●こんなお話
電子機器を停電させるデバイスを巡って悪の組織と世界各国の諜報部員の攻防の話。
●感想
世界の安全保障を脅かす新たなデバイスをめぐって、複数の国の諜報機関が入り乱れるスパイ・アクション。物語は、見るからに胡散臭さ漂う男たちが闇取引を行う場面から始まる。彼らがやり取りしているのは、全世界の電子機器を制御不能にする恐れのある高度な装置。取引は一見スムーズに進んでいるかに見えたが、突如として交渉相手が売人たちを射殺し、デバイスを強奪。そこから世界各地を舞台にした争奪戦の幕が上がる。
アメリカのCIA本部では、上層部からの指令を受けた主人公が恋人関係にある女性エージェントと共にパリに飛び、デバイスの奪還任務に挑む。しかし現場では予想外の展開が待ち受けていた。ドイツの諜報員が先手を打ち、ふたりの目前でデバイスを持ち去ってしまう。追いかけるうちに、イギリスの情報機関やコロンビアのエージェントまでが加わり、世界規模でのスパイ大集結となる。
ようやく奪還に成功し、ひとまずの決着がついたかに見えた矢先、今度は中国の諜報部員が登場。CIAの上司を射殺し、再びデバイスが奪われる。混乱の中で飛行機の墜落が次々と報道され、デバイスの脅威が現実のものとなっていく。急ぎアジトへ戻った主人公たちは、上司が殺害された現場を目にし、突入してきたCIAによって容疑者として追われる立場となってしまう。
逃亡の末、事態の真相が徐々に明らかになっていく。実は中国の諜報員は敵ではなく、デバイスを守る側だった。そして背後で糸を引いていたのは、死亡したはずの恋人の諜報員と、主人公の信頼していたCIAの上司。裏切りが二重三重に折り重なり、物語はさらなる混迷を見せる。
最終局面では、裏切った恋人の諜報員が再登場。主人公たちの恋人や家族を人質に取り、凄惨な犠牲を出しながらデバイスの隠し場所を吐かせて立ち去る。その行動を受け、主人公たちは復讐を誓い、敵のアジトとなっているホテルへ潜入。激しい銃撃戦の末にデバイスを破壊し、目的は達成される。エピローグでは、裏切り者に毒を盛り、静かにその場を離れていく姿が描かれる。
作品全体を通して、現代的なスパイ映画の要素が散りばめられているものの、個人的にはその魅力をあまり感じることができませんでした。確かに、国際的に活躍する女性エージェントが中心となる構成は興味深いものがあり、キャスト陣も実力派が揃っていましたが、アクションの見せ方やストーリー運びにもう一工夫欲しかったところです。
特に前半は登場人物たちの行動の動機が不明瞭で、物語の中で「なぜ今この選択をしたのか」という流れが掴みにくくなっていました。そのため、誰が敵で誰が味方なのか、複数の陣営が出入りするうちに関心が薄れていく感覚が否めなかったです。テンポ良く進行しているようでいて、肝心なドラマ性や緊張感の積み上げが弱く、場面のつながりにも多少の混乱が生じていたように思います。
アクションに関しても、既視感のある銃撃戦や追跡劇が続き、特に新鮮さやインパクトを覚える場面は少なかったです。スパイ映画ならではの知的な駆け引きやサスペンスの盛り上がりにも欠けていて、気づけば流れるようにエンディングに向かっていたという印象でした。
とはいえ、エンタメとして観る分には華やかな舞台設定や国際色豊かなキャラクターの存在感など、軽いスパイ・アクションを楽しみたい方にはちょうど良い一本かもしれません。テンポの速い展開を気軽に楽しむスタンスで観ると、別の味わいがある作品だとも思います。
☆☆
鑑賞日:2023/03/12 WOWOW
監督 | サイモン・キンバーグ |
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脚本 | テレサ・レベック |
サイモン・キンバーグ | |
原案 | テレサ・レベック |
出演 | ジェシカ・チャステイン |
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ペネロペ・クルス | |
ファン・ビンビン | |
ダイアン・クルーガー | |
ルピタ・ニョンゴ | |
エドガー・ラミレス | |
セバスチャン・スタン |