●こんなお話
強制徴用された朝鮮人労働者たちと日本人たちが軍艦島で戦争する話。
●感想
物語の舞台は第二次世界大戦末期の長崎沖、通称「軍艦島」。炭鉱で栄える一方、朝鮮半島から強制的に連れてこられた人々が過酷な労働を強いられていた。
朝鮮の楽団長イ・ガンオクは娘ソヒと共に日本で華やかな演奏活動ができると騙され、辿り着いた先は軍艦島。暗い坑道に押し込められ、命を削る労働に従事させられる。娘を守ろうとする父だが、目の前で繰り広げられる暴力や差別に打ちひしがれていく。
一方、朝鮮独立運動の戦士は島に収監されている同志「先生」を救出する密命を帯び潜入する。彼は当初、任務遂行だけを考えて島の人々に関わろうとしなかったが、惨状を目の当たりにして次第に心を動かされていく。ヤクザの親分は義理人情を見せつつも、媚びる朝鮮人を叩き、やがてその報復を受ける姿も描かれる。さらにソウル一の遊女と呼ばれた女性が騙されて島に連れて来られ、労働者に奉仕を強いられる視点からも腐敗した構造が浮き彫りになる。
やがて連合軍の進攻が迫る中、日本側は証拠隠滅のため労働者抹殺を計画。仲間内でも不信と裏切りが渦巻き、脱出か残留かで意見が分かれる。父ガンオクは娘を生かすため日本人側に媚びてサバイブしつつその裏には父としての切実な思いがあった。臆病だった彼が覚悟を決める姿が次第に浮かび上がる。
クライマックスでは労働者たちが一斉蜂起し、大脱走計画を実行。坑道の爆破、監視兵との乱闘、銃剣を交えた戦いが夜から明け方にかけて展開される。血みどろの戦闘の果てに、娘を背負ったガンオクは船へ飛び込み、長崎への原爆投下を目撃する。
アクション面ではリュ・スンワン監督らしい泥臭く痛みを伴う肉弾戦が迫力あり、軍艦島でのスペクタクルな戦闘やクライマックスの大脱走は手に汗握る緊張感がありました。ヤクザの親分の義理人情も物語に厚みを加えていて印象的でした。また、エンドロールで示される日本がユネスコ勧告を履行していないということについて知るきっかけを得られたのも興味深かったです。
一方で、2時間30分の長尺はやや重たく感じられました。軍艦島で実際に戦争が行われたという描写には違和感も覚えましたし、泥まみれの登場人物たちが見分けづらく、序盤は誰が誰か把握するのに苦労しました。死が感動的に描かれても強く心が揺さぶられる場面は少なかったです。日本が極悪非道に描かれる構図も相変わらずで、個人的には物語に没入するのが難しく感じました。
☆☆☆
鑑賞日:2025/09/13 Amazonプライム・ビデオ
監督 | リュ・スンワン |
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出演 | ファン・ジョンミン |
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ソ・ジソブ | |
ソン・ジュンギ | |
イ・ジョンヒョン | |
キム・スアン | |
キム・ソンホ | |
イ・ジョンウン |