映画【赤い糸 輪廻のひみつ】感想(ネタバレ):転生・ラブ・ホラー・ギャグ全部盛り!台湾発、予測不能の青春エンタメ爆弾

Till-We-Meet-Again
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●こんなお話

 死んじゃった主人公があの世から来世に転生するためにペアになったヒロインと赤い糸を繋げる役をするけど、生きてた時代の恋人と再会したり500年前の人から恨まれて襲われたりする話。

●感想

 ある日、主人公の少年が雨の中でおじさんたちとバスケットボールをしていたところ、木の下で雨宿りをしていた際に落雷に遭い、命を落としてしまいます。

 彼がたどり着いた“あの世”では、まず体の検査のようなものを受け、他の死者たちとともに担当者から説明を受けます。生前に「徳」を積んでいた者は再び人間として転生でき、悪行を重ねた者は存在自体が消滅してしまう――。そんなシステム。

 主人公は数珠を渡され、その珠は白と黒で構成されています。良い行いをすれば白い珠が、悪い行いをすれば黒い珠が増えていき、すべての珠を白くすれば人間に生まれ変われるとのこと。途中で諦めるとゴキブリやカタツムリに転生する場合もあるため、頑張ってポイントを貯める必要があるという、ルールです。

 あの世で出会った少女と、最初はぶつかり合いながらも協力し合い、やがて「運命の赤い糸」をつなぐ仕事に就きます。舞台は冥界のエレベーターから人間界のゲームセンターへと移り、2人はペアとなって縁結びをサポートしていきます。

 一方その頃、現世では過去に悪党のボスだった男が仲間の裏切りにより命を落とし、500年の時を経て復讐のために蘇ります。彼は次々と人間に転生しては殺人を繰り返していきます。そんな彼を追うのが、軍服姿の男女コンビ・牛頭馬頭。彼らの活躍や閻魔様との会話なども描かれます。

 物語が進むと、ヒロインの前世がその悪党の仲間であったことが明らかになり、彼女が恨まれ襲われる展開に。そこへ牛頭馬頭が現れて冥界バトルが勃発。主人公も加勢し、やがて過去に自分がセミとして存在していたとき、実はその悪党に命を救われていたことを思い出します。彼への感謝を伝えた瞬間、悪党は成仏して物語が一つの区切りを迎えます。

 ギデンズ・コー監督らしく、キラキラとした青春ラブストーリーでありながら、ホラーやファンタジー、アクションといったさまざまなジャンルが混ざり合った作品です。一見ごちゃ混ぜにも感じられますが、それがかえって魅力となっており、監督の腕力で強引にまとめきってしまう力技が凄まじいと感じました。

 ただし、500年前の悪党のストーリーはやや複雑で理解しにくく、閻魔様との会話やバトルの意味などは、映画だけでは掴みづらい印象もありました。監督のインタビューによれば、途中まで書いていた脚本段階で消滅したのではなく3人は極楽浄土へ行き、ラストで閻魔様と犬と共に海岸にいたという描写で説明されているそうです。こういった情報が本編だけでは伝わりづらかったのは少々もったいなかったかもしれません。

 また、主人公の現世の恋人との記憶が、ペットの犬をきっかけに蘇るエピソードや、小学生の頃から何度も告白して振られてきたという一途な想いが、青春ラブストーリーとしてとても爽やかで、思わず笑顔になってしまう展開でした。

 さらに、ヒロインには幽霊が見える力があり、実は主人公の存在もずっと見えていたことが後に判明。序盤の不可解な行動が伏線として回収される流れは非常に面白く、脚本の巧みさを感じました。

 途中、幽霊と人間の恋愛が描かれるシーンでは、『ゴースト/ニューヨークの幻』のような演出や、テレビ画面に『あの頃、君を追いかけた』の役者がメタ的に登場するなど、笑えるギャグ要素も満載。『呪怨』の俊雄くんや『リング』の貞子が登場する井戸のシーンなど、日本カルチャー好きにはたまらない小ネタもありました。

 ヒロインに襲いかかる悪党と、牛頭馬頭による派手なCGバトルも見応えがあり、最終的に主人公がセミだった頃に助けてくれた悪党に土下座し、感謝を伝えるという意外な展開も、輪廻転生というテーマを軸に見事に繋がっていきます。

 最初に登場した閻魔様の笛の音が、実はヒロインが吹いていたメロディとリンクしていたり、現世とあの世の食事が繋がっていたりと、細部まで丁寧に構成された伏線も魅力のひとつです。

 台湾の人気俳優たちが多数出演し、どのキャラクターも魅力的。『幽☆遊☆白書』や『スラムダンク』『花より男子』といった日本作品を彷彿とさせる描写も随所に見られ、日本のカルチャーに親しんでいる方には特に楽しめる内容となっています。

 さまざまな要素を詰め込んだ“ごった煮”のような映画ではありますが、それゆえに一筋縄ではいかない魅力と熱量が詰まった、まさにギデンズ・コー監督らしい作品でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2022/04/22 ユナイテッドシネマ・アクアシティお台場 2023/12/24 シネマート新宿 2025/04/09 シアターギルド代官山 2025/05/25 新文芸坐

監督ギデンズ・コー
脚本ギデンズ・コー
出演クー・チェンドン
ビビアン・ソン
ワン・ジン
マー・ジーシアン

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