●こんなお話
謎の人間たちに襲われて妻を殺され自らも四肢麻痺になってしまった主人公が、AIを埋め込みスーパーパワーを手に入れて犯人探しをする話。
●感想
全身マヒという絶望的な状況に陥り、大切な家族も失って生きがいを見失った男性が、AIを体に埋め込む手術を受けたことで状況が一変します。この手術は秘密裏に行われたため、表向きは車いすでの生活を送る人物として周囲からは侮られていて、それが物語の中でうまく機能していくのが面白いポイントになっていました。AIの力を借りることで、彼の体は自由に、そして信じられないスピードとパワーで動けるようになり、物語が加速していきます。
そのアクションがまた斬新で、特にAIに身体の主導権を完全に明け渡すシーンでの動きは、どこかぎこちなく、それでいて恐ろしいほど正確という独特の魅力がありました。カメラワークもこれに合わせて工夫されていて、不自然な角度やリズムが逆にクセになるような演出に繋がっていたように思います。今までのアクション映画とはひと味違った映像体験を味わえる、印象的な一連の流れでした。
舞台は音声によってすべての管理が行われる近未来。ドローンや無人タクシー、壁一面に表示されるディスプレイなど、未来的なガジェットがさりげなく描かれていて、街の景色を見ているだけでも楽しくなってくる世界観でした。その中で、AIと一体となった主人公が、次々と事件の裏に潜む犯人たちに迫っていく展開が進んでいきます。
犯人を一人ずつ追い詰めていく過程にはサスペンス的な緊張感もあり、どうして事件が起こったのかという真相に迫っていくにつれ、物語の輪郭が浮かび上がってくる構成でした。そしてクライマックスでは予想外の展開が待っていて、逆転が繰り返されていきます。その真相に辿り着いた時、あまりにも複雑で一周回ってしまうような動機に少し首をひねる部分もありましたが、最後に提示される“仮想世界”という選択肢があまりに魅力的で、現実よりそっちの方がいいかもしれないと、ふと心が揺れてしまうような気持ちも残ります。
SFアクションとして、映像とアイデアの掛け算がとても心地よく、作品のテンポもよいため、最後まで飽きずに楽しむことができました。アクション映画を観たいけれど少し変わった切り口が欲しい、という方にもおすすめできる一作でした。
☆☆☆
鑑賞日:2020/05/23 Blu-ray
監督 | リー・ワネル |
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脚本 | リー・ワネル |
出演 | ローガン・マーシャル=グリーン |
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ベティ・ガブリエル | |
ハリソン・ギルバートソン | |
メラニー・バレイヨ | |
ベネディクト・ハーディ | |
サイモン・メイデン |