映画【たそがれ清兵衛】感想(ネタバレ):侍の暮らしと日本の美意識を丁寧に描く時代劇の名作!

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●こんなお話

 幼い娘と老いた母親を養うために貧乏暮らしをしているけど実は剣の達人で、藩の騒動で命令で剣豪を斬らなければいけない話。

●感想

 本作は非常に単純明快なストーリーながら、最後まで飽きずに楽しむことができました。それでいて、侍が朝に目覚め、働きに出かけ、夜に帰宅して眠るまでの一日を丁寧に描いており、当時の生活様式を自然と知ることができる点が非常に興味深かったです。

 些細な日常を愛おしむ、日本人らしい感性に寄り添った作品であるとも感じました。主人公は決して好き好んで貧しい生活を選んでいるわけではありませんが、その暮らしの中ににじみ出る美意識が、観客としての私たちの心に心地よく響きます。

 たとえば、ご飯を食べる姿、子どもが親に挨拶をするシーン、決闘に向かう前に娘を提灯の明かりでそっと見守る場面など、どれも仰々しい音楽に頼ることなく、淡々と描写されていて、かえって感情に訴えかける力を感じました。

 物語の終盤、お家騒動の中で主人公が藩命によって剣豪との決闘を命じられる展開は、非常に重厚でした。ただ、決闘シーンに関してはやや迫力に欠けた印象があり、惜しいと感じる部分でもありました。また、台詞によって状況説明が多くなってしまっていた点については、やや冗長に感じた場面もございましたが、それも本作の持つ丁寧な語り口と考えれば納得できる範囲だと思います。

 出世を捨て、同僚からの嘲笑を受けながらも、家族のために静かに生きようとする主人公。そんな彼の平穏な生活を壊そうとする藩の命令。自らの意思に反する行動を強いられるという理不尽さ――。そうした葛藤を描いた本作は、静かな感動に満ちた素晴らしい作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2011/03/15 DVD

監督山田洋次 
脚色山田洋次 
朝間義隆 
原作藤沢周平
出演真田広之 
宮沢りえ 
田中泯 
岸惠子 
伊藤未希 
橋口恵莉奈 
草村礼子 
丹波哲郎 
小林稔侍 
大杉漣 
吹越満 
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