●こんなお話
5人の男たちがヤクザから金を強奪して殺し合いになる話。
詳細ネタバレあらすじ
ディスコを経営する万代樹木彦は、かつて、店を繁盛させていたが、バブル崩壊によって経営は傾き、大越組から多額の借金を抱えていた。大越組は借金の返済を迫るだけでなく、万代の店そのものを狙っており、万代は追い詰められていた。
そんな万代の前に三屋純一という若い男が現れる。三屋は女装して男娼を装い、男から金を奪う生活を送っていた。以前、万代は路地裏で三屋が男から金を奪っているところを目撃しており、三屋は万代に通報されたため自分が逮捕されたと思い込み、万代を恨んでいた。
ある日、万代はバッティングセンターでリストラされた会社員の萩原昌平と出会う。萩原は会社を辞めさせられたことを家族に隠し、自宅にも帰らずカプセルホテルで生活していた。万代に自分を雇ってほしいと頼み込み、履歴書を渡してディスコまでついてくる。
ディスコには大越組の組員たちも出入りしており、万代は組員から暴力を受ける。その騒ぎの中に三屋も現れ、組員と揉めてナイフを取り出す。そこへ大越組の若頭・久松茂が現れて騒ぎを収める。三屋は万代に金を要求するが、万代は自分も大越組から借金を抱えていることを明かす。
そこで万代は三屋に、大越組から1億円を奪う計画を持ちかける。三屋はこの話に乗り、二人は強盗計画を進めることになる。万代はさらに仲間を集める。大越組のチンピラで元ボクサーのジミーは、パンチドランカーの影響もあり周囲から軽く扱われていたが、元ボクサーだけに腕力は強かった。また、大越組で働かされているタイ人女性ナミィーと恋人関係にあり、彼女をタイへ帰してやりたいと思っていた。
続いて万代は、ぼったくりバー「ピンキー」の用心棒をしている元刑事の氷頭要を仲間に誘う。氷頭は警察を辞めた後、裏社会で生きており、武器を扱えるうえ戦闘にも長けていた。離婚した妻と娘との関係を取り戻したいという思いも抱えており、万代はそこにつけ込んで計画へ引き込む。
ジミーを仲間にするため、万代はナミィーにも接触する。大越組にパスポートを取り上げられていたナミィーは自由に帰国できず、ジミーは彼女を助けるためにも計画に加わる。
こうして万代、三屋、萩原、氷頭、ジミーの5人がそろう。目的は大越組の事務所から1億円を奪うこと。互いに性格も境遇も異なる5人は、それぞれの事情を抱えたまま強盗へ向かう。
5人はワゴン車で大越組の事務所へ向かう。ジミーが内部へ侵入しようとするものの思うように進まず、万代が借金を返しに来たように装って事務所へ入る。その後、仲間たちが一斉に突入する。
5人は銃や棒を使って組員たちを制圧する。しかし金の場所を聞き出す途中で萩原が発砲し、単なる脅しだったはずの強盗は本格的な銃撃戦へ変わっていく。最終的に若頭の久松から金庫の場所を聞き出し、5人は1億円を手に入れる。さらにジミーの恋人であるナミィーのパスポートも持ち出す。
万代は自分が強盗の仲間ではなく、事件に巻き込まれたように装うため事務所に残る。一方、三屋、氷頭、萩原、ジミーは大金を持って逃走する。
しかし、大越組の背後には五誠会が存在していた。五誠会会長の式根は、大越組が1億円を奪われたことに激怒する。大越に責任を取らせようとしながら、強盗を実行した5人への報復を命じる。
ディスコに戻った三屋、氷頭、萩原のもとへ、遅れて万代も戻ってくる。しかし万代は大越組から指を詰めさせられていた。1億円を手にした5人は、一時的に成功したように見える。しかし、その直後から大越組による追跡が始まる。
ジミーはナミィーをタイへ帰してやれると喜ぶ。ところが大越組の組員たちがディスコへ乗り込み、ジミーを連れ去る。ジミーは拷問を受け、強盗について話してしまう。そしてナミィーも組員たちに襲われて命を落とす。
