●こんなお話
平凡な中年男が家族と旅行を楽しみたい再び牙をむく話。
●感想
郊外の町で静かに暮らす男、ハッチ・マンセル。彼は前作でロシアン・マフィアを焼き払ったその代償として、多額の借金を背負い、今もどこかで心の平穏を探している。妻ベッカとは会話も少なく、子どもたちとも心が離れたまま。そんな中で彼は、家族との関係を取り戻そうと、幼い頃に訪れた思い出の地・プラムヴィルへ小旅行を計画する。
その町は古びた遊園地とウォーターパークがある、のどかな観光地に見えた。しかし裏では、密輸や賭博が横行する犯罪の温床でもあった。町を仕切るのは、遊園地のオーナー・ワイアットと、腐敗した保安官エイベル。さらにその背後には、サイコパスの女ボス・レンディナが君臨している。
ハッチ一家が到着したその日から、何かがずれていく。息子のブレイディが地元のチンピラ・マックスにぬいぐるみを壊され、ちょっとした諍いが喧嘩に発展。穏やかに抑えようとしたハッチだったが、抑えきれない怒りが噴き出し、スタッフを殴り飛ばしてしまう。その瞬間、平穏な家族旅行は終わった。かつての“殺し屋”としての血が再び騒ぎ出す。
地元の保安官は「この町から出て行け」と警告するが、ハッチは引き下がらない。やがて、マックスが拉致されているのを偶然目撃し、助け出す過程でレンディナの工場を爆破してしまう。これが引き金となり、レンディナは激怒。報復のために刺客を町へ送り込む。ハッチはかつての仲間であり兄のハリー、そして父親と協力し、ウォーターパークで決戦の準備を整える。銃声と爆発音が重なり、壮絶な戦闘が繰り広げられる。
ワイアットは足を撃たれ、ハッチの父は倒れる。それでもハッチは立ち上がり、レンディナとの一騎打ちへ。絶体絶命の瞬間、ベッカが駆けつけて加勢し、夫婦でレンディナを撃ち倒す。かつて崩れかけた家族が、血の中で再びひとつになる。
戦いのあと、警察の事情聴取を受けるハッチ。しかし、どこからか一本の電話が入り、彼はすぐに釈放される。その後、家族で旅の写真を眺めるシーンでおしまい。
痛みを伴うアクションは今回も見応えがありました。拳のひとつひとつが重く、指が飛ぶ描写も生々しい。“普通の男が、実は最強だった”という設定は前作から続くシリーズの軸ですが、やはりこの世界観の醍醐味は、暴力の痛覚がちゃんと伝わってくるところにあると思います。
ハッチが敵を倒すたびに、同時に心の奥にある傷も滲んでいくようで、アクションでありながらどこか哀しさも漂います。レンディナを演じるシャロン・ストーンの狂気的な存在感も印象的でした。派手で気まぐれ、残酷で、どこか楽しそうに人を弄ぶ姿が強烈で、画面に出てくるだけで緊張感が生まれます。ベテラン女優の妖しさと迫力を改めて感じさせる役柄でした。
ただ、家族旅行へ行くまでの描写はやや長く、物語のエンジンがかかるまでに少し時間がかかる印象です。また、展開そのものは前作と似た構造で、アクションの質は高いものの、驚きという点では新鮮さは薄かったように感じます。
とはいえ、シリーズとしての完成度は安定しており、ファンが期待する「普通のおじさんの極限バイオレンス」は十分に味わえる作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2025/11/02 イオンシネマ座間
| 監督 | ティモ・ジャヤント |
|---|---|
| 脚本 | デレク・コルスタッド |
| アーロン・ラビン |
| 出演 | ボブ・オデンカーク |
|---|---|
| コニー・ニールセン | |
| ジョン・オーティス | |
| RZA | |
| コリン・ハンクス | |
| クリストファー・ロイド | |
| シャロン・ストーン |

