●こんなお話
真珠湾攻撃からミッドウェイ海戦までの半年間の日米両軍の話。
●感想
ローランド・エメリッヒ監督が手がける、視覚的にもスケール的にがすごい戦争映画でした。『ミッドウェイ』は、まさに監督の真骨頂とも言えるVFXの迫力が詰まった一作だったと思います。空母からの戦闘機の発艦と着艦、飛び交う砲弾のなかをくぐり抜けていく急降下爆撃。これらの映像は、これまでの戦争映画ではあまり見たことがないようなフレッシュな構図やアングルが印象的で、映画館で観ることの醍醐味を感じさせてくれるシーンがいくつもありました。
物語は群像劇のようなスタイルで描かれ、アメリカ軍の上層部、現場のパイロットたち、日本の軍人たちと、さまざまな立場の人々の視点が入り混じって展開していく。真珠湾攻撃後に司令官に任命されるニミッツ、暗号解読に力を注ぐレイトン、実行部隊を率いるドゥーリトルらがそれぞれの立場で動き、戦況が徐々に緊迫感を増していく。そして、壊れた空母を急ピッチで修理して戦線復帰させる流れや、珊瑚海海戦の描写など、戦史に詳しい方なら思わずうなずく場面も数多く登場。
その一方で、映画全体のテンポや演出は淡々としており、登場人物への感情移入がやや難しい印象も残ったかもしれないです。戦争映画に限らず、群像劇の形式は一人ひとりのドラマに深く踏み込むことが難しくなる側面もあるかと感じました。ミッドウェイ海戦において、各部隊の行動や作戦が字幕で示されるのだが、アメリカ軍の戦略目的や日本側の意図が映画内だけでは明確に伝わりにくく、予備知識のない方には少しわかりづらい構成になっていたように思います。
映像については、エメリッヒ監督らしいスペクタクルな作りである一方で、全体にCG感が強く、個人的にはどこかテレビゲームのような平面的な印象を受けました。爆発の描写にしても、アニメ的な演出に寄っていて、臨場感や物理的な重みが伝わりにくい場面もあったように感じます。
戦闘シーン以外の部分、たとえば情報戦のような駆け引きも、ニセ情報を流すという程度で終わっており、知略戦の醍醐味にはあまり触れられていなかったのは惜しいところでした。ストーリーは自然にミッドウェイの決戦へと進んでいきますが、現場のパイロットたちの人物像には深みがなく、感情的なつながりが薄く感じられたのも、少しもったいない部分だと思います。
それでも、日本側の登場人物が丁寧に描かれていた点には好感を持った。特に南雲中将や山口多聞といった人物が登場し、ドラマの重層性を支えていたように思います。ただ、やはりこれまでの戦争映画と同様に、失策の責任を一人に押しつける描写が強調されていた点は、もう少し視点のバリエーションがあってもよかったのではないかと感じました。
とはいえ、エメリッヒ監督ならではのスペクタクル演出と、大規模な戦闘シーンを通して、歴史の一幕を映像として追体験できるという意味では、十分に意義のある作品だったと感じます。歴史映画としての側面とエンタメとしてのバランスもとれており、ミリタリーファンはもちろん、一般の観客にも広く届く作品だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2020/09/16 TOHOシネマズ川崎 2021/01/29 DVD 2022/04/03 NETFLIX
監督 | ローランド・エメリッヒ |
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脚本 | ウェス・トゥーク |
出演 | エド・スクレイン |
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ルーク・クラインタンク | |
ウディ・ハレルソン | |
デニス・クエイド | |
パトリック・ウィルソン | |
豊川悦司 | |
浅野忠信 | |
國村隼 | |
アーロン・エッカート | |
ルーク・エヴァンス |