映画【復活の日】感想(ネタバレ):世界滅亡と南極サバイバルを描く超大作SF映画

Virus-The-End
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●こんなお話

 最近兵器のため人類絶滅の危機に瀕する話。

●感想

 東西冷戦の真っ只中、アメリカ軍は「フェニックス計画」と呼ばれる極秘生物兵器開発を進めていた。細菌学者マイヤー博士が研究していたMM-88は、もともとは無害だった微生物を軍部が改良し、極低温では活動を停止しながらも、気温が上昇すると爆発的に増殖する致死性ウイルスへ変貌させた恐るべき生物兵器だった。

 1982年2月、東ドイツのクラウゼ博士はMM-88の危険性を知り、このままでは人類そのものが滅ぶと危機感を抱く。彼は西側の研究者へサンプルを渡し、ワクチン開発を依頼しようとするが、仲介役の男はアメリカ軍の工作員だった。潜伏先へ兵士たちが突入し銃撃戦となり、クラウゼは射殺される。工作員たちはMM-88を回収してセスナ機で逃走するものの、アルプス上空で猛吹雪に巻き込まれて墜落。破損した容器からウイルスが雪原へ拡散し、人類破滅への引き金が引かれる。

 春になり気温が上昇すると、眠っていたMM-88が活動を開始する。カザフスタンでは羊が大量死し、続いてイタリアで乳幼児を中心とした感染症が急速に拡大する。人々はこの病を「イタリア風邪」と呼び始めるが、その感染力と致死率は異常だった。高熱と呼吸不全によって感染者は短時間で死亡し、ヨーロッパ各地はあっという間に機能停止へ追い込まれていく。

 アメリカではマイヤー博士がMM-88流出の可能性を警告するが、軍強硬派のランキン大佐は事実隠蔽を優先する。マイヤーは生物兵器化の事実を暴露しようとするものの、逆に精神病院へ隔離されてしまう。一方ホワイトハウスでは、リチャードソン大統領が崩壊していく世界情勢への対応に追われていた。軍部は核自動報復装置ARSの起動を求めるが、大統領は世界緊張を高めるとして拒否を続ける。

 しかし感染は止まらず。ヨーロッパ、アメリカ、日本、世界各地で都市機能が崩壊し、病院には死体が積み上がり、暴動や略奪が頻発する。東京でも道路や駅に無数の遺体が横たわり、社会秩序は完全に崩壊していく。日本では戒厳令が敷かれ、死者数は数千万人規模へ達する。

 その頃、南極の昭和基地では吉住、辰野、中西隊長ら観測隊員たちが越冬任務を続けていた。南極は極寒環境によってMM-88の活動が抑えられており、人類最後の安全圏となっていた。隊員たちは無線越しに世界崩壊の様子を知るが、やがて通信は次々と途絶えていく。

 吉住は日本へ残してきた恋人・則子との思い出を回想する。則子は妊娠を告げながらも別れを切り出していた。一方、東京では看護師として働く則子が患者対応に追われ、疲弊の末に流産してしまう。街は死者で埋め尽くされ、則子は友人宅で息絶えた親を発見し、生き残った子どもを連れてモーターボートで海へ逃げ出す。

 アメリカではバークレイ上院議員がフェニックス計画の存在を暴露し、マイヤー博士を救出する。しかし感染拡大は止まらず、大統領夫人も感染死する。リチャードソン大統領は死を目前に、南極基地こそ人類最後の生存圏であると無線で世界へ伝え、外部からの侵入を許すなと命令を残して死亡する。

 だがその直後、軍強硬派の将軍が独断でARSを起動する。これは核攻撃を自動感知し、無人でも報復核ミサイルを発射する恐るべきシステムだった。

 南極では各国の生存者たちによる「南極政府」が発足する。しかし生存者は男性ばかりで、女性は極端に少なかった。人口維持の問題が深刻化し、性的秩序の管理まで議論される異常事態となる。ノルウェー基地では男女問題から銃撃戦まで発展し、吉住と中西は唯一生き残った女性隊員マリトを救出する。やがて彼女は女児を出産し、その子は「日の出」を意味する“グリー”と名付けられる。

 そこへ感染者を乗せたソ連原潜が救助を求めて現れる。緊張状態の中、イギリス原潜ネレイド号が登場し、感染拡大阻止のためソ連原潜を撃沈する。

 ラトゥール博士は東京で採取した空気サンプルから研究を進め、毒性を持たない変異株を生成する。一方、吉住は地震予知研究によってワシントン近郊で巨大地震が発生すると突き止める。その地震によってARSが誤作動を起こし、全面核戦争へ発展する危険性があった。さらにソ連側にも同様の自動報復装置が存在し、一度作動すれば人類は完全に終わる状況だった。

