映画【ワイルド・スピード/ファイヤーブースト】感想(ネタバレ):爆走する絆、中性子爆弾とともに街を駆け抜ける

FAST-X
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 ●こんなお話

 主人公ファミリーに恨みをもつカタキ役が苦しみを与えてくる話。

●感想

 シリーズ前作『MEGAMAX』で登場した敵が、実は家族を背負っていたという展開を引き継ぐかたちで、今作はその息子が復讐の意志を胸に新たな敵として登場するところから物語が始まる。過去の因縁が、静かに、しかし確実に次の大きな騒動を呼び込んでいく構図になっていました。

 舞台は現代。ファミリーたちは今日も穏やかにバーベキューを楽しんでおり、ひとときの平和が広がっている。そんな中、主人公は今回の任務から身を引き、チームの仲間たちに次の仕事を託すという流れで、やや穏やかな導入。だが、夜になると物語は静かに動き出す。かつて敵だった男が傷だらけで現れ、新たな脅威の存在を告げることで、再び主人公たちの運命が大きく揺れ始める。

 ファミリーはバチカンでマイクロチップの奪還作戦に挑むが、それは巧妙に仕組まれた罠だった。現れたのは町中を転がる中性子爆弾。それに巻き込まれる形で展開するカーチェイス。各地に散った仲間たちは、ミッションを進めながら次々に苦境に立たされていく。奥さんが捕らえられ、チームは分断され、物語はどんどん広がっていく。

 主人公はブラジルで元恋人の妹と再会しつつ、敵とレースを繰り広げる場面が差し込まれたり、息子が狙われ弟と共に逃避行に出たりと、場所も顔ぶれも目まぐるしく入れ替わる。ロンドンでは仲間が逃走劇の末に助けを求めるも裏切りに遭うなど、スパイ映画的な緊張感が加わっていく。さらに物語中盤では、シリーズおなじみのキャラクターが次々に再登場し、ファンにとっては見応えのある時間が続く。

 捕まった奥さんと前作の敵キャラが収容所で共闘する展開が描かれたり、主人公自身も敵の組織に囚われながらも救出劇が展開されたりと、シーンごとにアクションは濃密。息子が再び狙われるという新たな危機が生まれ、弟の自己犠牲的な行動もあって、物語の緊迫感は加速していく。

 クライマックスでは、空中からの救援が描かれるも飛行機が撃墜され、さらにダムの爆破による氾濫という大仕掛けで、緊張の度合いが極まっていく。こうしたアクションの応酬は、シリーズらしい過剰さを含みつつも、映像としてのスケール感は健在だった。

 とはいえ、アクションの数が多すぎる分、ひとつひとつの印象が薄くなってしまった印象もありました。特に過去作と似たような場面が続くことで、驚きよりも既視感のほうが強くなってしまったところは正直に感じた部分です。話の構造もエピソードが積み上がっていくような形式なので、リズムが鈍く、緊張が途切れてしまう箇所も散見されました。

 それでも、シリーズならではの登場人物たちのつながりが次々に可視化されていく過程は面白く、血縁関係が絡むことで相関図はさらに複雑に。登場人物が多く、誰がどう繋がっているのかを頭の中で整理しながら観ること自体が、この作品におけるひとつの楽しみ方になっていたように思います。

 ローマ市街を中性子爆弾が転がっていくシーンは、さすがにスケールも奇想も兼ね備えたもので、今作の中でも印象的でした。ストーリーの整合性を超えて、どれだけ豪快に映像を展開できるかという点においては、さすがの見応えがありました。

☆☆☆

鑑賞日:2023/06/03 イオンシネマ座間 2024/01/14 Amazonプライム・ビデオ

監督ルイ・レテリエ 
脚本ジャスティン・リン 
ダン・マゾー 
出演ヴィン・ディーゼル 
ミシェル・ロドリゲス 
タイリース・ギブソン 
クリス・“リュダクリス”ブリッジス 
ジェイソン・モモア 
ナタリー・エマニュエル 
ジョーダナ・ブリュースター 
ジョン・シナ 
ジェイソン・ステイサム 
サン・カン 
アラン・リッチソン 
ダニエラ・メルシオール 
スコット・イーストウッド 
ヘレン・ミレン 
シャーリーズ・セロン 
ブリー・ラーソン 
リタ・モレノ 
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