●こんなお話
ミッドウェイ海戦から終戦後、復員船として活躍するまでの駆逐艦の話。
●感想
太平洋戦争のさなか、駆逐艦「雪風」は真珠湾攻撃後の作戦に参加し、ミッドウェイ海戦では沈没した艦から多くの乗員を救助する。そこには若き水雷員の井上壮太も含まれていて、雪風の先任伍長である早瀬幸平から叱咤を受ける。やがて新たに寺澤一利艦長が着任し、先任伍長と艦長は意見の食い違いもありながら、艦と部下を守るという思いを共有して任務に臨む。
雪風はガダルカナルやソロモン諸島、マリアナ沖、レイテ沖海戦で豊田艦隊のターンを知らずに雪風だけ敵に突っ込んで突破するなど数々の激戦に投入される。空襲や砲撃にさらされ、補給も不足し、戦況は悪化の一途をたどる中でも雪風は生還を重ね、「幸運艦」と呼ばれるようになる。艦長は江田島の同期が次々と戦死する中で、自分だけが生き残った苦悩に思いを巡らせる。早瀬伍長の妹が兄の帰還を祈る姿も描かれる。
終盤、現場の司令官たちは沖縄への片道特攻作戦に異を唱え、生還を条件に出撃を命じる。雪風は絶望的な戦況の中でも沈没艦からの救助を繰り返す。やがて終戦を迎え、雪風は復員輸送の任務を担い、外地に取り残された人々を祖国へ送り届けた。その数は一万三千人にのぼる説明があり。1970年の大阪万博の場面で復興した日本、雪風の元乗組員たちが「お前たちを見ているぞ」と未来の人々に呼びかける姿が描かれておしまい。
駆逐艦をモチーフにした戦闘描写があり、艦隊戦の戦い方をしっかり映し出していた点はとても興味深かったです。戦史をなぞりながらも、兵士一人ひとりの人間模様を描いていたのも見ごたえがありました。
一方で、CGを多用した戦闘シーンは臨場感に欠ける部分があり、観ていて集中が途切れてしまう場面もありました。さらに、反戦や平和を訴えるメッセージが強調されすぎて説教臭さを感じてしまう場面もあり、物語の流れを重たくしていた印象です。日常描写もやや間延びしていたので、緩急のつけ方に工夫があればもっと作品世界に没入できたと感じました。
それでも、雪風が「幸運艦」として戦場を生き延び、最後には多くの人を帰還させた歴史を映し出す意義は大きく、戦争の悲劇と同時に人々を救おうとした行為の重みが伝わってくる映画だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2025/09/16 イオンシネマ座間
監督 | 山田敏久 |
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脚本 | 長谷川康夫 |
出演 | 竹野内豊 |
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玉木宏 | |
奥平大兼 | |
當真あみ | |
藤本隆宏 | |
三浦誠己 | |
山内圭哉 | |
川口貴弘 | |
中林大樹 | |
田中美央 | |
田中麗奈 | |
益岡徹 | |
石丸幹二 | |
中井貴一 |