映画【MISTY】感想(ネタバレ):光と影が描く真実と虚構の物語

misty
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●こんなお話

 森の中で起こった殺人事件をいろんな人が語る話。

●感想

 篠田昇さんによる映像の美しさが際立つ作品でした。光の当て方や色のトーン、そして静けさの中に潜む緊張感が非常に印象的で、まるで一枚の絵画を見ているかのような感覚を味わいました。特に天海祐希さんの存在感が圧倒的で、彼女が画面に現れるたびに空気が変わるような魅力がありました。凛とした姿勢やわずかな表情の変化に、人物の内面がにじみ出ていてとても惹かれました。

 物語は、男女三人の出会いと殺人事件を中心に進みます。事件の目撃者たちがそれぞれ異なる証言を語り、その内容が食い違っていく構成になっています。視点の違いを映像で見せる試みは興味深いものでしたが、どの証言が真実なのか、なぜ彼らが嘘を語るのかといった掘り下げがあまり感じられず、少し淡々とした印象を受けました。

 また、全編に散りばめられた濡れ場や暴力の描写は多いものの、それが登場人物の感情や物語の推進力にはつながっていなかったように思います。映像は非常に美しく、カメラワークも繊細なのですが、その美しさゆえに人間の生々しさがやや薄まってしまった印象です。篠田昇さんの美学が前面に出ている一方で、登場人物の心の奥に踏み込む熱量がもう少し欲しかったと感じました。

 テーマ自体は「真実とは何か」という普遍的な題材であり、本作は映像美を優先させた静かなドラマとして成立している印象でした。それでも、映像表現としての完成度は非常に高く、光と影のコントラストや人物の佇まいなど、映像の一瞬一瞬が印象に残る作品だったと思います。

鑑賞日:2020/04/22 WOWOW

監督三枝健起 
脚本井上由美子 
原作芥川龍之介
出演天海祐希 
豊川悦司 
金城武 
小西杏奈 
小日向文世 
六平直政 
篠井英介 
根岸季衣 
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