映画【キングコング:髑髏島の巨神】感想(ネタバレ):南の島に眠る守護神と人間たちの対話

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●こんなお話

 サミュエル・L・ジャクソンVSコングの話。

●感想

 南太平洋の孤島、密林に覆われたその場所に、時代も国籍も違うふたりの兵士がパラシュートで降り立つ。ひとりはアメリカ軍の兵士、もうひとりは日本軍。状況をのみ込む暇もなく、ふたりは敵として対峙し、そのまま命のやり取りを始める。だが、そんな二人の前に突如として現れたのは巨大なコング。あまりにも現実離れした存在に、兵士たちは戦いを止め、言葉を失う。

 時代は移り、アメリカがベトナム戦争からの撤退を進める中、謎の島を発見したという衛星データをもとに、調査隊が結成される。隊には軍人の他に、イギリスの元特殊部隊員や学者、記者など様々な立場の人間が集められた。目指すはその島、地図にない未知の領域。

 嵐に包まれた島へヘリで突入し、島の地形調査のために爆弾を投下しながら進んでいくと、ジャングルの奥から突如として姿を現したのがコングだった。巨大なその腕が振るわれ、木が飛び、ヘリがなぎ倒されていく。突如として始まった空中戦で、調査隊の多くはあっという間に命を落とすこととなる。

 生き残った一行は、軍人グループと主人公ら民間人グループに分かれて島内を移動することになる。それぞれの道で彼らを待っていたのは、巨大なクモや骨の怪物といった信じがたい生物たち。そして主人公たちは島の現地人と接触し、さらに、あの最初に墜落した日米の兵士のうちのひとりと再会する。彼は長年この島で生き延びており、この島に存在するコングの役割や、もっと恐ろしい古代の怪物たちの存在を語って聞かせる。

 一方で、コングに部下を殺された軍人は復讐の念にとらわれ、仲間の静止も聞かずにコングの殺害に動く。迷いながらもその行動についていく主人公たち。道中では骨の怪物が出現し、日本刀や火炎放射器などで迎え撃つ大乱戦も描かれる。

 その後、主人公は軍人の暴走を止めるために民間人を避難させつつ再び戦場へと戻る決意をする。軍人たちは待ち伏せして爆弾を使ってコングを仕留めようとするが、その最中に再び巨大な骸骨の怪物が現れる。コングと怪物の一騎打ちが始まり、主人公たちも武器を手に応戦。記者の女性が危機に陥るも、コングが彼女を守り抜き、壮絶な戦いの末、怪物を撃退する。そして生き残った人々は島を後にする。

 冒頭からテンポが良く、太平洋の孤島で始まる米兵と日本兵の対決という、まるで戦争映画のような導入から一転して巨大生物との遭遇へと移行するツカミの構成が巧みでした。最近の映画では怪物の登場をじらす傾向がありますが、本作は序盤から堂々とコングを登場させていて、観ていて気持ちがよかったです。

 特に、ヘリ部隊とコングの最初の戦闘は迫力満点で、突然飛んでくる大木や、夕日を背景に立ち上がるコングのカットなど、映像の力で興奮させてくれる場面が多くありました。アクション映画では暗闇での戦闘が多く、何が起きているか分かりづらいこともありますが、本作では昼間の明るい中で大立ち回りが行われるので視認性も高く、観やすい構成になっていたと思います。

 ただその一方で、映像の迫力や展開のスピードとは裏腹に、120分の尺の中でやや単調さを感じたのも正直なところです。物語がテンポよく進むため、人物描写が浅くなり、主人公がなぜ行動しているのかという動機づけが弱く感じられてしまいました。主人公のキャラクター像がつかめず、民間人を守りたいのか、コングに味方したいのかが分からない場面も多かったです。

 軍人役のサミュエル・L・ジャクソンが、復讐の鬼と化していく様子は存在感がありましたし、長年島で生き抜いた元兵士も魅力的でしたが、他の登場人物たちに関しては印象が薄く、特にアジア系の学者などは結局どういう立場だったのか、観終わっても疑問が残るほどでした。

 モンスター映画としてのサービス精神は旺盛で、大ダコ、巨大クモ、骨の怪物と次々に怪物が現れるのは楽しい要素でしたが、あまりに連発されるため、ひとつひとつの場面に感情の揺れが生まれにくかったのも事実です。

 クライマックスの怪物との戦闘も、序盤のヘリとの戦いほどの高揚感には届かず、ややあっさりとした印象で終わってしまった印象がありました。しかしながら、コングが「守り神」として描かれ、人間たちがその存在をどう捉えるかというテーマ性は、平成ガメラシリーズに通じるものがあり、単なる怪獣映画以上の視点があったのは興味深かったです。

☆☆☆

鑑賞日: 2017/03/26 TOHOシネマズ川崎 2017/09/28 Blu-ray 2025/06/30 Amazonプライム・ビデオ

監督ジョーダン・ヴォート=ロバーツ 
脚本ダン・ギルロイ 
マックス・ボレンスタイン 
原案ジョン・ゲイティンズ 
ダン・ギルロイ 
製作トーマス・タル 
出演トム・ヒドルストン 
サミュエル・L・ジャクソン 
ジョン・グッドマン 
ブリー・ラーソン 
ジン・ティエン 
ジョン・C・ライリー 

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