●こんなお話
集団失踪事件きっかけに視点が次々入れ替わってじわじわ追い詰められる話。
●感想
ある水曜日の深夜2時17分、静かな郊外の町メイブルックで、同じクラスに通う17人の子どもたちが、まるで何かに呼ばれたかのように一斉に自宅を抜け出し、暗闇の中へと走り去ったまま姿を消す。家族も近隣住民も誰一人として異変に気づかず、翌朝になって発覚した集団失踪事件は、町全体を恐怖と混乱に陥れる。
唯一その夜に姿を消さなかった少年アレックスは、事件の中心人物として周囲から注目を集める存在となる。町では担任教師のギャンディが疑惑の目を向けられながらも独自に調査を進め、失踪した子どもの父親アーチャー、警官のポール、町に住み着くホームレスのジェームズ、校長のマーカスなど、さまざまな立場の人々の視点が交錯しながら、事件の輪郭が少しずつ浮かび上がっていく。
やがて、アレックスの家に居候していた謎めいた老女グラディスの存在が、事件と深く関わっていることが明らかになる。彼女は人知を超えた力によって子どもたちや大人たちを操り、失踪事件を引き起こしていた。
クライマックスでは、アレックス自身がグラディスの力の仕組みを理解し、それを逆手に取ることで子どもたちを解放しようと立ち向かう。老女は倒されるが、失踪事件が町に残した傷は深く、すべてが明確に説明されることはないまま、人々はそれぞれの形で現実と向き合っていくことになっておしまい。
複数の登場人物の視点を切り替えながら進行していく構成が印象的で、物語に独特の広がりを感じさせてくれました。天井に潜む人影や、暗闇から不意に現れる老女の演出には思わず体が反応してしまい、純粋な驚きがありました。ベネディクト・ウォンの目玉飛び出しの強烈なビジュアルや、何度も叫びながら迫ってくるホームレスの存在感も強く印象に残ります。
特に、家を破壊しながら老女を追い詰めていく子どもたちの場面は、恐怖とどこか奇妙な爽快感が同居しており、思わず頬が緩むような感覚がありました。映像的にもアイデアが豊富で、ホラー表現を楽しむという点では満足度の高い内容だと思います。
一方で、上映時間がやや長く感じられ、不穏な空気が持続するわりに物語が大きく動くまでに時間を要するため、途中で間延びした印象を受ける部分もありました。それでも、静かな恐怖がじわじわと積み重なっていく独特の雰囲気は、この作品ならではの魅力として楽しめました。
☆☆☆
鑑賞日:2025/12/17 新宿ピカデリー

