映画【座頭市(2003)】感想(ネタバレ):北野武が描く最強の按摩

The-Blind-Swordsman-Zatoichi
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●こんなお話

 金髪の居合の達人がヤクザを殺していく話。

詳細ネタバレあらすじ

 街道で休んでいる盲目の按摩・市は、数人のやくざに追われる。やくざたちは子供を使って市の朱塗りの杖を奪わせる。しかし、その杖には刀が仕込まれていた。市は杖を取り戻して刀を抜き、襲ってきたやくざたちを次々に斬る。市は盲目の按摩として旅を続けているが、仕込み杖を使った居合の達人でもある。

 同じころ、旅芸者のおきぬとおせいが宿場町へやって来る。2人は三味線を弾きながら旅をしているが、その三味線には人を殺すための仕掛けが施されている。おきぬとおせいは幼いころに両親を殺され、家の財産も奪われていた。2人は両親を殺した一味と、その一味を率いていた「くちなわの親分」を探して旅を続けている。

 一方、浪人の服部源之助は病気を患っている妻のおしのとともに宿場町へ向かう。服部はかつて殿様に仕える身分だったが、現在は浪人となっている。剣術の腕を持つ服部は、妻の薬代を稼ぐために用心棒の仕事を探している。

 市は宿場町で野菜売りのおうめと知り合う。おうめには博打好きの甥・新吉がいる。市は新吉とともに賭場へ行き、そこで博打をする。市は賭場で勝ち、その金で芸者を呼ぶことになる。そこへおきぬとおせいが現れる。

 市はおきぬとおせいの三味線に仕掛けがあることに気づき、おせいが女性ではないことも見抜く。おきぬとおせいは、市に自分たちの過去を話す。2人は幼いころに両親を殺され、財産を奪われており、その犯人を探している。

 宿場町を支配しているのは、銀蔵率いるやくざ一家だった。銀蔵は大店の主人である扇屋ともつながっており、町民から金を取り立て、賭場を開いている。おきぬとおせいが探している仇にも銀蔵と扇屋が関係している。

 おきぬとおせいは旅芸者として扇屋に近づき、両親を殺した一味について調べる。2人は三味線を使って相手を襲う準備をしながら、銀蔵や扇屋に近づいていく。

 服部も宿場町で銀蔵一家と接触する。銀蔵は服部の剣術の腕を確認し、用心棒として雇う。服部は銀蔵一家のために働き、やくざたちとともに町を支配する側に加わる。

 市も銀蔵一家と関わるようになる。市が賭場にいると、やくざたちが市に絡む。市は仕込み杖を抜き、相手を次々に斬る。銀蔵一家は市を敵として認識し、市を狙うようになる。

 市はおきぬとおせいの事情を知り、銀蔵や扇屋が2人の両親を殺した一味につながっていることを知る。おきぬとおせいは銀蔵一家に近づきながら、両親の仇を探していく。

 銀蔵一家は市を追い、町の人々にも危害を加える。おうめの家も銀蔵側によって焼かれる。

 服部は銀蔵一家の用心棒として働き続ける。市と服部は酒場で顔を合わせ、互いの剣の腕を確認する。服部は市が普通の按摩ではないことを知り、市も服部が剣術の達人であることを知る。

 市は銀蔵一家のもとへ向かう。銀蔵の手下たちが市を襲うが、市は仕込み杖で次々に斬る。銀蔵も市と戦い、市に斬られる。銀蔵一家は壊滅する。

 市と服部が対決する。服部は刀を抜き、市と斬り合う。服部は市の動きをかわしながら戦うが、市の斬撃を受けて倒れる。服部は死亡する。服部が戻らないことを知ったおしのは、夫の後を追って自ら命を絶つ。

 銀蔵とつながっていた扇屋も倒される。おきぬとおせいが探していた仇の一味は次々に倒され、宿場町を支配していた銀蔵一家も姿を消す。

 町では焼けた家を建て直す作業が始まる。大工たちは木材を運び、町の人々も日常の生活を取り戻していく。

 しかし、市はまだ「くちなわの親分」が残っていることを知っている。市は宿場町の飲み屋へ向かう。そこでは柄本明演じる飲み屋の親父が働いている。

 飲み屋の親父は、町の人々からは普通の店の主人として扱われている。しかし、実際にはおきぬとおせいが探していた「くちなわの親分」だった。

 市は飲み屋の親父の正体を知ったうえで店に入り、男と対峙する。飲み屋の親父は市が盲目ではないことにも気づいている。

 2人は戦いになり、市は仕込み杖を使って飲み屋の親父を攻撃する。市は男の目を斬り、「一生盲で暮らせ」と告げる。市はその場を離れる。

 宿場町では祭りが始まる。農民たちが鍬を振り、大工たちが木材を叩く動作が音楽と重なっていく。作業の動きは次第に踊りへ変わり、最後には町の人々が下駄を履いて足を踏み鳴らす。

