●こんなお話
オーストラリアを1人とラクダと犬で横断しようとする話。
●感想
荒涼とした風景が延々と広がる中、ひとりと数頭のラクダ、犬たちと共に砂漠を歩いていく。その旅はただ砂の上を進んでいくというだけでなく、さまざまな人との出会いや別れがあり、地理的な困難に加えて感情の起伏も含んで描かれていく。目的地へ向かうまでの道のりはとにかく過酷で、水が手に入らなかったり、道を間違えて迷ったりと、物理的にも精神的にも厳しい描写が続く。砂漠を横断すること自体が大きな挑戦で、その障害を越えていく様子をじっくりと描いていく構成になっていました。
旅に出るまでの導入はやや長めで、開始からしばらくは静かな準備期間が続く。そこでは主人公がなぜそんな無謀とも思える旅を選んだのか、その背景がフラッシュバックのように少しずつ明かされていく。ただ、その動機はすべてを見終えてもはっきりとは腑に落ちるわけではなく、観客の解釈にゆだねられているような部分も多く感じました。回想も印象的な映像で構成されているものの、旅の時間軸と重なって配置されているため、少し冗長に思える瞬間もあったのは事実です。
とはいえ、延々と続く旅を映像で見せ続ける中で、動物たちの動きやカメラの捉え方には強い興味を引かれました。特にラクダや犬の芝居が自然で、どうやって撮影されたのかと思うような場面もあり、その点だけでも映像として価値のある作品だったと思います。また、旅の途中で「〇日経過」というテロップが挿入されますが、それが時間の重みや過酷さに直結しているかというと、物語上ではやや機能していない印象も受けました。ただ、そうした演出を含めて映画全体がリアリズムに基づいて構成されていたようにも思えます。
旅を終えたあとのラストには、実際の写真が何枚か登場しますが、それが非常に印象的で強い迫力を感じました。長く続いたフィクションの映像のあとに差し込まれるリアルな写真が、ここまでの旅のすべてを締めくくるように存在感を放っていて、静かな余韻として心に残りました。
主演のミア・ワシコウスカの存在感は素晴らしく、ほとんどのシーンで彼女が画面に映っていることもあって、その演技に引き込まれるようにして見続けることができました。感情を大きく爆発させる場面が少ない中で、静かに表情や身体で伝えていく演技がとても説得力があり、彼女を見ているだけで作品世界に深く入っていけたように感じます。役者としての集中力や誠実さが伝わってくるような演技でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2015/07/24 有楽町スバル座
監督 | ジョン・カラン |
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脚本 | マリオン・ネルソン |
原作 | ロビン・デヴィッドソン |
出演 | ミア・ワシコウスカ |
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アダム・ドライバー | |
ライナー・ボック | |
ローリー・ミンツマ | |
ロバート・コールビー | |
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