映画【仕掛人・藤枝梅安】感想(ネタバレ):仕掛人として生きる男の静かな闘い

Shikakenin Fujieda Baian
スポンサーリンク

●こんなお話

 殺しの家業の針医者が過去の因縁の相手とか料理屋のいろんな人を殺しを頼まれる話。

●感想

 冒頭、女性が男の手にかかる場面から物語は始まる。続いて、男が屋形船で水面を見つめた瞬間、突然水中から飛び出してきた男に命を奪われる。彼こそが本作の主人公であり、その姿と共にナレーションが入り、彼の正体が語られる。表向きには針医者として多くの患者に信頼されているが、裏では依頼を受けて命を奪う“仕掛人”としての顔を持っている。

 ある日、主人公は料理屋を営む女主人の暗殺を依頼される。じつはその店の前の女主人も、彼が手にかけた過去がある。今回もまた客として店に現れ、内部の女中を巧みに味方につける。彼女から得た情報により、女主人は以前の経営者とはまったく異なる方針で店を回しており、収益を上げているものの、その裏では貧しい女性たちを雇って男客にあてがっている実態が明らかになる。

 一方、主人公の仲間であるもう一人の仕掛人にも新たな依頼が届く。その標的は町で働く大工。尾行を続けていくうちに、かつて盗賊として共に過ごした仲間であったことが判明する。その過去を語る場面が挟まれ、彼は複雑な思いを胸に抱きながらも、大工を闇へと葬る。

 再び依頼が入り、今度は浪人の暗殺が命じられる。だがこの流れの中で、主人公はあるお寺の住職に請われ、一人の女性を治療することになる。彼女は殿様の手にかかり、心身ともに傷ついていた。そんな彼女を助けて逃げ込んできた侍がいたが、仕掛人による刺客に狙われたところを退けたという。治療を通じて、この一件の裏に広がる複雑な人間関係が少しずつ明らかになっていく。

 そして物語はさらに深みに踏み込む。暗殺の依頼を受けた女主人が、かつて盗賊団の娘であり、実は主人公の生き別れた妹であることが明らかになる。過去と現在が一気に交差し、物語は急展開を見せる。主人公は殿様を手にかけ、さらにその依頼主にも手を下す。仲間の仕掛人は侍を襲う刺客から彼を守り、そして最後に主人公は、妹である女主人にも暗殺。

 映像のトーンが非常に落ち着いていて渋く、チープな印象は一切なく、とても良かったです。特に色彩や構図にこだわりが感じられ、作品の世界観に説得力がありました。

 ただ、人物同士の関係性がほとんど台詞で説明されていたため、状況が頭に入りにくく、物語に入り込むまでに時間がかかってしまいました。登場人物がすべてどこかでつながっているという設定も、少し世界が狭く感じられてしまった印象です。

 また、暗殺があまりにもあっさりと描かれていたことで、命を奪う行為の緊張感や重みが薄れ、エンターテインメントとしての盛り上がりに欠けていたように思います。もう少し丁寧に暗殺の過程が描かれていれば、物語の持つテーマがより強く伝わったのではないでしょうか。

それでも、全体を通して静かに燃えるような空気をまとった作品で、画作りや構成の妙には心を惹かれました。

☆☆☆

鑑賞日:2025/06/28 Amazonプライム・ビデオ

監督河毛俊作 
脚本大森寿美男 
原作池波正太郎
出演豊川悦司 
片岡愛之助 
菅野美穂 
小野了 
高畑淳子 
小林薫 
早乙女太一 
柳葉敏郎 
天海祐希 
中村ゆり 
石丸謙二郎 
鷲尾真知子 
でんでん 
朝倉ふゆな 
板尾創路 
井上小百合 
若林豪 
田山涼成 
吉田美佳子 
大鷹明良 
六角精児 
趙タミ和 
田中奏生 
凛美 
田中乃愛 
タイトルとURLをコピーしました