映画【レスキュー】感想(ネタバレ):熱血レスキュー映画の真骨頂|父子の絆と災害現場のリアルが交差する感動作

the-rescue
スポンサーリンク

●こんなお話

 海難レスキューの人たちの頑張る話。

●感想

 冒頭から画面いっぱいに広がる海上油田の爆発。燃え上がる炎と轟音を伴って繰り広げられるレスキューシーンは、まるで災害が今ここで本当に起きているかのような迫力で押し寄せてくる。CG感は確かにあるものの、爆炎の規模と音響の力で一気に世界観に引き込まれてしまうような、観る側に休む間も与えない開幕となっていました。

 物語は、極限の現場で活動するレスキュー隊の男たちを軸に展開していく。海上や山間、あらゆる危険な状況に向かっていく彼らの中には、無謀すれすれの行動で上層部から警告される者もいて、命知らずな荒くれ者集団という印象を受ける。そんな中、新たに女性ヘリパイロットがチームに加わることで、物語には新しい風が吹き込まれていく。隊長である主人公はシングルファーザーであり、まだ幼い息子とふたり暮らし。その息子が、女性パイロットと父親をくっつけようとあれこれ奔走する場面も挿入されていく。

 レスキューの合間には、訓練中のヘリが不時着しかけたり、山が地震で崩落したりと、立て続けに災害が押し寄せる。クライマックスでは、巨大タンカーの爆発と沈没という圧倒的スケールの中での救助活動が描かれ、終盤にかけて息をもつかせぬスペクタクルの連続となる。

 ただ、主軸となるのはあくまで主人公とヒロイン、そして若手隊員の3人で、その他の隊員たちはほとんど描写がないため、いくら命の危険にさらされても感情的な共鳴が起こりづらかったのは事実です。背景や個々のドラマがほとんど描かれないことで、せっかくの危機的状況にも深く入り込むことが難しく感じられました。

 また、どうしても気になってしまったのが、主人公と息子の日常パートでした。父子の暮らしを見せようとする意図は伝わってくるのですが、子役の演技がかなりオーバーで、やや不自然さを感じました。学校でのやりとりや、女の子との微笑ましい交流のシーンなども、表現が過剰で、観ていてつい距離を置いてしまう場面もありました。「お姉さん、お父さんの奥さんになって」的な台詞も、こうしたタイプの映画ではお約束なのかもしれませんが、やや浮いてしまっていた印象です。

 さらに、終盤にかけて息子の脳に腫瘍が見つかり、手術を受けるというサブプロットが差し込まれ、それと並行してタンカーでのレスキューが描かれる構成になっていました。危機と危機が同時進行することでドラマの厚みを出そうとしていたのかもしれませんが、あまり噛み合っているようには感じませんでした。特に、主人公が絶望に沈んだときに、病院の息子が歌声を届け、それをきっかけに主人公が再び立ち上がるという展開には、思わず苦笑いしてしまうような唐突さがありました。

 とはいえ、やはり香港映画らしい暑苦しいまでの熱血とエネルギーに満ちたレスキュー描写は健在で、火災や洪水の中でも一歩も引かずに人命を救おうとする主人公たちの姿には、しっかりとしたカタルシスがありました。日常パートよりも、そうした災害現場での過剰とも言えるアクション描写にこそ、この作品の持ち味が存分に活かされていたように思います。

 災害と救助、家族と仕事、感情と職務。そのすべてが同時に襲いかかるなかで、主人公たちが選ぶ行動の積み重ねが生み出すドラマは、どこか古き良きエンターテインメントの香りがして、観終わったあとも映像の残響が耳に残るような一本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2021/09/13 DVD

監督ダンテ・ラム 
アクション監督ジャック・ウォン 
脚本チー・ヤーチン 
マリア・ウォン 
タン・ユーリー 
出演エディ・ポン 
ワン・イェンリン 
シン・ジーレイ 
リリック・ラン 
タイトルとURLをコピーしました