映画【The Soul: 繋がれる魂】感想(ネタバレ):近未来台湾を舞台に描くSF犯罪ドラマ

The-Soul
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●こんなお話

 大企業の社長が殺されて真相に迫る検察官の話。

●感想

 殺人事件が発生し、末期がんに侵され余命わずかな主人公が捜査の道を歩み始める物語です。初めは被害者の妻や関係者たちから話を聞くことで、事件の背景や状況が明らかになっていきます。その中で、被害者である実業家が、息子による魔術的な力で殺害された可能性が浮上し、オカルト的な側面も含んだ殺人事件の様相を呈していきます。

 物語の展開は、いわゆる王道の殺人捜査ものとして進んでいき、関係者の証言をもとに被害者や容疑者の過去や事情が解き明かされていく構成となっています。舞台は2032年の台湾という近未来であり、台北101ビルをはじめとした象徴的な風景が映し出される中、未来的なガジェットが効果的に登場します。映像全体が青白いトーンで統一されていることもあり、映像美そのものが観ているだけで楽しめる魅力となっています。

 物語が進むにつれて、最先端のがん治療の研究や、記憶をコピーするというSF的要素が濃くなっていきます。このあたりから少々非現実的な展開も見られ、物語についていくのが難しく感じる視聴者もいるかもしれません。ただ、その中でも主人公の難病というテーマが強く描かれ、夫婦の深い愛情や刑事としての倫理観が交錯する葛藤が丁寧に表現されているのは、大変感動的なポイントです。物語の方向性を上手にシフトさせているため、単なるSFやミステリーにとどまらない味わい深さが生まれています。

 心をコピーし、永遠に生き続けるという設定には、往年の名作「ルパン三世VS複製人間」を彷彿とさせる面白さがあり、オリジナルの本人とコピーが同時に存在するという斬新なアイデアもこの作品の見どころです。SFならではの人間関係の機微を描くことで、単なる捜査ドラマにはない独特の世界観が広がっています。

 ただ、捜査ものとしての爽快な解決感やカタルシスは控えめで、研究の展開がやや突飛に感じられる部分もあります。そのため、物語の一部には乗り切れない部分があるかもしれませんが、主演のチャン・チェンが細身の身体で見せる演技は圧巻で、作品の魅力を大きく引き上げています。

☆☆☆

鑑賞日:2021/05/15 NETFLIX

監督チェン・ウェイハオ
脚本チェン・ウェイハオ
出演チャン・チェン
チャン・チュンニン
クリストファー・リー
チャン・シャオウェイ
リン・フイミン
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