ドラマ【ハウス・オブ・カード 野望の階段 シーズン5】感想(ネタバレ):静かに燃える政治ドラマの行方

House of Cards Season5
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●こんなお話

 大統領選戦ったり、過去の罪が暴かれそうになって防ぐ話。

●感想

 本シーズンは、前のシーズンまでの濃密な駆け引きと緊張感ある展開からは少し趣を変えて、より静かなトーンで進行していく。かつてのような政治劇としての高揚感や、誰が誰を裏切るのかというサスペンス的な見どころが控えめになり、物語の核が深層に潜る構成となっていました。

 主人公であるフランク・アンダーウッドが挑むのは、共和党候補コンウェイとの大統領選。だが今回はその選挙戦も、これまでのような高揚感に満ちた描写ではなく、やや淡々と描かれる。支持率の低下により一時は当選が危ぶまれる状況となるが、そこで繰り出されるのがシリーズならではの大胆な一手。ただし、それも今までのような爽快な逆転劇というよりは、裏技のような展開であったため、どこか観る者の期待を超えるような昂揚感とは異なる空気が流れていました。

 シーズン中盤からは、フランクの過去の行動が徐々に暴かれていく過程が描かれる。罪が明るみに出る危機に直面し、これまで味方であった人物たちを次々に切り捨てていく彼の姿は、野心を持つ者の孤独と冷酷さを浮き彫りにする描写として興味深く感じられました。けれども、そこにあるドラマ的なうねりは控えめで、シリーズ全体としての緊張感が持続しない印象も残りました。

 特に印象的だったのは、クレア・アンダーウッドと作家トム・イエーツの関係です。ふたりの間に芽生える関係性は、物語上の意味というよりも、欲望の発露としての側面が強調されていたように感じました。クレアが女性初の大統領となる歴史的な節目も、もう少しドラマティックに描かれていたなら、より響くものがあったかもしれません。

 また、シリーズを通して登場していたダグ・スタンパーの存在感も、今シーズンでは大きく変化していたように思います。無表情の中に押し殺された感情が時折にじむ演技は素晴らしいのですが、キャラクターの動機が読み取りにくく、物語上での軸がやや曖昧に感じられました。

 外交的なテーマとしてはロシア、中国、シリアといった国際問題も一応登場はしますが、それらはあくまで背景に留まり、物語の主軸はあくまでもフランクとクレアの権力維持とそのための策謀に置かれています。過去シーズンに見られたような豪快さや視聴者の心を鷲掴みにするような展開は控えめで、ストーリーのスケール感においても少し縮小された印象を受けました。

 個人的には、シリーズを通して初めて、最初から最後まで心から乗り切れなかったシーズンであると感じました。もちろん作品の質が落ちたというわけではなく、物語がより内省的で静かなトーンに移行したことによる変化といえるかもしれません。それでもなお、俳優たちの重厚な演技と、政治の世界に生きる者たちの心理戦は見応えがあり、このドラマならではの醍醐味の一端はしっかりと感じ取ることができました。

☆☆☆

鑑賞日:2021/07/03 NETFLIX

原作ボー・ウィリモン
製作総指揮ダニエル・ミナハン
出演ケヴィン・スペイシー
ロビン・ライト
マイケル・ケリー
ケイト・マーラ
デレク・セシル
ネイサン・ダロウ
ジェイン・アトキンソン
ポール・スパークス
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