●こんなお話
黒人青年の死をきっかけに刑事たちが動く話。
●感想
ハーレムから黒人の青年が「キスミーに行くんだ」と言って日本へやってくる。ファッションショーが行われているホテルの最上階へ向かうエレベーターの中で、「ストロハ……」という言葉を残して殺されてしまう。「キスミー」「ストロハ」とは何か? なぜ殺されたのか? という冒頭のミステリー要素が抜群に面白かったです。
ただ、そこがピークで、あとは失速。まず、ファッションデザイナーの主人公が行うショーがとにかく長いです。職業紹介としては理解できるけれど、体感10分以上。1977年当時は華やかでも、今見ると古くさく感じてしまって辛かったです。
130分の上映時間に色々詰め込みすぎて混線状態。殺人事件の夜に、主人公の道楽息子がひき逃げ事件を起こし、被害者の遺体を海に捨ててしまうというショッキングな展開。その被害者の夫役が長門裕之、愛人が夏八木勲。2人の初期の会話のやりとりも回りくどくて、必要性があったのか疑問です。しかも「現場にあった血痕が妻のものと一致した」というセリフが出てくるが、どうやって調べたのかは説明なし。ご都合主義が目立ちました。
そのひき逃げ事件を捜査する刑事が松田優作。ファッションデザイナーの主人公と出会い、なぜか彼の子ども時代の記憶が蘇る。そして、彼の父親の死と主人公が関係していたことも思い出すという都合のよさ。しかも、アメリカ・ニューヨークで捜査をしていたジョージ・ケネディ演じる刑事まで、優作の過去と関係があると発覚。世界が狭すぎると感じます。
ジョージ・ケネディの演技は素晴らしいけれど、射撃場のシーンがやたらと長かったり、不要と思える場面も目立ったり。事件の解決も推理や捜査によるものではなく、おでん屋での会話中に突然ひらめくという展開には驚きました。詩集の話から「キスミー」の意味に辿り着くなんて、雑にもほどがあると思いました。
「ストロハ」も、意味が判明するまでの間が短すぎて拍子抜け。そして犯人がなぜかショーのスピーチ中に事件の内容を語り出す。観客には意味がわからないはずですが、なのに拍手喝采という不自然な展開。刑事たちもその場で逮捕せず見送るから、結局あんな結末。
ツッコミどころは多いけれど、ジョー山中の主題歌は胸を打ちますし、松田優作、鶴田浩二、三船敏郎、ジョージ・ケネディと豪華キャストが集結した角川映画らしい大作感はたしかにあるし。物語は粗が多いけれど、豪華な出演者と時代の勢いを感じられる1本ではありました。
☆☆☆
鑑賞日: 2013/05/23 DVD
監督 | 佐藤純彌 |
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脚本 | 松山善三 |
原作 | 森村誠一 |
製作 | 角川春樹 |
出演 | 岡田茉莉子 |
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岩城滉一 | |
高沢順子 | |
松田優作 | |
鶴田浩二 | |
三船敏郎 | |
ジョージ・ケネディ | |
ハナ肇 |
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