恋人を失ったジミーは、ナミィーの服を身につけ、血まみれになりながら大越組の事務所へ現れるが、待ち構えていた京谷一郎と柴田一馬によって射殺される。
五誠会は強盗に関わった5人を始末するため、京谷と柴田を送り込んでいた。京谷は冷酷な殺し屋で、柴田はその相棒。二人は単なる仕事仲間ではなく、強い執着を伴う特殊な関係で結ばれている。
一方、萩原は奪った金を持って自宅へ戻る。しかし家の中に妻と子どもの姿はなく、家族はすでに死亡していた。しかも、その家族を殺したのは萩原自身だったことが明らかになる。
そこへ京谷が現れ、萩原は京谷によって殺され、強盗で奪った金も回収される。
氷頭は残された家族との関係を取り戻そうとする。元妻の早紀と娘とレストランで会い、もう一度やり直そうとするが、その場にも京谷と柴田が現れる。店内にいた客たちが次々といなくなっていく不気味な状況の中、氷頭の妻子は殺される。氷頭はその場から逃げ延びる。
一方、万代と三屋は、万代の故郷である飯田へ向かおうとする。逃亡途中で氷頭と合流し、萩原一家が殺されたこと、大越組が京谷と柴田を送り込んだことを知る。
万代は、自分が強盗を計画したことで仲間や家族まで巻き込んでしまったことに苦しむ。それでも三屋は万代から離れず、二人で逃げようとする。
しかし、バスターミナルで京谷と柴田に追いつかれる。三屋と万代は反撃し、柴田の脚を撃つ。二人はトイレへ逃げ込むが、万代はすでに銃撃を受けて重傷を負っている。
万代は三屋に、自分は助かると思わせるような言葉をかける。そして「3つ数えたら逃げよう」と告げる。三屋にキスをした万代は、そのまま息絶える。
万代を失った三屋は氷頭と合流する。二人は逃げ続けるのではなく、大越組への復讐を決意する。土砂降りの雨の中、三屋は大越組の事務所へ向かう。銃を手に事務所へ突入し、組員たちを次々と撃っていく。激しい銃撃戦となり、三屋が追い詰められたところへ氷頭が車で突っ込み、三屋を助ける。
大越も銃撃を受けるが、防弾チョッキを着ていたため生きていた。雨の中で三屋たちを挑発する大越に対し、氷頭が銃を向ける。そして氷頭は大越の頭部を撃ち、大越を殺害する。
大越組との戦いは終わったように見えるが、京谷と柴田が残っている。氷頭は京谷に撃たれて倒れる。
三屋も撃たれるが、京谷の銃が弾切れになったことで生き残る。そこへ柴田が現れる。柴田は京谷を守ろとして撃たれる。
柴田を失った京谷は激しく動揺し、駆けつけたパトカーに向かって銃を乱射する。その隙を突いて三屋は逃げ出す。
翌日、三屋は万代の故郷である飯田へ向かう長距離バスに乗る。手元には万代の遺骨がある。
バスが途中で休憩のため停車すると、三屋は飲み物を買う。そして車内へ戻ると、そこには逃げ延びた京谷が待っている。
京谷は三屋を追っていた。二人は銃を向け、ほぼ同時に発砲する。相撃ちとなり、京谷は座席に腰を下ろす。三屋も万代の遺骨を抱えたまま力尽きる。
やがて乗客と運転手がバスへ戻ってくる。しかし、二人が死亡していることにはすぐ気づかない。バスはそのまま飯田へ向かって走り続けておしまい。
●感想
90年代の空気が画面いっぱいに詰まった映画で、映像を見ているだけでも当時の時代感が伝わってくるところが素晴らしかったです。バブル崩壊後の社会を背景にしていることもあり、登場人物たちがそれぞれ何かを失った状態で生きているのが印象に残りました。