 市は祭りの町を離れ、道を歩いていく。途中で石につまずいて転ぶ。市は立ち上がり、目を開けた状態で「目明きには見えねえものがある」という趣旨の言葉を残しておしまい。

●感想

 ひとりの按摩が、街を牛耳る悪党たちを仕込み杖で次々と倒していく、分かりやすい勧善懲悪の時代劇でした。銀蔵一家に支配されている宿場町へ座頭市がやって来て、そこで出会った人々の事情が一つにつながり、最後には悪党たちをまとめて斬っていく。物語の基本的な構造は非常にシンプルです。

 ただ、そこはやはり北野武監督の作品です。普通の時代劇として一直線に進むのではなく、独特の間や突然入ってくるギャグ、淡々とした会話などが組み込まれています。殺陣の場面では人が次々と斬られていく一方で、その直後に妙に力の抜けたやり取りが入ってくるため、緊張感だけで押し切る時代劇とは違った雰囲気があります。

 特に印象に残ったのが、冒頭から主要人物が次々に登場してくる構成です。座頭市が街道を歩いているところから始まり、旅芸者のおきぬとおせい、病気の妻を連れた浪人の服部源之助、野菜売りのおうめ、博打好きの新吉、そして宿場町を仕切る銀蔵一家と、物語に関係する人物が早い段階から揃っていきます。

 それぞれに別々の事情を抱えているのですが、宿場町に集まってくることで少しずつ話がつながっていきます。この進め方がかなりスピーディーなので、長い説明を続けることなく、人物と状況を次々に見せていく作りになっています。

 座頭市はとにかく強いです。賭場で騒ぎが起こると、相手が何人いようと仕込み杖を抜いて一気に斬ってしまいます。相手が刀を抜いて囲んできても、ほとんど時間をかけずに倒してしまうので、普通の時代劇の剣豪とは違った無双ぶりです。

 しかも、盲目の按摩という設定があるため、相手の動きを見ているわけではないように振る舞いながら、実際には相手の位置や動きを正確に把握しています。刀を抜くまでの時間も短く、斬る場面も非常に速いです。

 その強さは、まさに時代劇版のターミネーターのようでした。敵が何人出てきても一人ずつ相手にするのではなく、まとめて倒してしまう。そのため、銀蔵一家が市を相手に人数を揃えても、最後まで市の強さが際立っています。

 一方で、浅野忠信演じる服部源之助もかなり強いです。病気の妻を連れて旅をしており、薬代を稼ぐために銀蔵一家の用心棒になります。単純な悪役ではなく、妻のために用心棒として働いている人物なので、市とは違う形で宿場町の事件に関わっていきます。

 服部には御前試合で敗れた過去もあり、その場面を含めて剣士としての背景が描かれています。そして最後には市と服部が直接対決します。

 この2人の殺陣は、本作の大きな見どころでした。どちらも剣の腕が高いため、銀蔵一家の手下を相手にするときとは違って、相手の動きを読みながら刀を交えます。それでも最後には市が服部を倒します。この対決が入ることで、座頭市の強さがさらに分かりやすくなっています。

 おきぬとおせいの物語も、時代劇として分かりやすい復讐劇になっています。旅芸者として町に入り込みながら、幼いころに両親を殺した相手を探している。三味線にも殺しの仕掛けがあり、普通の旅芸者ではありません。

 2人を取り巻く銀蔵一家や扇屋などの悪党たちも含め、展開そのものは昔ながらの時代劇らしいものです。ただ、そこに北野武独特のテンポやギャグが加わることで、単純な復讐劇だけにはなっていません。

 特に、シリアスな場面の途中に妙な笑いを入れてくるところは印象的でした。人が斬られる場面が続いたかと思えば、別の場面では登場人物が淡々としたやり取りをしている。この温度差が独特で、普通の時代劇とは違う感覚があります。

 そして、何より強烈なのが座頭市の立ち回りです。刀を抜いた瞬間から相手を斬り、複数の敵を短時間で倒していく。その殺陣には、昔ながらの時代劇のチャンバラとは違うスピード感があります。

 さらに、最後の祭りでは農民や大工たちの作業そのものがリズムになり、そこからタップダンスへつながっていきます。鍬を振る、木材を叩く、歩くといった動作を音楽に組み込んでいるため、最後まで普通の時代劇とは違った演出が続きます。

 勧善懲悪の分かりやすい物語を軸にしながら、独特の間、不思議なギャグ、激しい殺陣、最後のタップダンスまで入っているので、かなり個性的な時代劇でした。

 座頭市というキャラクター自体は非常にシンプルで、とにかく強い。しかし、その周囲に復讐を続ける姉弟、妻のために用心棒になる浪人、町を支配する銀蔵一家などを配置することで、それぞれの話が最後に座頭市へ集まっていきます。

 北野武監督らしい独特の演出と、ビートたけし演じる座頭市の無双ぶりを楽しむ作品として、かなり印象に残る一本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2013/02/28 DVD 2026/09/26 DVD

監督北野武 
脚本北野武 
原作子母沢寛 
出演ビートたけし 
浅野忠信 
橘大五郎 
大家由祐子 
ガダルカナル・タカ 
大楠道代 
柄本明 
岸部一徳 
石倉三郎 
夏川結衣 
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