ドラマ【イカゲーム】感想(ネタバレ):運命を賭けたゲームが始まる――命と金をめぐる極限の物語

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●こんなお話

 借金とか生きるのに大変な事情がある人たちが大金をかけて死のゲームに参加する話。

●感想

 借金に追われたり、今の暮らしに行き詰まりを感じていたりと、何かしらの事情を抱えた人たちが集まり、命を賭けたゲームに挑むという物語の土台は、ある種のお約束のようでもあるのですが、本作は全9話を通してテンポの良さが際立ち、サバイバル作品としての面白さをしっかり堪能できました。

 物語の中心にいるのは、職を失い、ギャンブルで借金を重ね、妻とも離婚し、娘との関係もうまく築けないまま日々を過ごす中年男性。病に倒れた母の手術代をどうにかして工面しようと苦しんでいると、ある日、謎の男から「ゲームに参加すれば大金が得られる」と持ちかけられます。麻酔薬で眠らされた主人公が目覚めた先は、見知らぬ巨大施設。そこには彼と同じように、金に困った男女456人が集められていて、命がけのゲームが始まっていくことになります。

 参加者の顔ぶれもまた個性的で、物語の厚みに大きく貢献していました。主人公が駅で出会ったスリの若い女性は脱北者で、祖国に残した家族のためにお金が必要だと語ります。幼なじみであり、かつては優秀な学生として同郷の誇りだった青年も、実は裏で巨額の横領に手を染めて追い詰められていることが明かされていきます。他にも、余命わずかな老人や、パキスタンから出稼ぎに来ている誠実な労働者、暴力団関係者など、さまざまな背景を持つ人物たちが、時には手を取り合い、時には裏切りあいながら、ゲームの中で運命を共にしていきます。

 ゲーム内容の面白さも印象的で、特に序盤に登場する「だるまさんが転んだ」や「型抜き」といったシンプルな遊びをベースにしたルールが、命のやり取りへと変化していくギャップが衝撃的でした。中盤の綱引きでは、フィジカルに不利なチームがどのように作戦を練り、勝利を掴もうとするかという展開に引き込まれましたし、第6話のビー玉の回は、登場人物たちの感情が極限まで揺さぶられ、深い余韻を残す名場面でした。とくに主人公と老人の静かなやり取りには、胸に迫るものがありました。

 また、ゲーム外で展開されるサブストーリーも見応えがありました。失踪した兄を探して潜入する若い刑事が、ゲームの運営の実態に少しずつ迫っていく過程は、サスペンスとしても楽しめる構成になっていて、視聴者の緊張感を絶やしません。そして、後半に明かされる運営の中核を担うフロントマンの正体には、驚かされました。登場した瞬間、その存在感で場の空気を一変させるキャスティングの妙も素晴らしかったです。

 ただ、最終話で描かれる「イカゲーム」については、韓国の子どもたちには馴染みのある遊びであると分かっていながらも、日本の視聴者としては少し戸惑いもあり、結果的に殴り合いでの決着という構図が少々単調に感じられてしまったのも正直なところです。

 とはいえ、全体としては最後まで映像のクオリティも高く、演出や美術もきっちり作り込まれていて、どこか漫画的な要素を含みながらも、リアルな苦悩や人間の選択の重みがしっかり描かれていたと思います。生き残るとはどういうことか、何を犠牲にしても守りたいものとは何か。それぞれの登場人物が抱える背景が、物語に深みを与えてくれていて、単なるサバイバルものを超えた、社会の断片を見つめるようなシリーズでもありました。

☆☆☆☆

鑑賞日:2020/12/06 Netflix

脚本ファン・ドンヒョク
出演イ・ジョンジェ
パク・ヘス
オ・ヨンス
ウィ・ハジュン
ホ・ソンテ
キム・ジュリョン
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