映画【プレデター】感想(ネタバレ):シュワルツェネッガー主演作が見せる原始の闘い

predator
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●こんなお話

 宇宙人ハンターとコマンドとの戦いの話。

●感想

 中央アメリカの密林。ヘリの轟音が、湿った空気を震わせる。濃い緑の海のようなジャングルに、アメリカの特殊部隊が降り立つ。彼らのリーダーは、“ダッチ”・シェイファー。任務は「グアテマラで消息を絶った政府高官の救出」だった。

 チームは迅速にゲリラの拠点を急襲し、銃声と爆発の中で敵を制圧する。だが、戦場の熱が冷めたとき、彼らは気づく。任務の内容が聞かされていたものと違う。
 怒りを抱えながら撤収を進める中、仲間が次々と姿を消す。敵はゲリラではない。姿が見えず、どこから狙われているのかもわからない。森の奥に潜む“何か”が、彼らを一人ずつ狩っていく。

 それは、熱を感知する異形のハンターだった。見えない目で、音もなく近づき、標的を仕留めていく。銃も罠も通じず、仲間が次々と倒れていく中で、ダッチは気づく。奴は“熱”を見ている。 
 彼は泥を全身に塗り、体温を隠す。自然と一体になり、文明の装備を脱ぎ捨て、矢と罠だけで挑む。ジャングルに響く咆哮。人間と異形、狩る者と狩られる者が、原初の姿で向かい合う。
 罠が決まり、プレデターは重傷を負い、自らの装置を作動させて森を爆炎で包む。生き残ったのは、ダッチただ一人。ヘリの風を浴びながら、彼は何も語らないままヘリに救出されておしまい。

 この作品は、単なるアクション映画というより、人間と自然、文明と野性の境界を描いた“闘いの詩”のように感じます。序盤のゲリラ掃討戦では、銃火器の金属音や爆風が支配する近代戦の空気が漂っていますが、物語が進むごとにそれらの“文明の武器”が剥がれ落ちていき、最後には肉体と本能だけが残る。装備を失い、言葉も捨てた主人公の姿は、人間そのものの強さと脆さを象徴しているようでした。

 特に終盤、台詞がほとんどなくなる20分間は息を呑む緊張の連続でした。夜の闇に浮かぶ松明の火、濡れた肌に光る汗、遠くで鳴る虫の声。言葉を失った世界で、音と呼吸だけが生きている。
 シュワルツェネッガーの肉体が“語る”映画であり、動きそのものがセリフになっているようでした。あの雄たけびには、恐怖と誇り、そして生き抜く意志がすべて込められていたと思います。

 仲間たちの存在も印象に残ります。互いに信頼を寄せながらも、恐怖の中で崩れていくチーム。特にディロンの「ヘリを待たせておいてくれ」という台詞には、戦場に生きる男たちの覚悟が滲んでいて、何度聞いても胸に残ります。また、“無痛ガン”などの要素がリアリティを損なうどころか、作品の緊張感を逆に強調している点も見事でした。

 映像はとにかく濃密です。木々の隙間から差し込む光、湿った土の匂いが伝わるようなカメラの動き。
森そのものが一つの巨大な生物のようにうごめき、観客をその内部に引きずり込んでいきます。アラン・シルヴェストリによる音楽も秀逸で、重低音のリズムと不協和音が、目に見えない恐怖の存在を見事に表現していました。

 約100分の上映時間は息つく間もなく、観る者の集中を途切れさせません。アクションとサスペンスが絶妙なリズムで交互に襲いかかり、まるで観客自身がジャングルを生き延びているような感覚を覚えます。娯楽作品としての完成度が高く、何度観てもその迫力が衰えない映画だと感じました。単なるSFやアクションを超えて、人間の本能と存在の根源を描いた名作だと思います。

☆☆☆☆☆

鑑賞日:2010/11/13 Blu-ray 2025/11/03 Amazonプライム・ビデオ

監督ジョン・マクティアナン 
脚本ジェームズ・E・トーマス 
ジョン・C・トーマス 
出演アーノルド・シュワルツェネッガー 
カール・ウィザース 
ジェシー・ヴェンチュラ 
ビル・デューク 
ソニー・ランダム 
リチャード・チェイヴス 
シェーン・ブラック 
エルピディア・キャリロ 
R・G・アームストロング 
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