●こんなお話
いろんな役者さんがハイテンションで殺し合いをする話。
●感想
ヤクザから大金を持ち逃げした一人の女性と、その逃避行に巻き込まれていく男。彼らを追うのは、怒鳴るヤクザたち、抜け目ない殺し屋、そしてどこか抜けた警察たち。登場人物全員が何かに焦りながらも全力疾走していて、物語はその勢いのまま観客を強引に引っ張っていく。
北村龍平監督による作品らしく、骨太なアクションと突拍子もないギャグの連打が序盤から炸裂。ストーリーという一本筋を追うというよりは、あらゆるエピソードが縦横無尽に展開され、ひたすらに騒がしく、そしてテンション高く画面を埋め尽くしていく。まるで舞台劇のような芝居の熱量が途切れることなく続いていく。
どこかで真剣に見守っていたはずの主人公たちの逃避行も、次第にどれが本筋なのかわからなくなっていくほどに、脱線に次ぐ脱線。ストーリーと無関係に繰り出されるギャグ、笑わせにかかる台詞、そしてあっけなく人が命を落とす展開。そのひとつひとつが“映画的過剰さ”として蓄積されていき、観客の集中力を試されているようでした。
ギャグのセンスや台詞回しが好みに合えば、この世界観に酔いしれることもできるかもしれませんが、個人的にはテンションの高さに追いつくのがなかなか大変で、途中からは置いていかれてしまった感覚がありました。役者の皆さんが全力でぶつかり合っているのは伝わってきたのですが、それを受け止める側の体力が持たず、次第に呆然とスクリーンを眺めてしまいました。
特に長尺であるという点も、集中を保つにはなかなかの試練だったように思います。2時間40分という長さのなかで、テンポよく物語が進んでいくというよりも、細かなギャグや会話劇が延々と続いていく印象でした。ひとつひとつのシーンは独立して面白さを持っていても、それが蓄積されていく中で、どこか置き去りにされてしまうような不思議な感覚が残りました。
それでも、監督の「好きなことを全部やりきる」という気迫のようなものはビシビシと伝わってきますし、スクリーンの中で躍動する俳優たちの熱演にも、敬意を抱かずにはいられません。観る人によっては大爆笑に包まれる時間になるかもしれませんし、逆に静かに座っていることすら苦行に感じることもあるかもしれません。好みが大きく分かれる作品だったと思います。
終わってみれば、自分はこの映画から何を受け取ったのだろう、とぼんやりと考えてしまいました。何かを突き詰めるとはこういうことなのかもしれません。映画と観客との間に生まれる温度差すらも演出の一部として包み込むような、不思議な映画体験だったように感じます。
☆
鑑賞日:2013/12/12 DVD
| 監督 | 北村龍平 |
|---|---|
| 脚本 | 北村龍平 |
| 桐山勲 | |
| 原作 | 高橋ツトム |
| 出演 | 武田真治 |
|---|---|
| NorA | |
| 船越英一郎 | |
| 大友康平 | |
| 寺島進 | |
| 池内博之 | |
| 六平直政 | |
| 北見敏之 | |
| IZAM | |
| 船木誠勝 | |
| 川村カオリ | |
| 榊英雄 | |
| 金澤太朗 | |
| 江原修 | |
| 増本庄一郎 | |
| 松田ピロシ | |
| 七海智哉 | |
| 大場一史 | |
| 松原慎太郎 | |
| 小沢仁志 | |
| インリン・オブ・ジョイトイ | |
| 森本レオ | |
| 吉村由美 | |
| 大森南朋 | |
| ニコラス・ペタス | |
| 八木小織 | |
| 村上和成 | |
| 渡辺裕之 | |
| 森洋子 | |
| 津田寛治 | |
| 川合千春 | |
| チャック・ウィルソン | |
| 深浦加奈子 | |
| 杉本彩 | |
| KAN | |
| みさきゆう | |
| あいはら友子 | |
| 吉岡美穂 | |
| 泉谷しげる | |
| 竹内力 |