 ARSを停止するため、吉住とカーターは決死隊としてネレイド号でアメリカ本土へ向かう。出発前夜、吉住は仲間たちの計らいによってマリトと静かな時間を過ごす。

 荒廃したアメリカへ上陸した二人は、死の街と化したワシントンD.C.へ侵入する。地震の前震で建物が崩壊していく中、地下司令センターを目指すが、途中でカーターは重傷を負う。

 吉住は単身で制御室へ辿り着くものの、あと一歩間に合わずARSが起動。アメリカのICBMが発射され、それを感知したソ連側のARSも自動報復攻撃を開始する。世界中で核ミサイルが炸裂し、南極のパーマー基地も壊滅。人類はウイルスに続き、核戦争によって二度目の滅亡を迎える。

 数年後、放射線による変異か、ラトゥール博士の試作ワクチンの影響かは明言されないまま、吉住は生き延びていた。彼は荒廃した南米大陸を幻聴に苦しみながら歩き続ける。やがてチリ南端の湖畔へ辿り着くと、そこにはマリトやラトゥール博士、生き残った人々が小さな共同体を築いていた。吉住はようやく人間たちとの再会を果たしておしまい。


 2時間40分という長尺作品ですが、見始めると圧倒的なスケール感に引き込まれてしまう映画でした。日本映画でありながら英語をはじめ複数の外国語が飛び交い、世界各国の俳優が入り乱れて登場するため、「今どこの国の映画を観ているんだろう」と不思議な感覚になります。1980年の作品とは思えないほど国際色が強く、“世界の終末”を描こうとしていた熱量が伝わってきました。

 南極基地、潜水艦、ホワイトハウス、無人化した東京など、とにかくロケーションが壮大で映像の迫力も凄まじいです。大量のエキストラを使った混乱描写や、死体で埋め尽くされた都市の光景には強烈なインパクトがありました。一方で、特撮やミニチュアにはどこか昭和映画らしい味わいも残っていて、その少しチープな雰囲気が逆に作品の魅力になっていたと思います。

 前半はウイルスによって世界が崩壊していく過程がじっくり描かれます。国家レベルの政治判断や軍事的な駆け引きと、一般市民の恐怖や混乱が同時進行していく構成になっていて、マクロとミクロの視点が非常に上手く噛み合っていました。暴動、病院崩壊、戒厳令など、終末世界の描写が容赦なく続いていくため、観ていてどんどん息苦しくなっていきます。

 則子が友人宅へ向かい、死んだ母親のそばで生き残っていた子どもを連れて海へ逃げる場面も妙に印象へ残りました。物語全体で見ると説明不足な部分ではあるのですが、あの場面には「社会が完全に壊れた世界で、それでも誰かを助けようとする人間」の感情が凝縮されていた気がします。

 中盤からは南極サバイバル映画として空気が変わっていきます。極寒の閉鎖空間で、人類最後の生存者たちがどう社会を維持するのかを描いていく展開が非常に面白かったです。男性ばかりが生き残り、女性はごく少数という状況の中で、恋愛や性が完全に“人類存続”の問題へ変わっていくのも衝撃的でした。クリスマスの抽選や、女性を巡る空気の重苦しさには独特の怖さがあります。

 終盤は一転して潜水艦映画と核戦争サスペンスへ変貌します。ホワイトハウスへ侵入してARSを止めに行く流れは完全にハリウッド大作のテンションで、無人となったワシントンD.C.の不気味さも素晴らしかったです。あと少しで止められたのに間に合わないという結末も容赦がなく、人類が自ら作ったシステムによって滅びる皮肉が強烈でした。

 ラスト20分は草刈正雄さん演じる吉住が、たった一人で南米を放浪し続ける異色の展開になります。かなり長めのシークエンスなのですが、文明が完全に消え去った世界を黙々と歩く姿には独特の孤独感がありました。マチュピチュの映像も壮大で、終末後の地球を旅するロードムービーのような雰囲気さえあります。

 ただ、「どうやってそこまで辿り着いたんだ」というツッコミを入れたくなる部分も多く、リアリティより映像的ロマンを優先している映画でもありました。また、中盤まで存在感を放っていたジョージ・ケネディさん、夏八木勲さん、千葉真一さんらが後半ではほとんど姿を消してしまうのも少し惜しかったです。

 それでも、人類滅亡SFとしてのスケール、南極サバイバル、核戦争サスペンスを全部盛り込んだような作品で、今観ても圧倒されるパワーを持った映画でした。昭和日本映画の無茶な情熱と国際大作路線が合体した、唯一無二の終末映画だったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2012/09/30 Hulu 2026/05/24 U-NEXT

監督深作欣二 
脚本高田宏治 
グレゴリー・ナップ 
深作欣二 
原作小松左京 
出演草刈正雄 
夏木勲 
多岐川裕美 
永島敏行 
丘みつ子 
中原早苗 
森田健作 
千葉真一 
渡瀬恒彦 
緒形拳 
オリヴィア・ハッセー 
グレン・フォード 
ジョージ・ケネディ 
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