映画【蛇の道(2024)】感想(ネタバレ):静かな復讐劇と独特な映像美が交差するサスペンス映画

Le chemin du serpent
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●こんなお話

 謎の財団に娘を殺された主人公が財団関係者を拉致監禁していく話。

●感想

 物語は、主人公たちがある人物の出てくるのを見張っているシーンから始まります。対象の人物がアパートを出てくるとすぐに拉致し、人気のない場所へ監禁。その監禁された人物に対し、主人公たちは何の説明もないまま、ある少女の映像を見せ始めます。どうやらその少女は殺されてしまったようで、主人公たちは自分たちの娘を奪ったと信じている“財団”という謎の組織への復讐のため、関係者を一人ずつ拉致していることがわかってきます。

 物語は過去の回想と現在が交錯しながら進行します。3か月前、主人公たちが病院で出会ったシーンが差し込まれたり、主人公が日本にいる夫とビデオ通話をする様子も描かれます。監禁した人物から別の関係者の名前を聞き出すと、主人公たちはその人物がいる山小屋へと向かい、猟師に追われながらも捕まえるという展開へ。

 監禁された人物たちには容赦がなく、主人公は時に彼らをけしかけて互いに争わせたりと、過激な手段で真相に迫っていきます。そして次第に、主人公がどのような目的でこの行動に出ているのか、その核心が明らかになっていく。

 この作品で印象に残ったのは、映像的な不思議さと静かな緊張感でした。日本にいる夫と主人公が通話をしているシーンでは、背後に何かが出てくるのではという不穏な雰囲気が漂い、サスペンスとしての見せ方が上手い場面もあります。溶接中の火花のすぐ横で監禁された人物が横たわっていたり、そのさらに奥で銃の練習をしていたりと、現実味がないようでどこか妙にリアルな空間演出も独特でした。また、死体の表情があまりに極端すぎて、緊張感のなかに笑いが混ざるような瞬間も。

 アクションシーンでは、ジムでの元警備員との乱闘や、山小屋で猟師の銃撃から逃げる場面が用意されており、それぞれが映画の中での“見せ場”として機能しています。ただ、作品全体に通じるのは、アクションに対してそれほど熱量を注いでいないのか、淡々と進んでしまう印象も否めません。盛り上がりに欠けるシーンが続くことで、観ていて少し眠たくなってしまうところもありました。

 また、拉致の場面もあっけなく成功してしまったり、気がつけば廃墟に監禁されていたりと、緊迫感やリアリティにやや欠ける部分も。終盤、主人公が銃を撃ちまくって敵を倒していく展開では、弾着の演出やリアクションが少なく、あっさりと片付いてしまうため、カタルシスを感じにくいままクライマックスを迎えます。

 映像のセンスや演出は面白く、独自の雰囲気を持つ作品ではありましたが、感情の盛り上がりに欠けるままストーリーが進んでしまう点で、物足りなさも残る作品でした。

☆☆

鑑賞日:2024/06/15 イオンシネマ座間

監督黒沢清 
脚本黒沢清 
原案(映画脚本)高橋洋
出演柴咲コウ 
ダミアン・ボナール 
マチュー・アマルリック 
グレゴワール・コラン 
西島秀俊 
ヴィマラ・ポンス 
スリマヌ・ダジ 
青木崇高 
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