映画【シビル・ウォー アメリカ最後の日】感想(ネタバレ):『戦場ジャーナリスト』が描く戦場の美と残酷──100分間の緊張と感動の旅

Civil War
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●こんなお話

 政府軍とテキサスカリフォルニア同盟軍が内戦状態でジャーナリストが大統領にインタビューしようとニューヨークからDCまで行くまでの話。

●感想

 合衆国大統領が反乱軍と位置づけられる「西部同盟軍」を撃退したというスピーチの録画から始まります。そのニュースを見つめているのが、本作の主人公であるベテランの戦場ジャーナリスト。

 ニューヨークでは武力衝突が続き、主人公は現場で取材活動を行っています。そんな彼に憧れを抱く若きジャーナリストの女性が登場し、彼女を守る形で主人公との関係が深まっていきます。

 ホテルに戻ると、同僚や長年の師匠と共に今後の取材について議論が交わされ、14か月間公のインタビューを受けていない大統領に対して単独取材を試みようという話が持ち上がる。憧れの眼差しを向ける若い女性ジャーナリストも同行を希望し、最終的に4人のチームでワシントンD.C.を目指す旅が始まります。

 旅の途中、ガソリンスタンドでカナダドルを用いて燃料を手に入れる交渉中、一人の男性が「略奪者」として命を狙われる場面に遭遇します。その衝撃に打ちのめされる若者をよそに、主人公はある種の冷徹さを見せながらも、墜落したヘリコプターの撮影をさせて取材を続けます。

 夜空ではロケットやミサイルが交錯し、戦闘の光が煌めくなか、「朝まで戦闘が続いていたら取材しよう」と話し合い、実際に西部同盟と政府軍の激しい銃撃戦を目撃。政府軍の捕虜が処刑されるシーンをカメラに収めていく。

 途中立ち寄った平和を装った町では、戦闘の気配を遠ざけて買い物をするシーンもある一方で、狙撃者同士の無差別な銃撃を目の当たりにし、「なぜ、誰が、誰と戦っているのか分からない」という混沌とした戦争の様子。

 道中、知り合いの東洋人ジャーナリストと再会しますが、彼らは民兵に捕らえられてしまいます。話し合いで解決を試みたものの、東洋人ジャーナリストは一瞬で射殺され、取材班は深い衝撃を受けます。師匠のジャーナリストが単身で救出を試みるも撃たれて命を落とします。

 ようやくワシントンD.C.手前の前線基地にたどり着いた一行。しかし、政府軍は既に降伏しており、もはや「残党狩り」の段階になっていたため、当初の取材目的は失われたかのように思えます。

 それでも主人公たちはホワイトハウス突入部隊に同行し、戦闘を撮影。若者が撃たれそうになる瞬間、主人公は彼女をかばって被弾し、その様子をカメラに収めた若者は、取材者としての大きな一歩を踏み出す。最終的に大統領は拘束され、仲間がその最期の言葉を記録。やがて、大統領が射殺されておしまい。

 全体を通して、銃声の爆音が観る者に迫り、戦場の緊迫感がリアルに伝わってきました。人命があまりにもあっけなく失われていく暴力の世界の中で、若いジャーナリストが衝撃を受けながらも、尊敬するメンターとの出会いと戦場の体験を経て成長していく様子が、胸を打ちます。

 また、登場する戦車、ヘリコプター、装甲車などが、ただの兵器ではなく、詩的な美しさを持って映し出されているのも印象的でした。100分という短い時間でありながら、戦争の狂気と旅の高揚感が織りなす、濃密なロードムービーとして完成度の高い作品でした。

☆☆☆

鑑賞日:2024/10/13 イオンシネマ座間

監督アレックス・ガーランド 
脚本アレックス・ガーランド 
出演キルステン・ダンスト 
ワグネル・モウラ 
スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン 
ケイリー・スピーニ― 
ソノヤ・ミズノ 
ニック・オファーマン 
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