●こんなお話
アメリカの荒野のダイナーでそこのオーナーとギャングの老いらくの恋と日本人料理人がやってきて料理をふるまう話。
●感想
荒野の片隅にぽつんと佇むダイナーを、日本にルーツを持つ年配のオーナーが老婆の介護をしながらひっそりと切り盛りしている。店はギャングたちのたまり場にもなっていて、日常の中にあるちょっとした居場所として、ゆるく機能している。
ある日、道ばたで倒れている日本人・次郎をオーナーが拾い、店で世話をする。次郎は回復後、街に出て包丁や食材を調達し、創作料理を作ってダイナーで振る舞い始める。その料理がギャングたちの間で好評を博し、自然な流れで店のシェフとして働き始める。料理の腕前が評判を呼び、やがてギャングのボスから「屋敷で料理を作ってくれ」と声がかかり、ダイナーの面々と共にボスのもとへ。料理は見事に気に入られ、次郎はさらに信頼を得る。
オーナーとギャングのボスが語らう場面では、戦時中にオーナーが「東京ローズ」としてフィリピンでDJをやっていたことなど、過去がしみじみと語られる。ギャングが「自分もいつか店を持ちたい」と夢を語る場面もあり、そこには静かだけど確かな交流が描かれる。
しかし、再びボスに料理を頼まれて訪れた際に、突如スナイパーの襲撃が発生。銃撃戦が始まり、ボスと次郎は地下室へ避難。シリーズらしいアクション要素が顔を出すのはここからとなる。
とはいえ、今回のメインはあくまでオーナーとギャングの淡い関係性で、アクションよりも会話や空気感に多くの時間が割かれています。ギャングたちの軽口や日常のやりとりが長く続くため、シリーズのテンポを期待していると、やや退屈に感じる場面も少なくなかったです。
ただ、年齢を重ねた者同士の静かな想いの交差や、戦争を経験した人間の語り口には深みがあり、この空気感を楽しめる人にとっては独特の味わいがありました。シリーズとしては異色の劇場版で、次郎はほぼ脇役に回り、ダイナーを巡る物語が主軸になっている点は好みが分かれそうです。
「これはタフシリーズなのか?」と疑問を持つ人もいそうだが、視点を変えれば、これは“人間ドラマ”に重きを置いたスピンオフ的な位置づけとも捉えられる一作でした。
☆☆
鑑賞日:2024/03/06 WOWOW
| 監督 | 原田眞人 |
|---|---|
| 脚本 | 原田眞人 |
| レベッカ・ロス |
| 出演 | ジェームズ・ギャモン |
|---|---|
| 木村一八 | |
| ノブ・マッカーシー | |
| ドン・オッパー | |
| ヴィンセント・スキャベリ | |
| ルディ・ディアス | |
| プリシラ・ポインター | |
| ボブ・アピーサ | |
| ロン・ジョセフ | |
| アンドレアス・カツラス | |
| ウェイン・ペレ | |
| リンダ・ピアソン | |
| ギャレット・ピアソン | |
| セイディ・ロペス | |
| チャールズ・ガニング | |
| アーヴィン・カーシュナー |


