●こんなお話
エルヴィス・プレスリーと彼のプロモーターの男性の栄枯盛衰の話。
●感想
物語は、エルヴィス・プレスリーの長年のマネージャーだったトム・パーカー大佐が病院に運ばれる場面から始まり。世間からは「エルヴィスを殺した男」とまで言われている彼が、「そんなことはない」と語り始める独白形式の構成が特徴的でした。
若きエルヴィスのライブを初めて見た大佐は、そのカリスマ性に衝撃を受け、彼の両親も含めて巧みに取り込み、全米ツアーをスタートさせる。黒人音楽に影響を受け、腰を振って歌うという当時としては挑戦的なスタイルに、女性ファンは熱狂し、エルヴィスは一気にスター街道を駆け上がる。
しかし、彼の過激なパフォーマンスは政治家や保守層からの反発も招き、訴訟沙汰にまで発展する。それでもエルヴィスは自分の信じる音楽を貫こうとし、やがて大佐の意向から徐々に離れていく。
クリスマスソングを歌う契約にも反発し、自らのメッセージを込めた楽曲を披露するなど、次第にコントロールが効かなくなっていく。恋愛や結婚、離婚を経て精神的にも追い込まれていくエルヴィスは、大佐との契約を切ろうとするものの、浪費癖や家族・取り巻きの影響で金銭的に追い詰められてしまう。
その結果、望んでいた海外ツアーは実現せず、ラスベガスのホテルでの連続公演という“金のなる木”として搾取される日々が続く。ついには「世界初の衛星中継ライブ」という形で世界に届けられはしたが、それもまた彼を囲い込む檻の一部だったのだという。
時代が移り変わり、ロックというジャンルも変化していく中、エルヴィスだけが取り残されていく。そして、彼は心も体もボロボロになり、悲しい最期を迎える。
エルヴィス・プレスリーという人物のカリスマ性を知らない世代の視点からでも、その圧倒的な存在感と当時の熱狂を追体験できるリアリティがあった点は本作の大きな魅力だと思いました。それだけでもこの作品には十分な価値があると思います。
とはいえ、159分という長尺の中で描かれる「田舎からスターへ、成功、恋愛、破綻、没落」という流れは、伝記映画としてよくあるパターンでもあり、途中で展開に既視感が強くなってしまいました。物語としての新鮮さや起伏の意外性がもう少し欲しかったとも思いました。
☆☆☆
鑑賞日:2023/08/13 NETFLIX
監督 | バズ・ラーマン |
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脚本 | バズ・ラーマン |
クレイグ・ピアース | |
サム・ブロメル | |
ジェレミー・ドナー | |
原案 | バズ・ラーマン |
ジェレミー・ドナー |
出演 | オースティン・バトラー |
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トム・ハンクス | |
オリビア・デヨング | |
ヘレン・トムソン | |
リチャード・ロクスバーグ | |
ルーク・ブレイシー | |
ナターシャ・バセット | |
デイヴィッド・ウェンハム | |
ケルビン・ハリソン・Jr. | |
ゼイヴィア・サミュエル | |
コディ・スミット=マクフィー |