●こんなお話
役所広司さんのお芝居の格の違いがわかる話。
●感想
殺人事件が起こり、加害者の役所広司演じる男性は自白している。彼の担当になった弁護士は次第に事件の深みに翻弄されていく。弁護士という仕事が刑事ドラマの刑事のように事件関係者に会い、話を聞き取りに行くものであることが序盤でわかる。事件の概要が静かに語られ、加害者と被害者の紹介が丁寧になされる。
出演者は皆素晴らしく、特に「そして父になる」のイメージにも通じる福山雅治の高圧的かつ余裕ある態度が印象的。同僚の吉田鋼太郎や満島真之介も役にぴったりで、弁護士事務所の女性も良い味を出している。被害者の娘を演じる広瀬すずも印象的である。なにより役所広司は一見普通の男性のように振る舞うが、時折とぼけたり、急に病んだ表情を見せるなど、主人公の弁護士と共に観る側を惹き込む迫力を持っている。
裁判官、検事、弁護士が被告の証言を無視しつつ、互いの利害を忖度して裁判をシステマチックに進めていき、極刑まで早々に決まってしまう法廷の怖さも描かれている。役所演じる被告があたかも超能力者のような振る舞いを見せる場面もあり、タイトルの「三度目の殺人」の意味や、十字架や五羽のカナリアの物語、役所の過去、広瀬すずの証言の信憑性など、数々の謎が作品全体に重層的に絡んでいる。
役所が弁護士の手にそっと触れるシーンがあり、その後広瀬すずが実父からの虐待について語る際に、最初は実父のことかと思ったが、実は役所との肉体関係について語っているのではないかと感じた。触れることで相手の心情を受け止めてしまうという描写は「グリーンマイル」を思わせるファンタジー要素もあるが、人が人を裁くことの難しさや日本の法曹界の一端を覗かせる異色の作品である。
また、被告が裁判に出廷する際の服装も興味深く、ジャージやスウェットではなくタートルネックにジャケットというスタイルであることを知ることができた。
感想としては、役者の皆様の演技力にとても感銘を受けました。特に役所広司さんの演技は迫力があり、普通の男性から突然変貌する表情の豊かさが非常に印象的でした。福山雅治さんや広瀬すずさんの存在感も際立っており、物語に深みをもたらしています。法廷のシステムや日本の法曹界の現実に触れることができる点も興味深く、物語の進行とともに徐々に謎が明らかになる展開は引き込まれました。
一方で、作品全体に漂うダークな雰囲気と謎解き要素は、好みが分かれるかもしれませんが、独特な映像表現や音響効果がその世界観を強く支えていると感じました。法廷ドラマとしてだけでなく、人間の心情や葛藤を映し出した一作として非常に見応えがありました。
☆☆☆
鑑賞日: 2017/09/27 TOHOシネマズ川崎
監督 | 是枝裕和 |
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脚本 | 是枝裕和 |
出演 | 福山雅治 |
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役所広司 | |
広瀬すず | |
吉田鋼太郎 | |
満島真之介 | |
市川実日子 | |
橋爪功 |
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