映画【寄性獣医・鈴音 GENESIS】感想(ネタバレ):幻想と記憶が交差するSFドラマ

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●こんなお話

 寄生したら宿主を発情させる寄生虫と戦う女医さんの話。

●感想

 主人公が少女時代の記憶をたどるところから物語は静かに始まり、70分という短い上映時間ながら、全体のトーンとしては非常に内省的で、過去と現在を行き来するような回想シーンが多く盛り込まれています。映像はやや淡く、どこかノスタルジーを感じさせる色調で描かれていきます。

 主人公は過去の出来事に深くとらわれながら、現在進行している問題に向き合っていきます。悪徳企業が関わる陰謀めいた事態に立ち向かう構えはあるものの、物語のほとんどが主人公の内面に向けられており、登場人物同士のやりとりや外的なアクションは少なめになっています。中盤、企業の若き御曹司と出会い、そのまま自然な流れで共闘関係に発展していきますが、実際の描写としては1〜2シーンしかなく、人物関係がやや急展開に見える構成です。

 また、クライマックスに向かうかと思われた場面でも、主人公はふと立ち止まり、亡き父との思い出に意識を向けてしまい、物語の進行が緩やかになります。こうした演出は主人公の心情を丁寧に描こうとしている意図は感じられるのですが、観る側としては少し物足りなさを覚える部分もありました。

 映像表現としては、寄生虫に侵された人々の姿が印象的に描かれていて、そこにある種の官能的なムードが加えられている点は、作品の持つ独特な世界観として記憶に残ります。幻想的な演出や映像美といった面でも見どころはあり、そこに惹かれる方も多いかもしれません。

 本作は2部作の前編として制作されており、後編での展開に期待がつながる構成になっているようです。そのため、あえて今作ではストーリー上の大きな決着や派手な動きは抑えて、人物の心理や背景にフォーカスしているようにも感じました。後編でどのような展開を見せるのかによって、この前編の印象も大きく変わってくるように思います。

☆☆

鑑賞日:2012/02/26 DVD

監督金田龍 
脚本藤岡美暢 
小林雄次 
原作春輝
出演吉井怜 
神楽坂恵 
高野八誠 
木下ほうか 
倉貫匡弘 
深水元基 
久保ユリカ 
前田優希 
星野あかり 
螢雪次朗 
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