映画【その男、凶暴につき】感想(ネタバレ):暴走刑事と殺し屋の激突 ― 北野映画らしい緊張感が光る異色の刑事ドラマ

violent-cop
スポンサーリンク

●こんなお話

 凶暴な刑事が麻薬組織と戦う話。

●感想

 ホームレス狩りをしていた中学生を殴って自首をさせるほど荒っぽいやり方の主人公刑事。朝に署へ出勤すると、新しく着任した署長に注意を受ける。先輩刑事とは信頼関係があるようで、バディのような関係性がにじみ出ている。

 そんな中、麻薬の密売人同士による殺人事件が発生し、主人公と後輩刑事が聞き込みを進めていくが、容疑者は逃走。その追跡劇では、主人公が車で容疑者を二度も轢くという無茶な展開になり、またしても署長から厳しく怒られる。

 私生活では、妹が病気から退院し自宅にいるものの、知らない男を家に招いていて、怒った主人公がその男を蹴り飛ばしてしまうシーンもあったり。さらに、クラブで密売現場を急襲した際、先輩刑事が裏で麻薬を横流ししているという証言を得て、主人公がその件で先輩と話すが、その直後に先輩は行方不明になり、最終的に自殺という形で発見される。

 これに納得できない主人公は、殺し屋を半ば無理やり逮捕して「先輩を殺したのはお前だろ」と詰め寄るが、警察署内で発砲し仲間の刑事を誤って撃ってしまい、警察をクビになる。

 その後、拳銃を手に入れた主人公は、麻薬密売の黒幕の元へ向かい、ためらうことなく射殺。その後も殺し屋のアジトへ突入し、殺し屋一味の内部抗争もありながら、最終的には主人公との一騎打ちになり、全員が命を落とす。

 だが、物語のラストでは、人が変わっただけで街にはいつも通りの日常が戻ってきて、どこか虚しさを感じさせる締めくくりになっている。

 この映画の魅力のひとつは、主人公の毎日の出勤風景だけでも彼がどんな男かが伝わってくるところでした。言葉ではなく映像でキャラクターを描ききっている演出が印象的でした。

 暴走する主人公と、それに負けないほどの強烈な存在感を放つカタキ役・清弘。この男もまた、上司の命令に従わずにどんどん人を殺していく。そんな2人の激突は止めようがなく、壮絶な死闘へと突入していく。

 北野映画らしい「間」や、タレコミからの一斉突入、そして逃げられてからの長い追跡劇など、独特なテンポが映画全体を貫いていて、観ていて惹き込まれました。

 ただし、主人公がほんの少しの聞き込みで黒幕にたどり着く展開は少し雑に感じた部分も。また、突然の日常描写、例えばクビになった主人公が絵画を見に行くシーンなどは、映画全体のテンポから見ると異質な印象を受けました。妹の誘拐事件もその中で進行するため、やや唐突感もあったり。

 クライマックスの清弘の子分たちの末路や内ゲバの描写も、これまでにない驚きを感じさせる展開で、緊張感と迫力がありました。惜しむらくは、清弘を背後から操っていた岸部一徳さん演じる黒幕の立ち位置がよくわからなかったこと。ヤクザなのか、企業家なのか、その正体がはっきりしないため、黒幕としての恐ろしさが少しぼやけてしまったと思います。

☆☆☆☆

鑑賞日:2013/01/09 DVD 2023/12/29 DVD

監督北野武 
脚本野沢尚 
遠藤憲一 
小沢一義 
寺島進 
上田耕一 
石田太郎 
平泉成 
音無美紀子 
岸部一徳 
タイトルとURLをコピーしました