映画【96分】感想(ネタバレ):爆弾と過去が交錯する高速鉄道劇

96 Minutes
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●こんなお話

 台北から南部・高雄まで96分で走行する台湾新幹線で、停車すると爆発するという爆弾が仕掛けられて、対応する爆弾処理の専門家の話。

●感想

 爆発物処理専門家のソン・カンレンは、三年前の百貨店爆破事件で判断を誤り、多くの犠牲を出した過去を抱えている。世間からは英雄の一人として扱われたが、彼自身はその評価を受け入れられず、現場から距離を置いてきた。刑事として働く妻ホアン・シンとともに、事件の追悼式に出席するため台北から高雄へ向かう高速鉄道に乗車する。

 列車が走り出して間もなく、元上司である刑事大隊長リー・ジエからカンレンに連絡が入る。車内に爆弾が仕掛けられており、列車が停止した瞬間に爆発する構造だという。さらに犯人は三年前の事件に関する“隠された事実”を暴露すると脅迫し、96分後に高雄へ到着するまでに解除しなければならないと告げる。

 同じ車両には、物理の専門家のリウ・カイが乗っている。彼は妻ヤン・ティンジュアンとの通話中に爆弾の存在を偶然知り、持ち前の理論知識で協力を申し出る。車内には三年前の事件で家族を失った関係者もおり、乗客それぞれが事情を抱えていることが次第に明らかになる。爆破予告が広まると車内は混乱に陥り、泣き叫ぶ者、通路を塞ぐ者が続出する。ホアン・シンは刑事として乗客を制止し、秩序を保とうと動き回る。

 調査の結果、爆弾は前方車両に設置されていることが判明する。しかも列車の速度が一定以下になるとタイムリミットが加速する仕組みで、減速も停車もできない。さらにカンレンたちの乗る車両が泊まろうとしても爆弾のリミットが早くなることが判明し、二両同時に危機にさらされていることが分かる。

 カンレンは、爆弾が搭載された車両へ飛び移る。車内で配線を調べるうちに、犯人が三年前の百貨店爆破事件の犠牲者遺族であることが判明する。彼は当時、カンレンとリー・ジエが英雄として称えられたことに強い怒りを抱いていた。犯人はリー・ジエを襲撃し、真相を暴こうとする。

 同時に、ホアン・シンのいる後方車両にも爆弾があると判明し、どちらか一方しか完全に解除できない状況に追い込まれる。カンレンは究極の選択を迫られ、過去の過ちと向き合いながら決断を下す。

 その最中、リウ・カイはリー・ジエが密かに犯人へ目印を付けていたことに気づき、その手がかりをもとに乗客の中から犯人を特定して取り押さえられる。大惨事は回避されておしまい。


 設定自体は非常に魅力的でした。停止すれば爆発する列車という状況に加え、二両同時に爆弾が仕掛けられているというアイデアは発想として面白く、空間的制約を活かしたサスペンスになるはずの題材だと感じました。

 しかし実際には回想シーンが多く挿入され、主人公も犯人側も感傷的な芝居が続くため、物語の緊張が途切れがちでした。過去の百貨店爆破事件の描写が頻繁に差し込まれることで、現在進行形の96分という時間制限の圧迫感が弱まり、タイムリミットの切迫感が十分に伝わりませんでした。

 撮影に関しても、高速鉄道の車内というよりはスタジオセットの印象が強く、揺れや空間の狭さといった臨場感が希薄でした。誰がどの車両にいて、今どの位置で何が起きているのかが把握しづらく、二両構造という面白い設定が活かしきれていないように感じました。

 それでも、走行中の車両間を移動する場面や、乗客が走行中の車両から飛び降りて避難するというアクティブな避難方法などアイデアのポテンシャルは十分にあったと思います。社会的評価と個人の罪悪感のズレを描こうとする意図も読み取れます。

 全体としては、題材の大胆さとドラマ性の強さがかみ合えば、よりスリリングな作品になったのではないかと感じました。緊迫感の演出や空間把握の明確さが加われば、さらに印象的なサスペンスへと昇華したはずと考えてしまう1作でした。

☆☆

鑑賞日:2026/03/14 池袋シネマ・ロサ

監督ホン・ズーシュアン 
アクション監督スコット・ホン 
脚本チェン・イーファン 
ヤン・ワンルー 
ホン・ズーシュアン 
出演リン・ボーホン 
ヴィヴィアン・スン 
ワン・ポーチエ 
リー・リーレン 

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