豪華キャストがそろっているのも大きな見どころですが、それ以上に面白かったのが、登場人物一人ひとりのキャラクターがしっかり立っているところです。ディスコのオーナー、チンピラ、元刑事、リストラされたサラリーマン、パンチドランカーの元ボクサー、そして「保険きかねえからよぉ、俺たちの仕事」と言う殺し屋まで、それぞれが強烈な個性を持っています。
しかも、そんな5人が1億円を奪うために集まるという組み合わせが最高です。絶対に意見が合わなさそうな人間ばかりなのに、一度強盗を始めてしまったことで同じ運命に巻き込まれていく。その後、仲間たちが一人ずつ追い詰められていく展開も、それぞれのキャラクターを生かして描かれているので面白かったです。
特に佐藤浩市さん演じる万代と本木雅弘さん演じる三屋の関係は印象に残りました。最初は恨みを抱えていた三屋が、いつの間にか万代のそばに残り、最後まで一緒に逃げようとする。この二人の距離が少しずつ変化していくところがよかったです。
椎名桔平さん演じるジミーとナミィーの関係も切ないですし、竹中直人さん演じる萩原と家族の描写には、単なる強盗映画とは違う怖さがあります。自分では家族のために金を持ち帰ったつもりでも、すでに家庭そのものが崩壊しているという展開にはゾッとしました。
根津甚八さん演じる氷頭の場面も好きでした。家族と再会してやり直そうとするところへ京谷たちが現れ、レストランの中から他の客が一斉に消えていく場面は、何が起こっているのか分からない不気味さがあります。ここは派手な銃撃戦とは違う怖さがありました。
そして、やはりビートたけしさん演じる京谷の存在感がすごいです。ほとんど言葉を発しなくても怖いですし、雨の中をスウェット姿でビニール傘をさしながら拳銃を撃ってくる姿は、恐ろしいのにめちゃくちゃカッコよかったです。あの独特の佇まいだけで、普通の殺し屋とは違う異様さが伝わってきます。
個人的に少し分かりにくかったのが、竹中直人さん演じる萩原がヤクザの事務所でパスポートを一瞬見るカットです。後の展開につながる重要な要素なのですが、初見ではあまりにも一瞬なので、何を意味しているのか気づきにくかったです。何度か見返してようやく「あれがここにつながるのか」と理解できた部分もありました。
そして、この映画は強盗が成功した後からさらに面白くなります。普通なら大金を奪って逃げれば終わりそうなところを、そこからヤクザによる報復が始まり、5人が一人ずつ追い詰められていきます。しかも単純に殺されていくだけではなく、それぞれの家族や恋人、過去まで巻き込まれていくので、どんどん逃げ場がなくなっていきます。
最後は大越組との銃撃戦、そして京谷との対決へ進みますが、雨の中で繰り広げられる銃撃戦は非常に印象的でした。強盗を始めた5人が、それぞれの事情を抱えながら最後には同じような場所へ行き着いてしまう。その不器用な生き方まで含めて、90年代のバイオレンス映画らしい魅力が詰まっています。
1億円を奪った5人組の強盗映画として始まりながら、実際には金そのものよりも、金をきっかけに集まった男たちの関係や、それぞれが抱えていた人生が描かれている作品でした。豪華キャストの競演を楽しめるだけでなく、キャラクターの濃さ、雨や夜を生かした映像、銃撃戦の迫力まで見どころが多く、最後まで一気に楽しめる一本でした。
☆☆☆☆☆
鑑賞日:2009/11/14 DVD 2026/08/12 U-NEXT
| 監督 | 石井隆 |
|---|---|
| 脚本 | 石井隆 |
| 製作総指揮 | 奥山和由 |
| 出演 | 佐藤浩市 |
|---|---|
| 本木雅弘 | |
| 根津甚八 | |
| 竹中直人 | |
| 椎名桔平 | |
| 永島敏行 | |
| 鶴見辰吾 | |
| ビートたけし | |
| 木村一八 | |
| 室田日出男 |


