映画【プロメテウス】感想(ネタバレ):

prometheus
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●こんなお話

 人類の起源を探りに宇宙の旅をする人たちの話。

●感想

 宇宙の彼方、人類の起源を探るためにとある惑星へと旅立った探査チームが、やがて想像を超える出来事に巻き込まれていく。そんな物語の幕開けは、人類を創造したとされる存在――“エンジニア”と呼ばれる謎の種族が、どこかの星で生命を生み出すような壮大なオープニングから始まります。静かで荘厳な風景と共に流れる映像と音楽で、いきなり心を掴まれました。わずか数分でこの映画がただのSFではないことを示してくれます。

 地球から遠く離れた惑星に着いた調査チームは、すぐに人工的に作られた構造物を発見し、その中へと足を踏み入れていきます。異星文明の遺物らしきものを目にして、やがてチームの中の数人が洞窟のような空間に閉じ込められてしまう場面が登場します。その夜、蛇のような生物に襲われてパニックに陥る展開があり、静かな探索から一転、ホラー映画のようなテンションに。観ていて思わず体に力が入ってしまう瞬間が続きます。

 翌朝、主人公たちは閉じ込められた仲間の救助に向かうのですが、そこから物語は急激に混迷を深めていきます。主人公のパートナーがアンドロイド・デヴィッドに渡された謎の液体を飲んだことによって体調を崩し始め、宇宙船への帰還を求めますが、船側のクルーが「病気の可能性がある者は乗せられない」と頑なな対応を取ったため、激しい口論に。最終的に、パートナーは自ら火炎放射器の前に立ち、身を焼かれるという衝撃的な選択をする場面には息を呑みました。

 その後、主人公は謎の意識喪失から目を覚まし、なんと妊娠していることが発覚します。その展開の突飛さと、生々しさの描写に震えるような感覚がありました。彼女は自ら医療ポッドに入り、中絶手術を強行。そのシーンで飛び出してくるタコのような異形の生命体は、一度観たら忘れられないほどのインパクトがあります。

 ふらふらと施設内をさまよううちに、主人公は死んだと思われていた依頼主と再会します。高齢のその人物は、人類の創造主とされる“エンジニア”と直接会うために生きていたと語り、彼らが最後に向かう先が明らかになります。しかし、目覚めさせられたエンジニアは何の躊躇もなく人間たちを襲撃し、またたく間に多数が命を落とすことに。最後には、彼が再び宇宙を目指そうとするのを阻止するため、主人公たちは命をかけた行動に出ます。

 このあたりの展開は怒涛という言葉がふさわしく、破壊された宇宙船内で主人公が再び異形のタコを目撃したり、エンジニアとその巨大生命体の対峙が描かれたりと、映像としての情報量が非常に多く、目が離せないシーンの連続です。そして、最終的には主人公とアンドロイドが、まだ見ぬエンジニアの故郷へ向かって旅立つラストで映画は締めくくられます。

 感想としては、まずヴィジュアルが圧巻です。宇宙船のデザイン、異星の風景、そしてエンジニアたちの風貌に至るまで、どれも細部まで練り込まれていて、120分間ほぼ隙間なく美術と映像に圧倒され続けました。特にホログラムの星図のシーンや、冒頭の牧歌的な風景描写には心を奪われるものがありました。音楽の使い方も非常に印象的で、作品全体に荘厳さを与えていたように思います。

 ただ、登場人物たちの行動に関してはやや唐突だったり、プロフェッショナルに見えない部分もあり、物語を追いかける中で引っかかる場面も多々ありました。加えて、いかにも「この先に続く物語があります」というつくりだったため、一本の映画としてのまとまりにはやや欠ける印象を受けたのも正直なところです。

 しかし、創造と破壊、命の連鎖、そして人間という存在の起源にまで踏み込もうとするテーマ性の深さは感じられ、SF映画として非常に野心的な一本だったと思います。視覚的な体験を楽しむだけでも価値のある作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2012/09/01 TOHOシネマズ南大沢 2023/05/05 Disney+

監督リドリー・スコット 
脚本ジョン・スペイツ 
デイモン・リンデロフ
出演ノオミ・ラパス 
マイケル・ファスベンダー 
ガイ・ピアース 
イドリス・エルバ 
ローガン・マーシャル=グリーン 
シャーリーズ・セロン 
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