映画【デモニック】感想(ネタバレ):悪魔と科学、夢と現実。境界を越えて向き合う家族の物語

DEMONIC
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●こんなお話

 大量殺人犯で絶縁していた母親の記憶に入って呼び戻してほしいと医療機関から言われてやってみるけど実は悪魔祓いでみたいな話。

●感想

 一人の青年が、不意に聞こえた「こちらへおいで」と呼びかける声に導かれ、古びた一軒家の扉を開ける。そこには思いがけず彼の母親の姿があり、「逃げて」と切羽詰まった様子で語りかけてくる。不穏な空気の中で目を覚ました主人公は、夢だったと気づく。

 その後、親しい友人のひとりが治験バイトに参加したという話をしてくる。しかもそこで、主人公の母親が入院していることを知ったという。そんな突拍子もない展開に半信半疑ながらも、主人公はその病院へ向かう。案内された先で目にしたのは、無言のままベッドに横たわる母親の姿。すでに意識はなく、深い昏睡状態にあった。

 病院の担当者は、母親の意識を呼び戻すために「記憶シミュレーション装置」への参加を依頼してくる。特殊なマシンを使って患者の内面に入り込み、記憶の中で呼びかけるという斬新な治療方法。ためらいながらも、主人公は装置に入ることを決意する。

 シミュレーションの中で再び母親と出会った彼は、今度は夢の中と同じように「ここから出ていって」と拒絶される。その意味が理解できないまま、主人公は現実世界に戻る。戸惑いを抱えたまま親友に相談すると、その施設はただの医療機関ではなく、実は最新鋭の装備を持った「悪魔祓い」の施設なのだという説を語りはじめる。話の内容は陰謀論めいていて突拍子もないが、真剣に語る親友の様子に、主人公も心のどこかで疑念を持ち始める。

 再び記憶の中に潜ると、今度は巨大なカラスのような異形の怪物が現れ、主人公に襲いかかる。目が覚めたあとも、そのとき受けたはずの傷が現実の身体に残っており、彼は仮想のはずの空間で起きたことが実際の影響を及ぼしていることに恐れを抱く。

 夜、眠っていると突然親友が部屋に訪れ、言葉を交わすうちにその身体が異様にくねり始め、主人公に襲いかかる。しかしこれも夢で、目覚めた主人公はすぐに親友の家へ向かう。だがそこには誰の姿もなく、警察に相談しても信じてもらえない。

 母親がかつて大量殺人を起こしたのは、悪魔に憑かれていたからだという事実が明かされていき、物語はより濃密なスリラーへと変貌していく。主人公は仲間とともに、消息を絶った親友を探して再び病院へ向かう。そこでは既に武装した職員たちが悪魔の襲撃によって次々と倒れており、重傷を負った一人の祓い師から「聖なる剣」が手渡される。悪魔は医療チームの一員に憑依していた。

 母親を救うために、主人公は最後の覚悟で記憶世界へ向かうが、願いは届かず、母親はそこで命を終えてしまう。現実に戻ると、彼を支えていた親友たちも既に命を落としていた。悪魔が目の前に現れ、主人公と激しい戦いとなるが、最後は自身に剣を突き立てることで悪魔を滅するという結末を迎える。

 斬新な科学設定と悪魔祓いという二つの要素を掛け合わせた意欲作ではありますが、仮想空間の要素が物語上うまく作用しているとは言いがたく、設定が印象に残りにくかったのが正直なところです。武装した祓い師たちによる戦闘もあっという間に終わってしまい、アクションの見どころは控えめでした。

 ホラーとしての演出も淡く、驚かされる場面や心に残る怖さがもう一歩届かなかったように感じます。ただ、夢と現実、記憶と精神の曖昧な境界を使った構成は独特で、そうしたジャンルに惹かれる方には刺さる部分もあるかもしれません。宗教、科学、悪魔というモチーフを融合させようとした姿勢には敬意を表したいと思います。

☆☆

鑑賞日:2023/02/25 WOWOW

監督ニール・ブロムカンプ 
脚本ニール・ブロムカンプ 
出演カーリー・ポープ 
クリス・ウィリアム・マーティン 
マイケル・J・ロジャーズ 
ナタリー・ボルト 
キャンディス・マクルーア 
テリー・チェン 
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