映画【運び屋】感想(ネタバレ):90歳の運び屋が挑んだ感動とスリルの物語

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●こんなお話

 90歳にもなって老人が麻薬の運び屋を自分のペースでやって意外にうまくいく話。 

●感想

 花の栽培に情熱を注ぎ、発表会などでは仲間たちから称賛を受ける主人公。しかしその一方で、娘の結婚式には出席せず、結果的に家族とは絶縁状態となってしまいます。長い年月が過ぎ、インターネットが普及し始めた頃、彼は花の商売をたたむ決意をします。そして、孫娘の結婚式に足を運ぶものの、娘も出席しており、彼の姿を見た娘は激怒してその場を立ち去ってしまいます。さらに妻も夫の行動に失望し、主人公は家族との距離をより一層感じることになります。

 そんな中、結婚式に出席していた若者が主人公に声をかけ、「全米を運転して回っていた」という話を聞き、違反歴も一切なかったことから「荷物を車で運ぶだけの簡単な仕事がある」と紹介されます。主人公は気軽な気持ちでその仕事に応募し、強面の男たちにも物おじせず、淡々と荷物を運搬して成功を収めます。思いがけないほどの高額な報酬に驚きつつも、新しいトラックを購入し、運び屋として何度も仕事をこなしていきます。

 ある日、「荷物を見てはいけない」という約束を破ってトランクを開けると、大量の麻薬が入っていることが発覚。警察犬に嗅ぎつけられそうになりますが、クリームを犬の鼻に塗ってその場を切り抜けるなど、数々のピンチを乗り越えていって。次第に麻薬の売人たちとも打ち解け、組織の幹部に信頼されていきます。

 やがて主人公は組織のボスに気に入られ、邸宅に招かれ、年齢に見合わぬほどの活力を発揮して女性と関係を持つ場面も描かれます。90歳にしてベッドシーンに挑むという衝撃の展開は、映画史上でも最年長ではないかと思われるほどです。しかしその後、ボスが部下に殺され、組織の内部が一変。今まで気さくに接していた部下たちが主人公に対して威圧的な態度を取るように。

 そんな中、妻が重病で危篤状態になり、主人公は運び屋の仕事を中断して妻のもとへ向かい、看病の末に最期を看取ります。その後、再び運搬を始めるものの、売人たちに暴行を受け、脅されながら運転を続ける日々。ついには麻薬取締局の捜査官たちに追跡され、ついに逮捕。

 裁判では弁護人の助言を無視し、自ら有罪を認め、刑務所での服役生活を選びます。そしてその刑務所内で、再び花を育て始める姿が描かれておしまい。

 本作は、まるでチャラいような90歳の主人公が、緊張感を持たずマイペースに麻薬を運搬していくという、サスペンスとユーモアが同居する不思議な魅力のある映画です。恐ろしいメキシコの麻薬カルテルの中で、主人公が何に足を踏み入れているかを理解しつつも、あまり深刻には捉えていない様子が絶妙に描かれており、その目線に自然と引き込まれました。

 ただ車を運転しているだけにもかかわらず、テンポよく展開するストーリーにより退屈を感じさせません。さらに、麻薬捜査官たちの描写もどこか間抜けで笑いを誘い、緊迫感との対比が作品全体の味わい深さを引き立てています。

 後半は、家族との再接近や贖罪の物語が中心となり、心温まる要素が加わっていきます。最終的には反省し、過去の過ちに向き合う姿が描かれていますが、観終わった後には「カルテルは本当にこのまま黙っているのだろうか?」という一抹の不安も残る、スリルと感動が共存する作品でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2019/03/29 チネチッタ川崎 2024/10/06 NETFLIX

監督クリント・イーストウッド 
脚本ニック・シェンク 
出演クリント・イーストウッド 
ブラッドリー・クーパー 
ローレンス・フィッシュバーン 
マイケル・ペーニャ

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