
門倉や水田たちも、最初から戦争の最前線にいるわけではありません。普段の生活を送っている人々の周囲に少しずつ社会の変化が近づいてきて、やがて転勤や召集令状という形で、それぞれの人生にも影響を及ぼしていきます。
この「戦争が始まった時代の一市民の生活」を見るという意味では面白かったです。戦争映画というと戦場や兵士を中心に描く作品が多いですが、本作では戦争へ向かう時代に生きる一般の人々の暮らしが物語の背景になっています。
そのため、恋愛や友情の部分にはあまり入り込めなかった一方で、昭和12年という時代の空気を感じられる作品としては興味深く観ることができました。
高倉健さんと板東英二さんが演じる門倉と水田の友情も、現代の感覚とは少し違う距離感で描かれています。親友だからこそ家族のように付き合い、金銭的な問題まで助け合い、互いの家庭にも深く関わっていく。その一方で、妻をめぐる複雑な感情も生まれてしまうという関係です。
この独特な人間関係を理解し、登場人物たちの気持ちを細かく読み取れる人なら、かなり味わい深く楽しめる作品だと思います。
ただ、個人的には恋愛や友情の描き方よりも、戦争へ向かっていく昭和12年の東京で、人々がどのように日常生活を送っていたのかという部分のほうが印象に残りました。
全体としては、親友同士の男二人と、その間にいる一人の女性という三角関係を軸に、家族、友情、恋愛、若者の恋、そして戦争へ向かう社会を描いた作品です。大人同士の複雑な感情をじっくり味わうタイプの映画なので、私には少し距離のある作品でしたが、昭和の市民生活や時代背景を見るという点では興味深い映画でした。
☆☆
鑑賞日:2026/07/29 U-NEXT
| 監督 | 降旗康男 |
|---|---|
| 脚本 | 中村努 |
| 原作 | 向田邦子 |
| 出演 | 高倉健 |
|---|---|
| 富司純子 | |
| 板東英二 | |
| 富田靖子 | |
| 山口美江 | |
| 真木蔵人 | |
| 大滝秀治 | |
| 三木のり平 | |
| 宮本信子 |


